パパ世代の風疹ワクチン接種について
知ろう小児医療 守ろう子ども達の会
メルマガチームリーダー 高橋夏子
風疹の流行が続いています。患者の多くは、30代から50代の男性で、首都圏を中心に、報告されています。
風疹は、発熱と赤い発疹の出る感染症で、1度かかったら多くの場合、一生かかることはないといわれています。ただ「自分は、子どもの頃かかった」と思っていても、実は『りんご病』など、別の病気だったということもあるそうです。
風疹は、くしゃみや咳などでうつり、インフルエンザよりも感染力が強いというデータもあります。通常、感染すると1週間ほど外出はしないよう言われます。ただ、『不顕性感染』と言って、症状の出ない場合もあり、知らないうちに感染を広げているケースも多いそうです。
大人がかかっても命に関わることは、ほぼありませんが、妊婦さんが感染すると、おなかの中の赤ちゃんの目や耳、心臓などに障がいが出ることがあります。これは、『先天性風疹症候群』と呼ばれますが、周囲の人がワクチン接種をすることで、防げるものです。
今の子ども達は、MR(麻疹+風疹混合)ワクチンが定期接種となっています。また、過去には女子だけ、中学生の時にワクチン接種の対象とされていた時代もあります。しかし、30代から50代の男性は、これまで、ワクチン接種の対象外だったりして、抗体を獲得する機会が少なかった世代です。
そこで、風疹の流行から赤ちゃんを守るため、今年度から、この世代の男性に『第5期予防接種』として、抗体検査をした上で、ワクチン接種が実施されることになったのです。
対象となるのは、1962年(昭和37年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日までの間に生まれた男性です。
まずは今年度、1972年(昭和47)年4月2日~1979年(昭和54)年4月1日生まれの男性(40歳から47歳の男性)に、市区町村から、無料で風疹の抗体検査とワクチン接種が受けられるクーポン券が送付されています。(今年度、クーポン券が送付されない対象者も、市区町村に希望すれば、クーポン券を発行してもらえます。詳細はお住まいの市区町村のHPで確認できます。)
*厚生労働省HP*
(クーポンが届いた後、どんな手順でワクチン接種したらいいのか、書かれています。)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index_00001.html
「対象年齢のすべての男性に無料で風疹ワクチン接種」という、日本のワクチン行政史上でも、大変大きな動きにも関わらず、社会全般的に認知度はいまひとつのようです。
厚生労働省は、今年度中に約330万人が抗体検査を受けると見込んでいますが、実際に、4、5月に検査を受けたのは約12万5千人だったそうです。
そこで、この世代の男性に、このクーポン配布や風疹予防について、どのように考えているのか聞いてみました。
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◆まずは東京都在住、43歳のAさん。二人のお子さんのパパです。
Q. 『風疹抗体検査と予防接種のクーポン券』が送られてきたとき、どう思いましたか?
A.『無料がん検診』の類の延長程度かと思って、受診するつもりもありませんでした。今回、このインタビューをきっかけに「あの封筒はそんな案内だったのか!」と、初めて気付かせてもらえ、助かりました。
実は私は、毎日キュレーションサービスで情報収集していて、それを仕事としている位ですが、これまでは、風疹自体もよく分かりませんでしたし、今回の予防接種についても、全く知りませんでした。
Q.実際にクーポンはお使いになったのですか?
A.はい。
先日、近所のクリニックで、まずは『抗体検査』を受けました。
結果は要接種。しかも、2回接種が必要との診断でした。
「1回接種すれば、感染リスクは下がるから当面の流行には対応できるけど、生涯の免疫を獲得するためには、2回接種が必要」ということのようです。
この日は、たまたまクリニックにワクチンがあったため、そのまま接種し、感染リスクは防げるようになりました。
ただ、2回目を接種する場合は、ひと月後で、かつ自費と言われ、それはやめることにしました。
Q.実際にクーポンを使ってみていかがでしたか?
A.抗体検査と結果確認、さらに、その日、クリニックにワクチンがなければ、もう1日接種日を調整しなければなりません。最大3日間、仕事を休まねばならないのでは、受診に消極的になると思います。
保険制度や個人情報の関係なのは認識していますが、ワクチン接種ならともかく、抗体検査で「問題なし」という結果を確認するだけで、
休みを取って受診しなければならない必要性は全く感じません。
◆続いては、東京都在住、46歳のBさん。2人のお子さんのパパです。
Q.クーポンが送られてきたそうですが、抗体検査やワクチン接種のご予定は?
A.受けよう、受けようと思って、まだ、受けていません。
でも、自分を通じてウイルスをばらまくことになるのは絶対に避けたいので、必ず行こうと思っています。
クーポン配達時には、
「受けられるクリニックが子どもと比べて少ない」と思っていたんですが、今改めて調べて見たら、かなり増えているみたいですね。
ま、増えるんじゃないかと、ちょっと期待してたんですけど。前は、「近所にないじゃん」と思っていましたが、今は結構ありますね。よかったです。
◆東京都在住、44歳のCさん。2人のお子さんのパパです。
Q.クーポンは送られてきましたか?
