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詩・小箱

小箱の中にいるから、僕には何もわからない。
小箱には窓もないし、扉もない。
いいや、窓や扉くらい、本当はあるよ。
だけど開ける気はね、さらさらないんだ。
美しい雪化粧を施した街並みを、
しん、って、本当に喋るみたいに落ちる雪を、
皮脂や埃でよごれた肌を貫通する冷気を、
見たり、聞いたり、感じる勇気がないんだ。
あったかいから、冬なのに、小箱の中だけは。
だけども、
もしかしたら、いつも通りの街かもしれないけど、
ただ濡れた色になった街並みだとすれば、
それは、それで、嫌だもの。
それなら僕は構わないよ。小箱を誰かに突かれるまでは。

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