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NPO法人 森のこだま|上野真司さん(2)

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2021年1月17日(土)10:00〜11:30
北海道網走郡津別町を拠点に活動するネイチャーガイドの上野真司さんをお迎えして、「しつもん×探究トーク」第6弾を開催しました。

大いなる自然の営みの中で子どもたちと接している上野さんのお話にはハッ!とする瞬間(探究の入口)がたくさんありました。お話を聴いているだけで、視点を変え、視野を広げる体験ができる内容です。本物の森の写真もたくさんご紹介していただきましたのでご覧ください。

「しつもん×探究トーク」最新のお知らせは、しつもん財団ホームページをご覧ください。

<ゲスト講師> 上野真司さん
特定非営利活動法人 森のこだま 代表理事

1971年愛知県生まれ。2010年に横浜より移住。「ランプの宿 森つべつ」の支配人を経て、現職。代表を務めるNPO法人森のこだまは、自然と人間が一体となり「こだまする」社会の実現を目指し、津別町上里地区(通称ノンノの森)を中心とする近隣の自然資源を活用した様々なサービスの提供や、
自然体験・自然学習の機会を創造している。
夏のシーズンは、自ら創設した津別峠で雲海や星空を鑑賞する「雲海ツアー」「宇宙ツアー」や、地域の畑を活用した「畑ツアー」のガイドとして毎日フィールドへ出るとともに、地域の魅力を全国へ発信。そのほかにも、地域イベント「クリンソウまつり」の主催や、ガイドのための救命救急講習の主催、地域の子供たちを対象にした「森のようちえん」や「木育の授業」の取り組みなど、さまざまなアイデアで町を盛り立てる仕掛人。
<対談者>しつもん財団理事 藤代圭一
教えるのではなく問いかけることでやる気を引き出し、考える力をはぐくむ「しつもんメンタルトレーニング」を考案、全国大会優勝チーム、アイスホッケーU14日本代表チーム、さらには地域で1勝を目指すキッズチームまで、数多くの実績を挙げている。現在はスポーツだけでなく、子どもの学力向上をめざす保護者や教育関係者に向けた講演・ワークショップをおこない、高い評価を得ている。著書に『しつもんで夢中をつくる!子どもの人生を変える好奇心の育て方』(旬報社)ほか。

探究の感覚とその入り口

上野:そうですよね。それすごく大事だなって思うのと、あとはそういうメッセージをより多く受け取るために、やはり学習というか勉強、どうしても知識っていうのも必要なんだなって感じていて、でも知識は知識をためることが目的ではなくて、知る時の感動ってありますよね、知ってることと知らないことがある時に、知ってることって、本当に知らない事って、存在すらわからないわけですよね。だから、知らないってことを知らない訳ですよね。

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一般的に知らないって思っていることは、知っていることと知らないことの境界線でしかなくて、そこを広げていく作業ってすごく楽しいなって僕は感じているんですよね。だから、知らないって思ってることはある意味本当に知らないんじゃなくて、知ってると知らないの境界線上にあるからそれが見えてる訳ですよね。勉強していけばいくほど、それが円のように広がっていくと知ってることも増えるんだけどそれ以上に境界線はどんどん広がっていっちゃうんで、知れば知るほど知らなくなっていくみたいな世界。。

藤代:あーそれは分かりますね、そうですねー。

上野:っていう感覚が、メッセージを受け取ったとき、このメッセージを受け取っちゃうと、次に聴こえてくる知らないメッセージの数が膨大に増えるんですよね、一瞬にして。あの感覚は、子どもの時に勉強していて楽しいなと思えた感覚と僕の中では近くて、

藤代:まさに探究している、という感じですよね。

上野:あーそうですね、そういう意味でいうとね。

藤代:もぐってもぐって、自分が知りたいと思ったことに目の前のことに一歩ずつ歩いて行ったらその先にはすごい世界が広がっていて、

上野:そうなんです。

藤代:こんなにも知らないことがあったのかと。

上野:なんか1個扉を開けたら、その先には100個扉があったみたいな。

二人:あははは

藤代:なるほど。その一歩目は、何かきっかけが必要だったりする訳ですよね?

