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あの冬をわすれない【違う冬のぼくらプレイ記】

はじめに

こんにちは、獅子村です。

縁あってずっとやりたかったゲームである「違う冬のぼくら」をプレイする僥倖に巡り合いましたので、プレイした感想とか考察未遂とか雄叫びを書き留めておきたいと思います。プレイ中は基本「なんかすごい……すごいです」「なにそれ!!!!?!???!?」「ウッ……ウワ~~~!!!!!」「じゃあ死にますか……」「良すぎる」しか言ってなかったので、ご一緒いただいた相棒になんやコイツと思われていないか不安です

当たり前ですがマジでネタバレしかないです。プレイ後に読んでください


ここはどこ?【時に鬼ムズいパズル】

意を決してプレイ! 銀河鉄道の夜を思うと自動的に感情があふれる人間なので、電車の時点からすでに雰囲気に感動しています。これぜったいエモいやつ。
オンラインでしゃべりながらゲーム、というのに慣れてなくてドキドキしていたのですが、怒涛の「パケモン」「金銀」「カベゴン」「ルビーサファイア」でニッコニコになってしもた。伏せる意味なさすぎる

アスレチックに挑みながら山を登っていきます。ジャンプも歩幅もちまっとしててかわいい少年たち……と思ったら突如鹿の死体でした。あまりに突然のグロあるよ笑 にSAN値が削られ、さらに謎の生き物によってもう一回SANチェックが行われました。じっさい轢かれたたぬきとかは見かけますが、鹿はさすがにデカい。あと知らん生き物は怖い。これがクトゥルフ神話TRPGかぁ~。テーマパークに来たみたいだぜ

目が覚めると、自分たちがロボットになっていました。なんか山もさびれています。「ぼくたちの頭がおかしいだけだよ よかったー」←言ってみたい台詞No.1すぎ
緑くん『いちおう言っとくけど、ぼくのこと食べないでね…』
ワシ「?????」
これもしかして...…違うものが見えてるパターンですか?
「えーでも......冬ですよね?」「冬っちゃあ冬かな」みたいなことを言いながら普通に進んだら、突如「エッ!?」と言われます。なんと向こうの世界では私が空を歩いてるみたいでした。プレイヤーに電流走る――(もう”始まってる”ンだぜェ~~ッ!!)その後も相手が地面から生えてきたりお互いが行けないところを進んでいたりと、本領発揮とばかりにギミックがしかけられていきます。これが「見えてる世界が違う」かぁ~~~!!!こちらは枯れ腐った感じの山なんですが、向こうはどうぶつたちと絵本の世界みたいなデザインらしくて、いいなぁ~こっちなんか枯れ腐ってて……なんて言いながら進んでいました。いたんですが……

ウワーッッッ!!!!!
「えっ?なに?どうしたの?」
「せっ、せぼねが……!!
(背骨……?この犬ロボから伸びてるパーツのこと?)

首が!!!!!!
「え!?!」

なんか平和じゃなさそうです。
道中で緑くんが瞬間移動を使うとこ、こっちだとめっちゃかっこよくて「すげー!!かっこいい!!!こっちもやりてえ!!!」って言ったんですよね。そしたら「かっこいい...…???」と困惑されたので、こりゃ二週目が楽しみだぜ~~となっていました。

そして二週目で同じところに来た時、己の発言の浅ましさを知る――(時には誰かを知らず知らずのうちに傷つけてしまったり)

ウ……ウワーッッッ!!!!!
「せぼねが!!!!!!!!!!!!!!!!!」
~SAN値終了~

ドットのグロは幾度か経験していたので助かりました。グロあるよ笑 は心臓に悪いですね。

離れたところから図柄を相手に伝えて進んでいく、みたいなステージも、表現力が問われるかこくなステージでした。「下向き懐中電灯」と「上向き懐中電灯を見る人」があったの、懐中電灯に頼りすぎやなとおもい、反省
おにぎりは全会一致でよかったです
私が「通帳」としか言えなかったものを、相方は「ノートパソコン」と言ってて、その手があったか!と感服したり。

