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●運び屋と感染力

ペストはペスト菌の感染によって起きる感染症です。ネズミなど齧歯類を宿主とし、主にノミによって伝播されます。

14世紀の西ヨーロッパに大流行、人口の3分の1、200万人もの死者を出したとされています。これだけの大きな変化は、当時の百年戦争・バラ戦争などの相次ぐ戦乱ともあいまって封建制の崩壊にダメ押しをしたと分析されています。

ただしペストはもともとは中国の、おそらくは雲南省あたりの「風土病」だったようです。

それが長い時間をかけ、ネズミに付いたノミがシルクロードや海運を介して「移動」することで西ヨーロッパに達しました。ネズミが「運び屋」だったわけです。

「移動」といえばそもそも、中国に581年、約300年ぶりの統一国家・隋が成立しましたが、隋は華北と江南をつなぐ大運河をつくり、それを伝って南から北へネズミが移動、帝国崩壊の背景ともなったのでした。610年ごろから、隋ではペストが大流行。そして618年隋はほろんだのでした。

社会のある種のリセットに、感染症がかかわっていたのですね。

いま世界を混乱に陥れいてる新型コロナはこの点、どうなのでしょうね。

新型コロナの場合、「運び屋」はヒトです。ペストと違い病原体がウイルス、一種の物質なのですから(実はこれは20世の常識で、21世紀の現代生物学はウイルスをも「生物」概念に取り入れ、生物観を一新していますが)。

ペストが細菌を病原体にしており、コロナがウイルスを病原体にしている。そこから、どうも新型コロナに対する感染症対応の議論にやや混乱があるように感じます。物質であるウイルスには足もなく自身で「移動」は不可能。ヒトが「移動」してはじめて、感染の面的広がりが可能になる、そのことと、「感染」が混同され議論が空転している感があるのです。

たとえば、お盆に帰っていいのかどうか議論。

新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は8月16日、「GoToトラベル」に関連して、「新幹線の中で感染は起きていない。旅行自体が感染を起こすことはない」としています。

これは「移動」と「感染」をきちんとわけて考えられない、私たち素人にはミスリードな印象を与える言説のように思えるのです。


■関連URL

●『グレート・リセット』とは https://society-zero.com/chienotane/archives/8822
「私たちはいま地殻変動のさなかにいて、まったく新しい経済秩序に突入する。それは(19世紀の)農業経済から工業経済へ移行したような大変革で、今回は工業経済からアイデアに基づいたクリエイティブな経済に移行する」(リチャード・フロリダ)

●日本は経済と社会をリセットできるか https://society-zero.com/chienotane/archives/8791
世界経済フォーラム(WEF)は6月3日、2021年1月に開く年次総会(ダボス会議)のテーマを「グレート・リセット」にすると発表しました。会議の六か月も前にアジェンダ設定し公表するのは珍しいことです。

●感染症対策は危機管理上重大な局面に 新型コロナ https://society-zero.com/chienotane/archives/8877
首都圏以外での実効再生産数の増大、1週間で区切った場合の新規感染者数の急増。どれをとっても感染症対策は危機管理上重大な局面にきているように見えますが、政府の無策は次の2週間後、どういう結果として現れるでしょうか。

●国や自治体が、新型コロナで「すべきこと」 https://society-zero.com/chienotane/archives/8852
2020年1月以降の日本社会で、新型コロナについて我々が知りえた知見を整理しました。半年分の戦いから得られた教訓です。

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「コロナ後のニューノーマルへの備え」と「社会の危機を変化の入口に」 https://society-zero.com/chienotane/archives/8534
風邪が三番目の対応法になるかも 新型コロナに対して https://society-zero.com/chienotane/archives/8728

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