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月次決算の基礎 全7回

 スタートアップや小規模企業の一人経理向けに、月次決算の習慣化とスキル向上を目的とした情報提供をします。できるだけ分かりやすく、実践的な内容を段階的に提供していきます。
月次決算の基本を学べるシリーズとして参考にしていただければ幸いです。

シリーズ構成

このシリーズは全8回を予定し、基本的な会計知識から始め、具体的な決算作業、分析、改善策までをカバーします。

導入:月次決算の重要性と全体の流れ
第1回:月次決算の準備
第2回:仕訳と帳簿の基礎
第3回:費用と収益の認識
第4回:在庫と固定資産の管理
第5回:財務諸表の作成
第6回:月次決算の分析
第7回:次月への準備と継続的改善

今回は導入回として、月次決算の重要性と全体の流れについて説明していきます。

月次決算がビジネスに与える影響

 月次決算は、企業運営においてだけでなく、ビジネスを行うすべての人にとって、自社の”財政状態”を正確に把握し、適切な経営判断を下す上で不可欠なプロセスです。具体的には、企業の”財政状態”とは、「資金繰りが安定しているか?」という点を経営者が確認し、安心できる状況を把握することです。毎月の決算を通じて、経営者は収益の流れ、発生する費用、資金の状況など、会社の財務に関する詳細な情報をリアルタイムで入手できます。これにより、資金や人材の最適化、リスクの管理、戦略的な計画の策定が可能となります。さらに、月次決算は企業の透明性を向上させ、投資家や金融機関からの信頼を獲得するための重要な手段となります。

月次決算の全体の流れ

1. 請求書の作成

月初には、前月に発生した取引に基づいて請求書を作成します。これにより、発生した収益(売上)が確実に記録され、収入管理が正確に行われます。

2. 資料の収集

全ての財務取引に関連する資料を収集します。これには銀行の明細書、支払い伝票、受領証、その他の取引記録が含まれます。これらの資料は、正確な会計処理の基盤となります。

3. 取引仕訳の登録

収集した資料に基づき、必要な取引を会計システムに仕訳登録します。このプロセスは、すべての財務活動が適切な勘定に記録されることが必要になります。

4. 数値のチェック

仕訳登録後、入力された数値が正確であることを確認します。このチェックにより、後の段階での調整が必要なエラーを最小限に抑えます。

5. 試算表の作成

すべての勘定がバランスしているかを確認するために試算表を作成します。この試算表は、財務諸表作成の前段階として重要な役割を果たします。

6. 調整仕訳(決算仕訳)の実施

試算表を基に、必要な調整仕訳を行います。これには前払費用の調整、減価償却の計上、未収入金の処理などが含まれます。

7. 予算実績の比較・分析

作成した財務諸表を用いて、予定された予算と実際の結果を比較します。この分析を通じて、予算との差異原因を特定し、今後の計画に反映させます。

8. 課題対策の策定

最後に、分析結果を基に課題対策を策定します。これには改善策の立案や次月の運営方針の調整が含まれ、企業の持続的な成長につながります。

このような体系的なアプローチにより、月次決算は企業の財務状態を正確に反映し、効果的な経営判断を可能にするための基盤となります。

最後に

 次回のセッションでは、月次決算シリーズの第1回目として「月次決算の準備」に焦点を当てます。この回では、月次決算をスムーズに進行させるための基本的な準備段階を詳しく解説します。取引記録の整理から、適切な会計ソフトウェアの選定まで、月次決算に必要な事前準備について具体的なステップを学んでいただきます。この準備が成功の鍵となり、後のプロセスが効率的かつ正確に行われるための基盤を築きます。次回もお見逃しなく、月次決算の基礎からしっかりと身につけていきましょう。


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