上野:うん、その一歩目は原動力になる好奇心だったり、もしかしたら外部から強制的に起こることかもしれないんですよね。

藤代:確かに確かに。

上野:例えばだけど、それが災害っていう名前でやってくることだったりするかもしれないですよね。

藤代:そうですねー。例えば、津別に行ってノンノの森を歩くと感じることってたくさんあると思っていて、それはそこにいない人であればあるほど、最初は驚きが大きいて思うんですよ。例えば僕で言うと、海士町に初めていった時に、ガソリンスタンドが3つあるんですけど、、まず、価格が表示されてないんですよ。

上野:はい。笑。

藤代:で、どこのガソリンスタンドで入れたらいいんですか?って聞くと、順番に入れたらいいんだって言うんですよ。

上野:うんうん。

藤代:言ってる意味がよく分からないんですよ。自分の限られたお金を、できるだけ安くすると考えたらどこかな?という視点で僕は聞いていたから。そういう目で見てたじゃないですか、東京で走ってる時は。

上野:はいはい。

藤代:でも彼らはそうじゃなくて、"共に生きる"ということを考えているから、ひとつのガソリンスタンドが儲かっちゃったらどこかが潰れちゃうでしょ?という考え方で、一個ずつ順番に行くんだよって教えてもらって。いやこれはすごい驚きで、僕にとっては。たぶんその、上野さんのところに行くと、外側から行った人であればあるほど驚きが大きいと思うんですよ最初。

上野:だと思いますし、さっきあの、どなたかのコメントで"恐怖心"というのがありましたよね?本当にガイドをしていて思うのは、ずっと東京で生まれ育っていると本物の森を歩く機会ってない訳ですよね?ゴルフ場に行くと広い自然があって、ゴルフ場って大自然だなって思う訳ですよね。でもあれはめちゃくちゃ人工じゃないですか?

藤代:作られた森だと?

まぁ、そうですね、作られた自然環境ですよね。そういうところが自然だと思っていて、この森に来ると怖いと思うんですよね。

藤代:はぁーーなるほど!どうなるか分からないんだ。

上野:はい、そうですし、北海道の森は当然ヒグマもいたりするし、実際にいつもヒグマに襲われるのかって言ったらそんなことはないし、ルールさえ知ってれば大丈夫なんだけど、その恐怖心を抱くというのは当たり前だと思ってるんですよね、なぜならルールを知らないからですよね。恐怖心を抱くというのは最初の第一歩としてはすごく大事だし、ぜひね、そういう人にいっぱい来て欲しいですね。

藤代:例えば子どもたちも、その地元の子でさえ、森に初めて来て新鮮な顔をしていたじゃないですか?そこからグッとさらに探究していく、もっと知りたい!って森に来る子はいるんですか?

上野:僕が移住してきてまだ10年ですから、正直どこまで進んでるかよくわからないですが、中学校でやった子で「大学で自然系のことを学びたい」とか、「環境省に勤めてレンジャーみたいなことをやってみたい」という相談を受けた方もいらっしゃるし、そういう意味で言うと深堀りしたくなった子は何人かいるのかな。自然の恵を使っているという意味では、畑のツアーとかもやってるんですね。森の中を歩くように畑の中を歩いていろんなことを学ぶんですけど、その中に参加してくれた大学生が興味を持ってくれて、たまたま津別はカルビーのおいもさんを作ってるところがたくさんあるんですね、ボテトチップスの。そういう産業とのつながりを知るツアーで興味を持ってくれてカルビーに就職したと連絡が来たこともありましたね。

藤代:えーおもしろいなー。

上野:早く役員になって協賛して欲しいねって話になったり。笑。でもそういう話が出てくるのは30年40年後の話ですよね。子どもたちが本当に探究したくなって、その世界に行ってくれる子が一人でも二人でもでたら本当に嬉しいですよね。

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視点を変えるレッスン

藤代:ではさっきのメッセージのところを皆さんと一緒に考えたいなと思います。個人の中で話をした方が皆さんも考えやすいかなと思うので、過去に『これは失敗しちゃったな』とか『うまくいかなかったな』とか『ミスしちゃったな』という中で、それが実は”光を射す瞬間だった”とか、”あれがあったおかげでそのあとすごく考え方が変わった”とか、”視点が変わった”とか、”行動が変わった”とか、その後の成長につながったことを思い出してみてください。

ちょっと極端な応用という感じになってるかもしれないんですけど、森の中で1本の木が倒れて他のところに光が射したように、僕たち個人ベースでの話でも失敗やミスだなと思ったことが実は次のステップに進むための良いきっかけだったということが皆さんにもあると思うので、、みなさんのふりかえりをコメントでいただけたらと思います。

しつもんとしては、
「失敗したことで、その後、得られたことは何がありましたか?」
その答えをぜひコメント欄で教えていただければと思います。

じゃあ、コメントを待ってる間に、今回、上野さんにはいっぱい写真を用意していただいているので皆さんと一緒に写真を見ていきたいなと思います。

上野:写真の整理ができないままフォルダーにあげているので、順番はあれですけど、僕の方で出してみましょうか?