自分はパズルゲームに不慣れなのと、もちまえの要領の悪さを遺憾なく発揮して何度も詰みました。その節は大変ご迷惑を……
詰むたびに「詰んだ?」「詰んだっぽい」「じゃあ死ぬか(飛び降り)」(ガシャーン)を繰り返して少しずつ進んでいくのはめちゃめちゃ楽しく、クリアできた時の達成感は得難い幸福でした。急な鬼ムズ犬畜生操作ステージとか、身体だけで山のぼりするステージとか、相方の屍を超えていく(物理)ステージとか、いろいろな困難を乗り越えて先に進めた時の喜び。ほかにはないゲーム体験だなあ…としみじみ思います。二人プレイのゲームをほとんどやったことなかったし、友人とゲームをすることもなかなか無いから、すっごく楽しかった。でも身体だけで山のぼりはマジできつかったです。
「右ジャンプです」「こうですか?」「垂直ジャンプになってます!」「こう?」「それも垂直ジャンプです」(ぐにゃあ……)

二周目のあまりのサクサクさに笑ってしまいました 一周目で苦労した甲斐があったね

かぞく【ストーリーでめちゃくちゃになる情緒】

そんなわけで、機械の世界ではグロもなく、全てが無機質です。首が取れても、3分割の犬をくっつけても、背骨が伸びても、全部ロボットだから無機質。無機質であるからこそ、俗っぽく言えばサイコパスっぽく、冷淡にならざるを得ない設計であるように感じます。
「おじいさん」の話を聞くのが青い子であるのも、目の前で生けるものが殺されるのが緑の子なのも、生き死にを操作してしまえるのが青い子なのも……二人の意見が交差し、分かり合えないようにできているなあと感じました。お互いの話がどこまで見えているか、お互いの考えにどこまで思いを馳せられるか。
緑の子から見たら、目の前で人とうさぎが殺されて、自分も危なかった状況で「あいつ」を許せるわけがないよね。だけど青の子には機械が壊れてるようにしか見えないから、ある意味現実味がなくて「死」を直視できないのかもしれない。おじいさんの過去についても聞いているから、かわいそうだと考える。緑の子はポップな見た目で覆われているけれど生死に関してのリアリティを孕んでいて、感情的になりやすい。ふたりの見え方の対比は、ふたりの性格の対比とも重なっているのだろうか。
黄色いマフラーの少年「ハル」の前で、青い子が「父親かもしれない」男について話す場面があります。あまりに偶然で、飛躍的で、楽観的な希望を話す青い子に対して、緑の子は(とある確信があったとはいえ)冷静に、現実的に、理性的な結論で諭します。ふたりのもともとの見かたは、山での世界の見え方(動物と機械)と真逆なのではないでしょうか?

二人は家庭環境も見かたもまったく異なる二人のこどもです。一人は父親を知らず、両親の形を知りません。一人は平和な両親を知らず、自分を見てくれる親の存在を知りません。青い子の思う「おとうさんとおかあさん」は、またとても理想論的で、緑の子の知る「おとうさんとおかあさん」は、確かにここに存在する現実です。どちらもいびつな家庭で生まれ、道中出会ったおじさんとおばさんに思うことも違う。
画面越しのプレイヤー同士も、別々の人間です。(きょうだいでプレイする人もいるかもしれないけど)今まで全く異なる人生を歩んできた二人が、同じゲームに対峙しそれぞれの意見をもって歩んでいきます。
私と、一緒にプレイしてくれた相方も、住む場所も現在の環境も考えも、おそらくなにもかも違うでしょう。偶然おなじ趣味で出会い、今もたびたび同じコンテンツに触れますが、まったく別の人間です。
だけど、別の人間だからこそ知りたい、分かり合いたい、友達になりたいと思い、友達でいたいと思うのではないか。大事だと感じるのではないだろうか。青い子と緑の子がお互いを思いやり、相手を逃がして自分がここに残ると言う。相手に生きていてほしいと願う。友だちを残して先に行けないと、一緒にいると叫ぶ。
ふたりの少年は、わたしが少年少女の中にいたころ抱えていたはずの、希望に似た何かを持っていました。愛と勇気を持っていました。
少年たちのような無垢さは時にまぶしすぎるものですが、二人の友情の美しさはたぶん、私の心をちょっと清らかにしました。