A.はい。早速、抗体検査を受けましたが、抗体は十分で接種の必要なしとのことでした。
◆一方、千葉県在住、39歳のDさん。2人のお子さんのパパは…
Q.今回、クーポンは送られてきましたか?
A.ギリギリ対象じゃない年齢なので、送られていません。
Q.風疹予防について、実際に何か行動したことはありますか?
A.無料クーポンが始まる前から、風疹についての情報が流れてくるので、ずっと気になってました。
ただ、ワクチンを受けるとなると、自費でしたし、数千円~1万円以上となると「ちょっと、懐が痛いな…」と躊躇している期間も長かったです。
昨年、「行政に申請すれば、男性でも助成が出る」となってから一部自腹でしたが、抗体検査なしでMR(麻疹+風疹混合)ワクチンを受けました。接種費用が8640円で、助成額が5000円でした。
これは助成が出るのと、海外旅行の予定を立てたので、感染源にならないように、というのがきっかけでした。
正直、今なら無料で受けられる人が羨ましいです。当時、受ける前は、安く受けられる方法を調べるぐらいで、実際の行動には、なかなか出ませんでした。
今も、忙しい人などは同じように、接種へのハードルを感じているかと思います。
一度気が付けば、気にはなると思うのですが、
行動に移すトリガーは、なかなかないかなと・・・。
Q.このことは、周囲で話題になっていますか?
A.ほとんどなっていません。一部Facebookで受けた人はみましたが、受けてない人がほとんどかなあ、と。話題にもしにくい、なりにくいと思います。
Q.どうしたら、より効果的に、風疹予防が進むと思いますか?
A.自発的な行動を促すのは難しい気がします。
30~40代は、仕事や家庭が忙しい方も多いですから。
ただ、「これから子どもが生まれる、欲しい」という方には、まだ促せると思います。
「企業の検診内で、抗体検査やワクチン接種を行う」というのは一つのトリガーとして機能すると思うのですが、実際にはそこまで効果が出ていないようですね・・・方向性としては、良いと思ったのですが。
『職場で一括接種』というような、いやでも触れる(受ける)機会をつくること。
あとは『風疹』への理解でしょうか。「どういう人たちが流行の主体で、どこで感染が広がって、どれぐらいの感染力があって、感染した結果どうなるか?」
・・・という結果までの流れが長いので、全体の深刻さを理解してもらう必要がある気がします。情報に触れる機会を増やすことが必要ではないかと思います。
Q.今、対象年齢の男性には、クーポンが配布されていますが、どう思いますか?
A.厚労省のHPや、実際に受けた方が書いた記事を読みましたが、クーポンの仕組み、本当にわかりにくいですね。
https://www.nhk.or.jp/d-navi/stopfushin/news/20190517oyaji/
40代のワクチンを受けてない世代だけではなく、30後半の個別接種だった、私たちのような世代も早く対象にすべきだと思います。
あと、「抗体検査なしで、直接ワクチンを打つ」という選択肢もあっていいのではないでしょうか?実施の費用としても、受ける側の時間としても。
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アンケートにご協力下さった皆さん、ありがとうございます。
「風疹感染を広げている」と、ワクチン接種の対象となったパパ世代の率直な意見を読まれて、皆さんは、どうお感じになりましたか?
「もっとよく知っていれば、行動に移す」(≒知らないとスルー)
「受けたいが、忙しくて・・・」というケースが多いのではないかと、私は感じました。
先月末、先天性風疹症候群のお子さんを持つ親御さんの会『風疹をなくそうの会Hand in Hand』などがこのままでは風疹の感染拡大が防げないと危機感を抱き、厚労省に、対策の見直しや徹底を求める要望書を提出しました。
その内容は、
・47~56歳を含むすべての対象者に早急に受診券の送付
・効果的な啓発
・抗体検査をせずにワクチンを打てる体制
・健康診断での抗体検査の実施や勤務時間内にワクチン接種ができるよう、事業所と連携すること…といったものでした。
https://stopfuushin.jimdo.com/
妊娠中に、知らないうちに風疹に感染し、お子さんが先天性風疹症候群で、目や耳、心臓、知的な障害などを持つことになった親御さんが
「次の世代にこの苦しみを繰り返さない」と行動を続けていらっしゃいます。
慈しみ育てた我が子を、この病気で失ったお母さんからは、「障がいは否定しない。でも、ワクチン一本で防げる障がいであれば防いであげたい。」という声を、繰り返し聞いています。
これから生まれてくる赤ちゃんを風疹から守れるのは、私達、大人しかいません。
もしも、ご自宅に『無料クーポン』が届いていたら、この記事のことをちょっと思い出して、行動に移して頂けたら嬉しいです。
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