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立命館守山中学校/元 麹町中学校 |加藤智博さん(3)

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2021年2月21日(日)20:00〜21:30
教育改革で注目を集めた千代田区立麹町中学校にて、工藤勇一校長と共に、その中心的役割を担ってきた加藤智博さんをお迎えし、「しつもん×探究トーク」第7弾を開催しました。

教育改革の中心に据えたこと、生徒の自己決定を促す鉄板しつもん、などなど、加藤先生のリアルな体験と率直な言葉は心に響きます。そして、自律や主体性を育む教育はなぜ必要なのか?何を実現したいのか?参加者のみなさんと本質的に考える時間を共有しました。

「しつもん×探究トーク」最新のお知らせは、しつもん財団ホームページをご覧ください。

<ゲスト講師> 加藤智博さん
立命館守山中学校・高等学校 教諭/元 千代田区立麹町中学校 教諭

2020年3月まで、教育改革で注目を集めた東京・千代田区立麹町中学校で
生活指導主任(現・生徒支援主任)と学年主任を兼務。固定担任制の廃止(チーム担任制の導入)や定期テストの廃止、脳神経科学を取り入れた生徒支援など、工藤勇一校長のもと次々と進められた教育改革の現場で中心的役割を担う。2020年4月から立命館守山中学校・高等学校に場を移し、生徒の自律を育む教育を継続実践中(中学1年学年主任)
一般社団法人フィールド・フロー認定スポーツメンタルコーチ
一般社団法人国際メンタルビジョントレーニング協会認定インストラクター
GALLUP®︎認定ストレングスコーチ
<対談者>しつもん財団理事 藤代圭一
教えるのではなく問いかけることでやる気を引き出し、考える力をはぐくむ「しつもんメンタルトレーニング」を考案、全国大会優勝チーム、アイスホッケーU14日本代表チーム、さらには地域で1勝を目指すキッズチームまで、数多くの実績を挙げている。現在はスポーツだけでなく、子どもの学力向上をめざす保護者や教育関係者に向けた講演・ワークショップをおこない、高い評価を得ている。著書に『しつもんで夢中をつくる!子どもの人生を変える好奇心の育て方』(旬報社)ほか。

麹町中学校の改革とは?

藤代:うん、ただ、これって時間がかかるじゃないですか?だから、そもそも業務が忙しくて『みんなで話してる時間なんてないよ』と、、それを改革したのが麹町中学校じゃないかな?と僕は思うんです。

加藤:でね、麹町を離れてから分かることも今すごく多くて、いる時に学んだことはもちろんあるんですが、離れてからよりその輪郭が見えてきたところがあってね、さっきの話で言うと、自律を育むために一致させたものがあるんですよ。だからそれが「自己決定の機会を増やそう」という。それってみんな、そんなにブレないですよね。

今も自律、何で自律が必要?って言ったときには、みんなその答えは結構散らかってるんですよ。自律というこの幅に収まってるはずなのに、実はみんなすごく違ってて、みんな違うアプローチがあって、これが必要だ、あれが必要だと思ってる。でも、麹町では、自律を育むために「自己決定」という、ここを一本結んだんですよ。だから、自己決定をしてもらう機会を増やそう、でもまだまだ自分も幅が広かったから、例えば目の前で問題が起きました。

「やっぱり授業出たくなーい」という子がいる、今までそんな子がいた経験はなかった、無理くり教室に入れ込んでた。あれ?でも自己決定って決めたよね?って、子どもたちの自律を育むためには自己決定って決めたよね?でも自分は今戻そうとしている、、「あれ?違うじゃん!」じゃぁ、この状況で自己決定してもらうためにはどういう関わり方が必要なの?ってみんなで相談し合って、校長とも相談しながら、自分たちにできるものも提示しよう、でも、できないことも提示しよう、それが、この3つだったんです。

・もう一回、キモチを前向きに捉えて授業に行く
・自分で一人で落ち着いて勉強する
(日にもよるけど、別室を空けられる時もあったので)
・帰る(笑)

