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報道されない日本の失業者数増加の事実

日本では緊急事態宣言が4月25日から発令され、飲食店の夜8時以降の営業停止やショッピングセンターの休業命令が出ています。

メディアは新型コロナウイルスの陽性者数は毎日のように報道しますが、緊急事態宣言や自粛要請による負の影響である失業者数の増加についてはめったに報道しません。

しかし、報道されないからと言ってこうしたことが現実に起きてないということではありません。そこで、日本政府(総務省)が公開している失業データを使って実際に失業はどうのような状況になっているのか自分で調べてみたのですが、やはり大変なことになっているのがわかりました。

まずは、失業者数がどれだけ増えたのかを見てみましょう。

失業者数のデータは総務省が公開していて、e-Stat経由で取得して加工しているものを、こちらに公開しています。誰でもCSV形式でダウンロードできるようになっているので、興味がある方は試してみてください。

日本の失業者数(2010年〜2020年)


この10年ほどの間ずっと減少傾向にあった完全失業者の数は、2020年には191万人と一気に増えています。

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ちなみに完全失業者数とは、15歳以上の働く意欲のある人のうち、仕事を探しても仕事に就くことのできない人のこと。

前年からの失業者数の差は26万人の増加です。下のチャートはそれぞれの年の前年からの差を表しています。2020年の増加の幅はさすがに異常です。

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ちなみに、上記のチャートは過去10年を比べていましたが、過去20年にしたのが以下のチャートです。

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これを見ると、2009年の失業率が大きく増えていますが、これは2008年9月にあったリーマンショックの影響によるものです。それと比べると、2020年の失業者の数は少ないのですが、2021年の半分が終わろうとしている現在も非常事態宣言と自粛要請が継続中であることを考慮すると、ひょっとすると総合系ではリーマンショックを凌ぐことになるのかもしれません。


属性別の失業者数 前年比(2002年〜2020年)


男女別に見ると男性の方が失業者数の増加率がより大きいようで、そのインパクトは女性(前年比10.29%)に比べて男性(前年比19.59%)は約2倍ほどの大きさです。

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ところで、年代別に失業者数の増加率を比べてみると、25~34歳という若年層に大きな影響があるということがわかります。
ところで、2020年の年代別に失業者数の増加率を比べてみると、25~34歳という若年層に大きな影響があるということがわかります。

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失業者数の増加率の推移を年代別に分けたものが以下のチャートです。

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失業者数の増加に関して大きな影響を受けている25~34歳という若年層では、リーマンショック以上の被害になっています。

そして、どうやらこの被害はおもに女性の失業者数の増加から来ているもののようです。

以下は上記の年代別に分けた失業者数の増加率の推移を、女性のみに絞ったものですが、25~34歳という若年層ではリーマンショックよりもさらに大きく失業者数の増加率が上がっているのがわかります。

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逆に以下は上記のチャートを、男性のみに絞ったものですが、男性の場合は、55歳~64歳という高年層でリーマンショックを凌ぐ失業者数の増加率となっているのがわかります。

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産業別の就業者数(2013年〜2020年)


産業別の就業者数のデータも総務省から公開されているので、このデータを使って一部の産業の就業者数をみていきます。

全ての産業を可視化しているわけではないので、興味がある方はこちらに公開しているのでDLしてみてください。

このチャートは、2013年以降の産業別の就業者数を可視化しており、Y軸の単位は1万人です。実数で見ると、就業者数が増えている産業と減っている産業があるようです。

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前年比にしてみると、自粛による失業者数の増加という被害は主に飲食店と宿泊業に集中しているのがわかります。(飲食店では前年比で就業者数が約10%減少、宿泊業では約14%減少)

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これについてはチャートを見るまでもなく、すでに多くの人が推測していたことだとは思います。

しかし、逆に広告業、情報・通信産業といった業種では雇用が増えています。

つまり雇用が増えている業種にいる人たちにとっては、この失業者の増加というのは差し迫った問題として認識できないというバイアスが効いているのではないでしょうか。

これだけ失業者が増えているにも関わらず、非常事態宣言や自粛に対する支持が多数だというのは、失業者が全体的に増えているのではないため、非常事態宣言や自粛政策のデメリットを感じることができないためなのではないでしょうか。

そうであれば飲食店、宿泊業の人たちの苦境を思えば、その効果が一度も検証されてないような非常事態宣言や自粛を続ける意義に対して疑問の声をもっと多くの人たちが上げていくべきではないかと思います。 少なくとも、非常事態宣言や自粛を続けることによるメリットとデメリットをはっきりさせるべきで、それに対する説明を政治家に求めていくべきではないでしょうか。

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