ロロの旅のあとしまつ(公演振り返り雑記) その2 公演内容について

引き続き「ロロの旅」振り返り記事になります。前回は前日譚が中心となりましたが、こちらでは公演本編の振り返りをしていきます。

あらすじ

雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けず
…なんてことを言ってみたいけれど、そもそも私には関係のない話。
だって家の外に出る事ができないのだから。
白い花の咲く丘にひっそりと立つ一軒家。そこがロロの世界でロロの全てだった。
ある満月の夜、ロロは父の居ない隙を見計らい家の外に飛び出した。
散歩?買い物?違う、これは旅の始まりだ。
窓から見る景色と古びたヒーローアニメが世界の全てだったロロが触れる新世界。
出会い・別れ・すべてが広がる無尽の荒野、その一円が身体を揺さぶりパルスを速める!儚い夢を真に受けて、眠れないから旅に出ようか。
どこまで?星の向こうまで

----本編台本はこちらで公開中です----

うちわけ

前編でも述べましたがコンセプトは

・眠れない少女のために、客席全体を揺らしておばけを退治するストーリーライン
・「呪い」を「祝福」に換える短編演劇
・モデルとしての活動も行う越智さんの、ポートレート替わりともなる公演

と言う3点。
マイクロサイズの公演になるので、稽古をし易いように覚えやすいように言葉選びを重ね、ポエトリーリーディング風にテンポ良くに言葉を刻む作風を心掛けました。
(ほぼ)一人芝居の中、朗読シーンと会話シーンのスイッチングも僕の中で覚えやすさを意識した結果です。
ワードチョイスや文章構成についてお褒め頂くことがとても多く素直に嬉しいです。 

ストーリーライン

・少女が勇気を出して夜を越す
・歌を唄って悪魔を追い払う
あとはシンプルにこの2つの内容を突き詰めるだけのはずでした。
女優が決まり、コンセプトが決まり、会場が決まり、残すはすべてを活かす物語造り。
ストーリーを作る際、自分がよくやるのは昔話やおとぎ話を下地にする方法です。
3びきのこぶた、かぐや姫、と今までモチーフにしてきましたが今回参考にしたのは宮沢賢治作「よだかの星」です。

私自身、過去に何度か朗読に挑戦したこともある著名な作品ですが、「「呪い」を「祝福」に換える」話を書きたいというコンセプトと、世界を憂い星の元に連れて行ってくれと嘆き、その果てに星になったよだかに類似性を覚えモチーフとさせて頂きました。
勿論賛否も好みはあると理解していますが、私というフィルターを透かして見えた部分を物語に落とし込むとロロの旅ができあがりました。 

最初期の話

あちこちを訪ね、訪ねた先の神様にことごとく拒絶されたロロが最後に辿り着いた海は神様がいない世界でした。そこでアンダー・ザ・シーを歌い祝福されながら死に至る、と言うのが草案の草案。
なぜアンダー・ザ・シーなのか。メロディのキャッチーさもありますが、歌詞を観る角度を換えてみると鎮魂歌に捉えられなくもないんじゃないかと考えた事、メジャーな曲を捻った使い方で魅せる事がインパクトになるんじゃないかと企んだ事が理由です。
結論として話の内容にバチッとハマる曲が浮かんだのでこの演出は見送りましたが。

・なぜ歌を唄うのか

劇中で歌うシーンが二度挿入されますが、急に歌が始まり戸惑ったというお声も頂きました。
歌を唄う意図に関して、端的に言ってしまうと"演出家である私の好み"というところに落ち着きますが、それで済ませるのは少し乱暴なのでもうちょっと考えてみます。

・よだかの星をモチーフに話を組み上げている最中、話にもこれまでの展開にも内容が合致する歌を見つけ、話の流れに組み込んで演出に用いようと考えた一曲目  #Sharp /ねごと 
・「おはようございます」と新しい旅に出るロロを見送る展開に適した歌い始め、物語の陽性な結末をイメージ付ける明るい曲調でエンディングソングとしての演出を考えた二曲目 samurai drive/hitomi
・越智さんのポートフォリオとして主演の多彩な面を見せたかった事
などの意図があげられます。

・大比賀の存在

越智さんのポートフォリオとして基本的には一人芝居としての物語構成を考えていましたが、会話のやり取りやナビゲーションのために他のキャストが必要になりました。
稽古スケジュールが平日昼間中心の不定期という極めて特殊だったこともあり、そこで大比賀が出演することに。一言一言の役も多かったのですが、数えてみると都合十二役を兼任してました。
演じ分けには私は声色だけで他には何も必要ないと話をしましたが、越智さんのアイデアで小道具を用い演じ分けることに

使用した小道具一覧

結果的にロロの紡ぐ話に対して、大比賀がナビゲーションを行う役割分担が明確化することができました。
ロロの旅はよだかの星をモチーフにしたおとぎ話だし、一人の少女の見た夢なのかもしれませんね。
大比賀が開演前諸注意を行っている最中にロロが話しかけてきて、シームレスに物語が始まる序盤。
オープニングで父親と話すシーンを作った意図が気になる、というアンケートを頂きましたが、「私がナビゲーションと役者を兼ねるんですよ」、「私の立ち位置はメタフィクションな部分がありますよ」、という示唆を前説に込めた結果になります。
ナビゲーションを兼ねてなくても自分の作品で前説をやりがちな大比賀です。

とても長くなってしまいました。
もう少しだけお付き合いください。

−−−−−−−−振り返りその3に続きます

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