藤代:なるほど。

加藤:「はい、この3つから選んで!」って。で、今日は無理だと、空き教室ないからごめん!今日は2つしか選択肢がないよ、どちらかを選んで!っていうやり取り。とにかく、学校あるあるだと思うんですけど、やっぱり自己決定ってそこも一致したとしても、日頃の教育活動は自分の感覚でやってしまう、というところがあると思うんですよ。だから、だってそもそも学校って勉強しにくるところだから、「勉強したくないってそれはダメだろ!」っていう自分の教育観の中で入れ込む、みたいなのかあるんですよ。でも本来は、それぞれの日頃の何気ない教育活動も全部、自己決定の機会。

藤代:そうですね~

加藤:それが、みんなである程度整理できてからが早かった気がします。自分たちの教育観や経験値を1回ね、「えいやー!」って捨てた時期があるんですよね。いやーだから本当にね、そうなってきたときにやっぱりね、改めて「しつもん」、子どもに聞きながら選んでもらう、決定してもらう機会を増やせたのは、あそこからちょっと加速というか、みんなで、あ、こーいう方向でやっていこう!というのは前に進んで気がするんですけどね。

藤代:もしかしたら脱線しちゃうかもしれないんですけど、一昨日、嬉しい報告をいただいていて、小学校4年生くらいからご縁のあるお子さんが、高校にサッカーで進学することが決まりましたと報告してもらっていて、その子は1年に1度話す程度なんですよ。

初対面の時から、自分で決めるということを大切にしているなーって感じる子で。途中、「サッカーやめたいんですけど」って話をされたんですね。お母さんはサッカーを続けさせたいと、彼はサッカーからはだいぶ離れていて(別々に話したんですけど)どうしようか迷ってますと。結構、行ったり行かなかったりしてたんですね。

結局やっぱり僕は部外者だから、第三者として「サッカー続けた方がいいよ」なんて無責任なことは言えないじゃないですか?1年に数回会う程度の人が無責任なこととか言えないなと思って。だから加藤さんが言ったように、「どうしたいの?」とか、「どうしてそう思うの?」とか「あーいま大変なんだね」とか、そういう話をしていて、

でも結果、失敗もしたし挫折もしていたけど、彼は自分で決断して、サッカーの道に進んで行くんですけど、それって僕としてもすごく誇らしいというか、僕が携わった感はほとんどないんですけど、彼が決めたことだから。でも、すごい嬉しいですよね。良いことだけじゃないことも経験して、でもそれでも僕はこっちでやっていこうって決めたって言葉を聞けて、嬉しいなーーって。

加藤:わかりますわかります、なんかね、自己決定が『幸福度』とつながっているって見たことがあって。

藤代:そうですよね。

加藤:いろんな条件はもちろんあるし、ある条件の中だったら、学歴よりも収入よりも自己決定が『幸福度』につながっている。それこそ、ユネスコの調査でもね、先進国38か国の中でも日本はね、身体の健康は一位で、精神的な健康は38位中37位なんですよね。

藤代:えーーーー!

加藤:これって結構衝撃なんです。子どもに関わる方たちの中にはご存知の方もいらっしゃると思いますけど。身体の健康1位で、精神的な建康が38位中37って・・・。まぁ、でもこの調査の突っ込みどころを言うと、アンケートの調査みたいなものが、欧米の人が答えやすい調査だから(聞き方が)だからそこまでって言う意見もあるんですけど、でも、1位と37位ってね、多少この差が縮まったとしても、良い結果ではないですよね。

やっぱり、子どもたちに本当に幸福感もって、ウェルビーイングってよく言われますけど最近、そういう子に育って欲しいなって思った時に、学力とかそういう部分のアプローチももちろん必要なのかもしれないですけど、やっぱり、子どもに関わる大人が、そういう子どもたちの自己決定を応援できるような、、

藤代:そうですね~

加藤:でもね、そこにはスキルがいるって自分では思っていて、これが、分からないですよ、正解かどうかは分からないですけど、強く感じているのは、やっぱり教員に必要なスキルが、変わってきたんですよ。

藤代:そのスキルって、何を指すんですか?

