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『(簡易な違約とともに書き逸れていく)鶺鴒追跡』報告   *(slash)


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☨鶺鴒追跡、(slash)
/slash/は、二人の起源を持っており、
一人は水都柳河の造り酒屋に生まれ、
前衛と愛唱とを成立しうる全方位者、
無味無臭な結晶の
そのたびごとの結集と離散である
ただひたすらに任意な形態をとる雪を
林檎の香りを帯びて舗石に降らすことのできる北原白秋であり、
『鶺鴒一册』から始まる横書きの詩房は
川から立ち上がる靄によって乾きを奪われ、
渇きゆえに鶺鴒は消息する。

もう一人は地理的には地中海を隔てて仏国の対岸、
アフリカ大陸の最大面積を誇りながらも
サハラ砂漠に大多数を占められているため
地中海と砂漠という二つの顔を持ち、
日本でいうならば対岸に異国を持ち、
冬でも暖かいといえば
韓国を対岸に持つ博多か、台湾をそばにもつ鹿児島に
気候は近いらしいが、
そのようなアラブとフランスの交差点でタクシーを待ちながら
共和国と言語を共有する地に生まれて
差異のスラッシュによって有徴とされるがゆえに、
永続的に敷石を剥がして投石とする思想の単独者、
転覆のフーリガン、ジャック・デリダである。

したがって、/slash/は、
切断の雨滴や躊躇の薄膜に似ていなくもないが
《渓流=帰郷》の岩場で遊ぶ黄鶺鴒の尾が水に撥ねた
飛沫の波から波へと波動を受け渡していく
吸気記号として機能しつつも、
剥がされることから限りなく離接しようとする《敷石=川底》から、
渓流という遊具がぴったりと接合されずに
猶予を残したままであるために、
<離la ville>と<接le village>とを繰り返すのを目撃する
永遠に見開いた目の瞳孔の言語とを
われしらず漏らした吐息によって分節していくのを
再微分しようとする。

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