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うらないのろい

こどもの頃、僕が通う小学校の隣の学区に『占い』という看板を出している古い民家があった。

白い看板に深い紫色で書かれたその文字は、ところどころペンキが垂れていて、こどもの頃の僕にはまるでお化け屋敷で見かけるようなおどろおどろしい文字に見えた。

しかも当時の僕は、ちょっとした勘違いをしていた。

僕はその看板に書かれた『占い』という文字を、
『うらない』ではなく『のろい』と読んでいたのだ。


当然その民家は、勘違いをした僕にとってはまさに恐怖の館だった。

隣の学区にあるので、頻繁にその民家の前を通るわけではなかったが、たまに図書館に向かう際だけその道を使っていた。

夏休みのある日、自転車に乗って図書館に向かっていると、その民家からほうきとちりとりを持った女性が出てきた。

(家の前の掃除でもしようとしていたのだろうが)当時の僕にとっては、その人は占い師ではなく、呪いをかける能力を持った恐ろしい人。
目が合って軽く会釈をされた途端、僕は怖くなって全速力で自転車を漕いで逃げた。
衣装なのか普段着なのかは知らないが、その人が丈の長い暗い色の服を身につけていたのも、僕の恐怖に拍車をかけた。


それ以来僕は、どんなに遠回りをしてでもその民家の前を通らなくなった。


それから数年後、
“あれ?あの看板に書いてあった文字って、呪いじゃなくて占いだったよな?”
とようやく僕は気づくのである。


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昨年その民家の近くに用があった際に、ふと気になって探したところ、その家はすでに取り壊されてマンションに変わっていた。

当時、僕が親や友達など誰かひとりにでもその話をしていたら、僕の間抜けな勘違いはすぐに解けたのかもしれない。

けれどすっかり『のろい』だと思い込んでいた僕は、なぜか“誰かに話したら呪いをかけられて死ぬかもしれない”と、あの民家について口外するのを真面目に恐れていたのだ。


もうどこにいるかわからない、
呪いをかける能力を持った人、あらため占い師の方。
あの時は本当に失礼な態度と、失礼な勘違いをしてごめんなさい。

と、ここで謝らせてもらおうと思う。
たぶん届きはしないだろうけれど。

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