加藤:いわゆる「しつもんベース」です。しつもんベースで子どもたちと関われること。さっきも言ったんですけど、よくあるのがね、子どもに決めさせたらろくなことが起きないという。これはあるんですよ。子どもって想像力が超豊かですからね、私とFacebook繋がってくださっている方は知ってるかもしれないですけど、子どもにちょっと面白い想像力トレーニングみたいなことをやったら、まぁ、ようそんなこと思いつくな!みたいな。

藤代: 確かに、確かに。

加藤:子どもの時ってそうじゃないですか?大人のなんとなくの範疇を超える訳ですよ、良い意味でも悪い意味でも。そうなってきたときに、大人が「ん?この決定不安だな」って思った時に、じゃあ、決める機会を奪って安全を保つのか、しつもんベースのやり方を知って、この判断はプラスにいかないのかもな?って、子どもに気づいてもらうのってエライ違いだと思うんですね。

私もできなかったんですけど、まだまだ勉強不足ですけどちょっとずつ見えてきて、でも足らないものを感じるから、藤代さんのところで学ばせてもらったり、違うところでコーチング、1回資格を取ったものの違うところで勉強したりしてるんですけどね。

そういう、ちょっと例にして紹介しましたけど「それ、どんなことがおきそうよ?」「相手はどお?」っていう関わり方を、教員とかスポーツ現場の指導者とかは身につけなければいけないな、でも実はまだまだ、みんな気づいてないなっていうのが感想で、だから本当に、毎回言ってますけど、藤代さんとしゃべってるからという訳じゃなくて、藤代さんの活動とか、藤代さんの元で学ばれる方が増えてほしいなぁーと思うし、これ、大人でもそうなんですよ。

岡山の方が主催してくれてるコミュニティーがあって、藤代さんの元で資格を取った方が1時間くらいやってくださってね、まぁ、おもしろかったですもん。大人がやってもおもしろい。おもしろいっていうのは爆笑じゃなくて、「自分にはこういう感覚があるんだ」とか、「自分にはこういう思いがあるんだ」とか、しつもんによって自分で決められるし、しつもんによって自分の良さにも気付けるし、自己肯定感が高まるし、本当に必要です!!!!

二人 あはははは

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加藤:本当に必要です!!どころじゃなくて、ちょっと急がなきゃダメだって自分では思ってます。たぶんここに集まってる人って、そこに何かしら気づいていらっしゃる方ばかりだと思うんですけど、世の中にはまだまだそうじゃない方はごまんといて、そういう人たちと話が通じない時もあるんですね、自分自身感じちゃう時があるんですけど、本当に子どもたちが、時代がこんだけ変化していく中で、自己決定、主体性って言われているのに、実は教員の側が、その方法を分からなくて、だから任せちゃダメだとか、ルールで縛らなくちゃダメだって、校則の話とかでニュースになる時もありますけど、それで守られてたんですよ学校の教員って。校則という大きなものがあることによって、子どもたちがいちいちそういうことに疑問をもたなくさせてきたんですよね。

藤代:なるほどね!

加藤:でも昔はそれが必要だったんです。昔は求められる人材も、どちらかというと実直に、指示にも「はい」って言えて、ちゃんと働ける人。そういう人を世の中が求めていたし、そういう人が必要だったし、そのアプローチが正しかったし、昔は荒れてた学校も多かったじゃないですか?それを立て直してくださったのも、ベテランの人がそういう校則を整えてくださったからです。でも今そうじゃなくなりましたよね。求められる人材も変わってきて、

藤代:確かにそうですね。

加藤:そうなってきたときに、焦ってる人が多いんですよ。校則を変えろ変えろって学校の事情を知らない人が適当に言いやがってとか、適当にそういう声を応援しやがってみたいなことがあるんですけど。子どもたちが正しいことに気づき始めた。大人たちも今の現状を冷静に見られるようになってきた時に、色んなもので守られてたものを1回捨てなきゃならなくなった。その時に自分たちは子どもたちにどう関わっていくんだ?って考えた時に「しつもん、問い、コーチング」だと思います、本当に。

