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鳴海ニュータウンズ オムニバス掌編小説集

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「鳴海ニュータウン」は日本の西の端、海のそばの丘にある架空の町です。 町に暮らす人々のあれこれを書いています。 出会いとか、別れとか、置いてきてしまったものとか、もらったものとか… もっと読む
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記事一覧

同窓会の夜 3

一応、コンビニにガムを買いに行くという体で出てきた僕たちは、律儀にまずコンビニへ行って、…

しるびやんけ
8か月前
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同窓会の夜 2

二次会のカラオケには結局一次会にいたほとんどが行くことになったらしく、パーティールームは…

しるびやんけ
8か月前
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同窓会の夜 1

稲田さんと再会したのは、21歳の夏のことだった。大学を4年で卒業するのがほとんど無理だろう…

しるびやんけ
8か月前
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空っぽの部屋 4

美穂の母は口数の少ない人だった。会話は必要なやり取りがほとんどで、愛しているとか大切だと…

しるびやんけ
8か月前
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空っぽの部屋 3

いつか行こうね。そう言いながら実現しなかったことはいくつかあるけれど、コウヘイと約束した…

しるびやんけ
8か月前
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空っぽの部屋 2

空っぽにした部屋を出て就職したオフィスは、天神の繁華街のすぐそばだった。通勤には耐えられ…

しるびやんけ
8か月前
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空っぽの部屋 1

人生というものを思い浮かべる時、それぞれに固有のイメージがあると思う。底なしの真っ暗な穴。ライオンの頭に蛇の尻尾がついた雄々しい生き物。指の先ほどの小さな箱庭。 美穂が人生というものについて考える時、そのイメージはいつからか、主人のいない空っぽの部屋になった。窓の外、遠くに海が見える小さな部屋。はじめから空っぽだったわけではなくて、そこかしこに生活の名残がある。 本格的に学校に通うことができなくなったのは、いつ頃からだったろうか。この町に帰ってきた頃、しばらく頭に霞がかか

風土記 1

鳴海ニュータウンが属する琴海町は、西彼杵半島の東部に位置する。町の西部、北に伸びる半島の…

しるびやんけ
8か月前
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二度目の帰省 4

船着場には人影はなくて、小さな街灯が寒々しい。岸壁に沿って数軒並ぶ家も静かで、一軒だけ小…

しるびやんけ
8か月前

二度目の帰省 3

12月30日。ピンとタイラに連絡をして、3人で集まることになった。夏休みには会えなかったから…

しるびやんけ
9か月前

二度目の帰省 2

12月29日。朝から特にやることも無かったから、運転の練習ついでに母の買い物に付き合った。緑…

しるびやんけ
9か月前
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二度目の帰省 1

当日の空席があったら安く乗れるユースチケットを狙って羽田空港に向かったのは朝の8時。出発…

しるびやんけ
9か月前

あいつの部屋 1

ピンが引越したのは、高校一年の夏のことだった。もともとニュータウンの端っこのバス車庫のそ…

しるびやんけ
9か月前
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メル友のアカネちゃん 5

長崎駅に着いたのは11時過ぎ。アカネちゃんとの約束の時間まではまだ随分ある。どこかでのんびり座って時間をつぶせるだろうと思っていたタイラの思惑は外れて、アミュプラザの中のベンチはどこも先客で埋まってしまっていた。というよりそもそも、タイラが思っていたよりもずっと、座っていられる場所が少なかった。 一階はお土産売り場。2階と3階はファッションブランドのお店がたくさん。ファッションに興味はあるけれど、お金も結局お昼ご飯代くらいしか持ってきてないし、一人でお店に入るのは緊張するか