「きみにぼくは関係ないかもしれないけど」
「ぼくにとってきみは関係あるよ」

あのともだちを忘れない。【三つ目のエンディング】

二周目のエンディングで、ふたりの少年だった二人の青年はそれぞれの親に電話をかけます。「あいつと会わなくてはならない友だち」、ハルに会いに行くために。
あの山の頂上で二人は、前夜に渡したハンカチを見て、もしくはまた別の視界を見て、あの化け物だと思っていたものがハルだったと知ります。
大人になった二人は、すっかり朽ち果てたシーソーやのぼり紐を横目に、子供のころは通れなかった山道もすいすい進んでいきます。(この高さから降りても無事なの!?)成人男性って すげー!
そしてあの日鹿の死体を見た場所で、あの日よりも大きく肥大化し、今は自立していない「ハル」に会います。二人は「ハル」に近づき、ハルは二人を抱きしめるように手を伸ばすのでした。

「違う冬のぼくら」
講談社



作 ところにょり
Thank you for playing!

...…。

オイ。

オイオイオイ 死ぬわ情緒

ところにょりィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

そのあとプレイヤー二人は乱れた情緒を収めるためにサーモンランをしました(やあやあ、よく来てくれたね 待っていたよ)

こんなさあ……マジで…...…ハル...…

トゥルーエンドというか、ハッピーエンドかどうかはわかりませんが……三人が再会し、ハルは嬉しそうに見える。それで十分ではないでしょうか。

おじいさんの家にいたAIが言っていた通り(うろ覚えだけど)、やっぱり機械の世界が「この世界の本当の姿」なんでしょうか。
機械の世界が真実で、人間の見た目もそもそもフェイクで。だから首がもげても3分割されても平気だし、頂上にあった機械の電波か何かで人間としての認知が戻る。人間や動物ではありえないギミックが出るたび「これ現実でどうなってんのよ」とは思ってたけど、機械の世界ではあまり矛盾というか、ありえない出来事を感じなかった。(サントラも動物側が文字化けしているし)となると機械の世界が真実で、本来の認知ではハルがいわゆる人間の形であるのかも。
私は「ハル」のあの姿を、山で亡くなった後、おじいさんによって死体を切り貼りされた結果なのではと思ってたけど、おじいさんに「真実の世界」がもしつかめていたのなら、おじいさんにとって「ハル」は完璧に修理できた人間だったのかもな。だから妻と子供ももしかしたら...…って。時系列はわかんないけど。妻子以外をわざわざ組み立てたりするかな、と思って。

「結局ねえ じいさんの家に入った強盗が全部わるいんすよ」(鮭をシバいている)
「そうだそうだ 強盗が全部悪い」(鮭をシバいている)

あの僕を忘れない【おわりに】

銀河鉄道の夜が嫌いなオタクっていなくて……(クソデカ主語)
この物語の冒頭に銀河鉄道の夜が用いられていることを考える。ハルはカムパネルラであって、ふたりの少年はジョバンニでありザネリでもあるのかもしれない。ハルは二人を助けて、三人は友達だった。
こんなんされて好きにならんわけないやん...…今年けっこういろんなゲームやったけど、情緒の乱高下的には上半期最高のゲーム体験だったかもしれないです。こんなのクトゥルフ神話TRPGの2PL秘匿HOシナリオじゃん。
ところにょり氏のゲームを知ったのは五年以上前だと思うんですが、ちゃんとクリアするのは初めてでした。switchに出してくれて本当にありがとうございます……
時期はメチャクチャ初夏で季節外れではあったんですが、冬にやってたら切なくて悲しくて泣いてたかもしれん。結果オーライってことで(何が?)
そして私の「違う冬のぼくらセールやってるって!」というつぶやきから即購入してくれて、3周もの間付き合ってくれたやさしい相方!ほんとうにありがとう。Chu!右ジャンプ下手でごめん。このゲームを通じてたくさん話せてうれしかった。とってもだいじな友人になれたんじゃないかなあ、と私は思ってます。いつか一緒にふたりのように花火をしましょう。

ほな、冬から抜けられなくなっちまったんでBGM無限ループしてきます。







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