藤代:僕たちも長くこの活動してますけど、加藤さんが言ってくれたように、急ぐという感覚がほとんどなかったので。

加藤:私は個人的にはちょっと焦ってますよ。

藤代:なるほど。

加藤:うん、自分も頑張らなきゃって思ってます。

藤代:今の話を伺って、もちろん僕も目の前のことに全力で取り組んでいて、この活動を初めて11年くらいになります。別に僕だけがはじめた訳じゃなくて仲間たちと一緒にやってるんですけど、

僕はスポーツ現場が主なのでスポーツで話をしたときに、小学生年代くらいから勝ちにこだわり過ぎる人を最初、敵対視してきたんですよ。小学生のうちにそんなに勝ったって何が残るんですか?と。その子たちが中学高校行って、まだサッカー続けてればいいけど、統計的にもやめてる子が多いのに何でそんなに勝ちにこだわるんですか?という話をしたかったから、この活動を最初は攻撃的にやってたんですよ。

『変わらなきゃダメですよ』って感じで。いろんな理論持ってきて、スペインではこうやってますよ!とかね、なんかそれっぽいキラキラしてるの持ってきて、参考にした方がいいですよって言ってたんですけど、変わらないんですよね現実は。何でだろう?と思って。

こんなにもおそらく正しいということを伝えているのに目の前の人が変わらないのはなぜか?と思った時に、僕自身がその人を変えようとしている時点でちょっとどうなの?っていうのも1つあるんですけど、もう1つは、構造的に、その人もそうならざるを得ないんじゃないか?って思う出来事があって。

スポーツって日本の場合ってリーグ戦じゃなくてトーナメントが多いですよね。だから、そこで勝たないと次の試合が無いっていう状況じゃないですか。そしたら、勝たなきゃいけないっていうのは必然的に思いますよね?

加藤:確かに!

藤代:そうなんですよ。だから、ベンチの子たちを出して負けて、誰かからね、保護者の人もそうだし、「また負けたんですか?」って言われることもあるじゃないですか。自分の尊厳にも関わるから。自分が「いやー、負けちゃったんですよー」って言えたら楽なんですけど、でもそうするとクラブの人数も集まらなくなるかもしれない。そしたらやっぱり、良い選手を毎回出さなきゃいけないですよね。

そしたらベンチをずーっと温める子もいるし、出れない子もいる。でそうなってきたときに、これは、その人の問題じゃないのかもしれない。全体がそうなってるから、その人も被害者であるということに気づいた時に、僕はもう「あぁ、、、」としか言えなかったですよ。虚無感というか、すごい大きなものを目にしてしまったというか。

加藤:システムの問題だったんですね。

藤代:システムの問題だと。だから、今後どうなるか分からないですけど、スポーツの文脈でいくともっとリーグ戦になった方が良いし、海外はもうスコアとか付けないですよね、小っちゃい時は。そんなのは付けたって意味ないでしょっていう感覚なので。そういうのを導入していくのかもしれないです。分からないですけど。そう考えた時に、何もしないのか?と。システムが変わるまで待ちますか?っていうと、そうも言ってられないじゃないですか。

その時は虚無感が巨大過ぎて、半年くらい何もできなくなったんですけど、、巨大な壁をどうしたらいいんだろう?って。でもまぁ、そのシステムが変わるのを待つのではなくて、本当にグリグリやるだけかしれないけど、ちょっとずつ地道な活動をしていこうって。

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そこには『2つの要素』が必要だなと思っていて。今、話を伺って、やっぱり麹町はいろんなところで話題に上がると思いますけど、両面からいけたというのがすごく大きかったんじゃないかなって。一人ひとりの先生が変わろうっていう決意と覚悟と対話というのと、行動を生んでいる例えば宿題だったりとか、校則だったりとかを改めて問い直す。「どうしてそもそも宿題って必要なんだっけ?」とか「どうして校則が必要なんだっけ?」とか。

「それはじゃあ、僕たちが大切にしている自己決定するっていうことに通じているんだろうか?」というような、木の幹や根っこになる会話ができてたんだろうなーって勝手に推測してるんですけど。