藤代:はい、お願いします。皆さんのしつもんの答えもお待ちしてます。

上野:コーヒーでも飲むような、BGV的な感覚で見ていもらえればと思うんですが。

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上野:これツリーイングと言って、木に登っているシーンです。なぜこんなことをやっているかと言うと『視点を変える』というのがすごく面白くてですね。これは鳥の視点ということですよね。葉っぱのフレディという絵本もありますけど、1枚の葉っぱが見ている景色ってどんなんなんだろう?というのを感じてもらうには安全で楽しい木登りなので。

藤代:おもしろい!あー上野さん、ちょっと待ってください。コメントも紹介しながらでもいいですかね。

・間違えたら直せば良いと思えるようになりました。失敗して落ち込んでいる人にもそう伝えられるようになりました。
・望んでいない人事を承諾しましたが、今では指導できるレベルになりました。

藤代:えーすごいですね。

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上野:これなんかも視点変えたパターンですよね。散策というと皆さん地面を歩くイメージをされるのですが、これは川の中を歩く、リバーウォークというやつです。魚の視点になるのには川に潜らないといけないんですけど、川ってどこから始まってどこに流れていくの?とか、中学校とかでやるんだとしたら、流量保存の法則じゃないですけど、なんでここの川が深かったり浅かったり、早かったり遅かったりというのも歩いているとわかるんですよね。

藤代:わぁーおもしろそう!確かに!

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上野:全然視点を変えると、地球だけを見るんじゃなくて宇宙を見る、宇宙から見た地球みたいな位置づけですよね。

藤代:これは星空ですかね?

上野:そうですね、星空で。ここが天の川で、これがカシオペアです。緑色のレーザーが映ってるんですけど、これは夜の星空のガイドをしているんですが、実際の星空を使ってプラネタリウムみたいにして説明するために僕が使っているレーザーですね。今度はスケールが違うメッセージですよね。

藤代:うん、全然違う。

・次どうしたらいい失敗しないか?と考えるキッカケ、失敗した経験が誰かの参考になると思います。

藤代:確かに、誰かが失敗してくれるとそこから学べる人がいますよね?あーすると失敗するんだという・・・笑。

上野:確かに!

藤代:でもその人が失敗してくれないと分からなかったからすごい大事。

上野:そうですね。

藤代:でも結構いますよね?クラスの中でよく注意される子っているじゃないですか?あの子のおかげでま結構周りはラッキーというか、あーすると怒られちゃうんだって気付きますもんね。

・失敗したことで次同じことに出会ったらどうしたらいいかの材料を得た
・忙しさから体調を崩して大病をした時に全身が動かなくなる経験をしましたが、一度死んだ経験したことで生きる上での考え方が変わり、一度きりの人生だからいろんなことをやってみよう、いろんな人たちへ感謝の気持ちの意識が強くなったと思う。

藤代:なるほど、ありがとうございます。では写真も紹介していきましょう。

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上野:これは星ですね。たぶん指してる写ってる星がアルタイルだと思うんですけどね。

藤代:すごいこんなにもクッキリ見えるんだな、すごい。

上野:宇宙だと全然、時間軸が違いますよね。

藤代:これって宇宙から見たら、光が来てるってわかるんですかね?

上野:たぶん届いてないと思いますけどね。そもそも指してるの鷲座のアルタイルという星なんですけど、例えばこの星の光を見ているのってこれ距離で言うと25光年離れている星なので、25年前の光なんですよね。

藤代:そうですよね、そうだそうだ。

上野:っていうタイムスリップができるという話になってくると、宇宙でこう見てるのって、100年200年前の光じゃなくて1000年2000年前の光も届いてきてたりする訳ですよね。人間の時間軸じゃないものを感じられるには視点もものすごいマクロに持っていくっていう。森なんて目じゃないですよね。人間の森なんて1万年2万年のスパンですけど、宇宙の星たちって考えたらもう46億年の歴史が地球にある訳で、ちょっとこう時間軸を変えてくっていうのは楽しいかなって。理科で習うと星の名前ばっかり覚えちゃうので、、これも大事なんですけど知識としてね。

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上野:これが朝陽ですね。

藤代:僕は雲海は見れなかったですけど、素晴らしい景色でしたよね。

上野:そうですね、この日雲海なんですよね。なんでここに雲が溜まるのか?とかね。

藤代:あーーなるほど!!

上野:夜、星を見た人たちは今度、陽が出てくるっていう行為が、これが一番近い恒星ですよね。これはさっきの時間軸で言ったら、光年で言ったら8分で辿り着ける訳ですよね。宇宙スケールから地球スケールに変わっていく瞬間ですよね。

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上野:これがまぁ雲海ですよね。本当に難しいこと言わなくてもこのスケールに圧倒されますよね見てれば。

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