見出し画像

斜め方向の耐力壁を普通に壁量計算している方へ

木造の良いところは、木の加工が比較的容易で、形状の柔軟性が高いことです。しかしそれと安全性確保は別な話です。

敷地形状などから仕方なく斜め方向の耐力壁を設置しなければならないことがあります。これは仕方が無いです。計算上、三角関数を使ってXY方向に振り分ければ力学的には問題がありません。しかしそれはあくまで机上の話です。実際に加工を行う際、その力学に応じた適切な形に施工できなければ意味がありません。

上から見た、こんな断面を考えてみましょう。力学的には斜め方向の壁は、XY両方向に配分されます。なので斜め壁はY方向のほうが強くはなりますが、X方向も多少は耐力があることになります。

しかし、本当にそれで良いのでしょうか?壁と柱の面が斜めに接続されていますよね?それで本当に、通常と同じ耐力になるのでしょうか??金物はつくのでしょうか?そこまで考えなければなりません。計算上は一般的に45度の壁は両方向算入、30度以下の鋭角は加算しないなどいわれていますが、木造ではどうか?上記モデルだと、どうやって構造用合板を貼るのか?柱を削らなければなりません。

では、斜め方向の柱を壁と同じ角度にすればどうか?真ん中の斜め壁は問題なくなりますよね?あとは端の2つです。柱を台形に刻むなどいろいろ方法は見つかりますが、通常に比べて耐力が同じになるのかは疑問です。

そこで構造技術者は工学的見地?などから低減して計算しています。まあその低減率に根拠があるかどうかは別にして危険にならないように「配慮」するのです。ただ、合板の貼り方や金物の付け方など問題も多いので、できれば斜め方向の耐力壁を作らないようにしながら、他で耐力を確保出来るようにするのが賢明なのです。

個人的には、斜め方向は加算しない方向でやっています。どうしてもという場合は45度は低減して両方向、それ以上は両方向に加算できるモデルを考えにくいので、長さが長い方の成分のみ低減して加算します。上記モデルでも斜め壁が横方向の力に本当に耐えられるか?は疑問ですね。

最近の高性能な木造構造計算は斜め方向に耐力壁を入れても自動でXY成分に変換して計算する機能が備わっています。それで十分!と思わず設計者としての安全に対する工夫が求められると思います。

安全な住宅を求めている方、どうか奇抜な形を求めないように。耐震等級や構造計算より大切なものがあります。計算できるから安全、と思わないようにお願いします。

※WOOD-STだと、柱を回転して配置できます。今回はWOOD-STの画面で解説しています。


サポートしてくださると嬉しいです。 部分的に気に入ってくださったら、気軽にシェアかコメントをお願いします♪