改革を押し進める魔法の一手

加藤:いつもいつもね、有益な対話じゃないですけど、すっごく話す量は多かったですよ。

藤代:じゃあ、話せる環境があったっていうことですね。

加藤:そうなんですよ、実は結構おすすめしているのが『お菓子部屋』なんですよ。あのね、麹町って「どうやって?」って言われることがすごい多くて、魔法の一手があったのか?とか言われるんですけど「無い!」って。本当にね、なんぼ考えてもやっぱり無いんですよ。私は現場の教員代表みたいな感じで呼んでいただくことが多いんですけど、本当に私自身、学校改革の経験なんて無いし、誰も無いし、工藤校長だって別に無い訳だし。

でも本当にね、工藤校長が問題提起的な今までをぶち壊すようなことを言ってくるから余計なんですけど、対話というか会話の量がすごく多くて、ひとつはあれですよ、お菓子スペースがあって「あー疲れたなぁ」って言って「あー今日美味しいなぁ美味しいなぁ」って言いながら食べる。そしたら自然とほっこりするから、イライラしてたとしても満たされるじゃないですか。温度も落ちるし、美味しいし、話題も明るくなるし。そういう中でたまに真面目な話をしたり、本当に信頼関係を築いていったり、笑顔が多くなりましたね、後半ね。

藤代:へぇーーー。やっぱりそう考えてみると、僕たちの心の余裕みたいなものが子どもたちに伝染していくみたいなものはありますね。

加藤:あると思いますね。本当にね、笑顔の力って大事だなって思うようになりました。なんかの調査でね、笑顔が多いだけで生産性があがるっていう話を聞いたことがあって、あーでも分かる分かる!って思いました。

藤代:あ、もうこんな時間になっちゃった。全て読めてないので分からないんですけど、もし質問があればコメント欄でいただければと思います。「スイーツが世界を変える」っていうコメント面白いですね。でも大事ですよね、自分を満たすって大事ですよね。

・生徒を尊重し続けると生徒は何でもしていいんだという誤解のようなフェーズがある気がするのですが。つまり、これまでの既存の古き価値観が強い学校、先生の元で過ごしてきた生徒が多い気がします。どう思われますか?

加藤:私ね、大事にしているのは、子どもの意思決定とかそういうものは尊重したい。まず、何段階かあると思うんですけど、世の中の法律はあるよっていうところはありますよね。世の中の法律っていうのは命、人権に関することだったり、盗難とかそういう系もありますよね?世の中のルールがあるっていうことはまず必要だし、、

「何でもしていいんだ??」、、子どもの中でありますよね、自由は『フリーダムとリバティの違い』みたいに言いますよね?だけど、なんだろ。「大人はこう思うよ、自分はこう思うよ」という話は全然していいと思っていて、それをちょっと強めに言う時もあるだろうし、「みんなはどう言うか分からないけど、俺はこう思う」とか。

藤代:公認じゃないってことですよね。先生は先生でこう思っていることがある、という。

加藤:そうですね。学校の教員も当事者だし。よくね、子どもたちに決めさせるという話が話題になる時に、子どもだけの世界になっちゃう時があって、

藤代:あ、先生は別になっちゃうと。

加藤:うん、大人が遠慮しちゃってね。大人がすごく遠慮しちゃって、子どもが決めたことだからなぁ、認めてあげないとダメだなぁ、ってなるんですけど、いやいや、学校って、教員も保護者も学校の一員だからっていう部分は、全然その必要以上に下がらなくていいよなーっていうのもあるし、世の中のルールっていうのもあるし、ルールに無いマナーっていう部分もあると思うし、「その決定が本当にみんなのHAPPYかな?」っていうのが大人の役割だと思うし、「それって本当にみんなのHAPPYにつながってる?みんなの尊重につながってる?」っていう。

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私ね、麹町時代からなんですけど、『自律と尊重』ってセットなんですよ。目標の中で。尊重、リスペクト、全員がみんなのOKという部分ね。そことうまくつなぎ合わせる必要はあるかなーと思いますね。

