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[小説] 雨模様

昨日から、降り続く雨。
今朝、起きてもそれは続いていた。
少し止んでは、また降り出し・・・
その降り続く雨を窓越しに、ぼぉ〜っと眺めていた。

それにしてもよく降るなぁ・・・ 秋の長雨とか秋雨とか言うけれど、完全に止む気配が無い。 近所のお店でどうしても買いたいモノがある。 少し歩けばたどり着くお店で、どうしても買いたいモノがあるのだ。
そんな私の願いが届いたのか、その瞬間雨が止み、雨の止み間が見えた・・・

今だ・・・今しかない

お財布だけ持って家を飛び出した。

行き先は近所の書店。 お目当てのモノはすぐに見つかったけど、ついつい雑誌のコーナーで足を止めて、パラパラと立ち読みしてしまう・・・
その純粋な願いから外れた行動でバチが当たったのか、お目当てのモノを買って外に出ると、猛烈な豪雨。 

しまった・・・傘を持って来ていない・・・
お店の軒先から、そぉ〜っと空を見上げて様子をうかがう。 視線の先は、真っ黒な雲・・・そして雲。
それにしても、さっきまでと降り方が違う。 家中から見てただけだから印象が違うのかもしれないけど。

頭に思い浮かぶのは、玄関に置いてあるお気に入りの赤い傘。
と、最近になって同棲を始めた彼氏の顔。


プラプラお散歩デートの途中、店先で一目惚れして買った赤い傘。 一口に赤色と言っても、色々あるけれど
鮮やかだけど派手さはなく、下品とは正反対の赤色。
言葉で表現するとそんな感じかなぁ
その時、彼は「じゃあ、俺はこっちの青いのにするよ。」そう言って彼が手にしたのは鮮やかな青色の傘。 二人で傘を広げてみる。 パッと華が咲いたみたいだねぇと、二人で笑い合った。 今とは違って、とっても良い天気だったけど。

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その日の帰り道。 二人並んで手をつないでプラプラ歩いて帰っていた。 暗くなった道を駅に向かって歩いていた。
もうすぐ駅。 駅からは先、二人は正反対へ帰る。 彼は登り電車で私は降り。 それぞれ別の家に帰る。 

そんなタイミングでふと彼が口にした「この青い傘と、君の赤い傘を並べて飾るとキレイだろうね・・・」 この一言で始まった同棲生活。

そんな思い出を頭の中で再生させていた時
私の視線を鮮やかな赤色が遮った。 見上げると、青い傘を差してもう反対の手で赤い傘を差し出す笑顔の彼がいた。

「たぶん、ここだと思った。」 「家にいないから、出掛けたのかなぁと思ったけど、玄関に君の赤い傘があったからね・・・」 「単純な自分の行動に感謝だね。」
なんか一言多いなぁと、私は一瞬顔を曇らせたけど
「ありがとう」 笑顔で赤い傘を受け取った。


少しマシにはなったけど、まだまだ降り続く雨の中。 赤色の傘と青色の傘を差して、二人並んで歩く。  

さっきまで、なんで雨なんか降るんだろう。
そう思っていた。 
でも、今は何となくその理由が分かった気がする。


こちらの企画に参加させていただきました。


 



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