藤代:しつもんは、、

「子どもたちに何を残したいですか?」なんでしょうね。

加藤:すごい素敵なしつもんですね。

藤代:僕、先に答えていいですか?加藤先生に今日、背景聞いたじゃないですか?どうして先生になろうと思ったんですか?って。あれって、自分で決めたと思います?というのは、僕もイチ考えを持ってて、イチ意見があって、発信したりするんですけど、でも自分で決めてると思いつつも本当にこれって自分で決めたものなのかな?って考えると、本当に様々な影響を受けて、目にするもの耳にするもの、もしかしたらちょっと分からないですけど、遺伝子的なもの、歴史文化背景、いろんなものが含まって僕の口から出てきたり発信されるじゃないですか。だから、なんて言うんですかね、一人の僕が影響を与えられると思ってないんですよね。だけど、頑張るんだけど、なんて言うんですかね?日本に生まれたからこそこの考えを持ってるとも言えるじゃないですか?

加藤:はいはいはい。

藤代:うんー、なんか意味わかんないことになっちゃった。笑。

加藤:分かります分かります。自分で決めてるつもりだけど、決めさせられてる訳じゃないけど、決めるように後ろがあるっていう感じですよね。

藤代:そう。鬼滅の刃って見ました?

加藤:見てないんですよ。付いていけてないんですよ。

藤代:読んでないんですか。笑。じゃあ、やめますけど。進撃の巨人にも鬼滅の刃にも同じようなシーンがあって、これは誰の記憶だろう??っていう回想するシーンがあるんですよ。それはね、結構重要なシーンだと思っていて、何かがそうさせている、何かが記憶を蘇らせている、だから自分が何か与えたい!きっかけつくりたいって思ってるけど、その反面、矛盾した考えとして僕そんな大それたことはできないと思ってる。

加藤:おもしろーい。

藤代:他に質問は、

・勝つか育成か、の答えは?

あーなるほど。これは質問が良くないんですよ。勝利か?育成か?という質問が間違ってるんですよ。というのは、苫野先生ですね。熊本大学の哲学者の苫野先生がですね、『問いのマジック』って言ってるんですけど、あるひとつの二項対立を持ってきて、どちらが正しいか?と問うと、どっちかが正しいと思ってしまうと。なので、「勝利か育成か、どちらが大切だろうか?」って問うと、どっちかが大事だって思っちゃうんですよね。

でもそれって実は、バランスがあって、シーソーみたいにグラデーションがありますよね?だから年齢によっても違うかもしれないし、幼児には必要ないけどプロには必要だよね?とか。プロだけど、このリーグでは必要ないよね?とか。なので、答えは無いんですけど。笑。その場によって変わってしまうという。

(参考)「問い方のマジック」に引っかからない
※苫野一徳さん「はじめての哲学思考」より。

加藤:状況によって変わりますよね。

藤代:では、今日の振り返りを皆さんと一緒にしていければなと思っております。しつもんとしては、
「今日この時間で、あなたが学んだことは何がありましたか?」

こんなこと気づいたとか、こんな発見があったとか、こんな気持ちになったとか、どんな答えでもいいので教えていただければと思います。

加藤:俺ね、おもしろいなと思うのが、問いの立て方で、その動き出す思考回路が違うみたいな話をされている方がいておもしろいなーと思っていて、なんかそれこそ、藤代さんはご存知かもしれないんですけど『問いのデザイン』という本を書いてらっしゃる方の話を聞いた時に、あれは面白かったですよ。

藤代:おもしろいですよねー

加藤:これからの未来に必要なカーナビがどんなカーナビだ?って言い始めたら、カーナビのことを考え始めるんだけど、そもそも、カーナビって何?っていう話になって、うまく言えないんですけど。グッと端折って伝えると、しつもんの立て方を「どんなカーナビか?」じゃなくて、「ドライビングをどういうデザインにしたい?」みたいな立て方にしたら、、

藤代:カーナビという答えが適切かどうか分からなくなるってことですよね?

加藤:そうです、そうです。

藤代:あー、確かに。そうですよね。だから、あの、スポーツって、特にサッカーとかバスケットボールとかラグビーって、俯瞰すること、鳥の目を持ちましょうみたいなことってよく言われるんですけど、それは行ったり来たりできたらいいなと思っていて、目の前のことを意識して今何ができるかな?という問いも大事だし、鳥の視点での問いも必要だし、自由自在にできたら、彼らにいろんな選択肢やいろんな視野を提供できて、そこから選んでもらう、時には僕たちの鳥の目よりももっと遥か宇宙からの視点を子どもたちは持っているかもしれないから、それ以外もOKという視点も必要なのかもしれないですね。

加藤:そうですね。しつもんひとつでこんなにも変わるんだ!って思いますよね。

藤代:子どもたちに何を残したいですか?の答えは、私は子どもたちが自分に自信を持てるよう心からの笑顔が増えること。

・自律のためには待つべし。
・生徒との関わり合いを今以上に大切にしないとと感じました。
・これまでの出会いと言葉、これからの楽しみを感じました。
・自己決定は幸福度をあげる。
・しつもんはやっぱり素晴らしいですね。
・勉強が必要だ。
・子どもに考えさせるからと言って、大人は引き過ぎなくていい。

確かに。チームメイトっていうことですよね。子どもたちとね。

・しつもんに答えてくださりありがとうございました。子どもに決めさせる時に、教員が必要以上に下がることはないというのは新たな気づきでした。ありがとうごさいます。
・実は幹の部分にはいろんな解釈がある、だから他人の答えを知るのはおもしろい。
・自己決定が自己肯定感を高める。対話は問いと答えのキャッチボールだ。

続々とみなさん、最後のしつもんの答えをありがとうございます。
いやー、皆さんのコメント全て、のちほど読ませていただきたいと思います。一度これで終わりにしたいなと思います。今回はオンラインという形になりまして。いつかはみんなで集まって、焚き火でも焚きながら、あーだこーだとやりたいところではあるんですけど、まだまだ余談が許さない状況ですので、オンラインでつながれる嬉しさを感じながら、皆さんとまたこのような機会をつくれたらなーと思っております。最後に一言、加藤先生からいただいてもいいですか?

加藤:今日はありがとうございました。こういう貴重な機会をくださった藤代さんにもありがとうこざいましたですし、こうして一緒に考えてくださった方々がいるのも本当にありがたかったです。オンラインもありますしSNSもありますし、本当にね、私、またどっかで考え変わるかもしれませんし、あの時言ってたのごめんなさいって言う日がくるかもしれないし、でも今、自分の中でのキーワードは『しつもん、コーチング、子どもの自己決定を支援するための関わり方』っていうのが一大テーマなんですね、なので、センサーに反応し合ってくださった方々とお互いのいろんな実践とか考えを混ざり合わせてまたさらに成長できたらなーと思うので、本当に今回ご縁をいただきありがとうございました。僕もね2年位前にやらないって決めてたFacebookも始めましたので、笑、そういうところで繋がっていただきながら、またね、どっかでお会いできたらなーと思ってますので、本当に今日はありがとうございました。

藤代:ということで、しつもん探究トークいかがでしたでしょうか?本来でしたらZoomでお互いの顔を見ながらできたら良いんですけども、またそういう機会を作れたらなーと思っております。1点、自分のことなんですけど、3月3日にですね僕の本が新しく、学校の先生向けの専門書が東洋館出版さんから出ます。

『教えない指導』という、しつもんをベースにしてどのように子どもたちと関わっていくか?ということを、京都の道徳の先生の鎌田先生と一緒に出版させていただいてます。もしよかったら、ご覧ください。

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あとがき&動画配信について

対談後の感想として『鉄板しつもん』はかなり反響が大きかったです。それぞれの現場でトライ&エラーを繰り返していただけていることを願っております。また、『お菓子部屋』への反響も。笑。どちらも、会話や対話を促すという共通点があるように私は感じました。改革を押し進めた魔法の一手は無い!という言葉がとても印象的でした。(高橋香織)

【動画の配信について】
これまでの「しつもん×探究トーク」の動画は、ご希望の方に1,000円にて配信しております。お預かりした受講料はしつもん財団への寄付として受けとり、今後の運営費に充てさせていただきます。

各回のトピックも記載しましたので、興味のある動画をお選びください。
一度購入されると繰り返し何度でもご覧いただけます。
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