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雑記10.10

現在、東京都内某所にひとり。

大手不動産屋の審査が通るわけもなかった。途方に暮れていたが、不動産関係のアルバイトを経た友人の助言の通りアレコレしていたら、今はどうにかボロアパートに身を置くことができている。大した不満もない。

色んなことが目まぐるしく起きている。
まさしく人生をかけたバンドが解散し、つまり自分としては職を失ったわけだ。
それから引越しに追われ、やっと落ち着いた頃に風邪をひいて寝込んだり、それが治ってきたと思うと案外自分が貧乏だということを思い出して、求職活動に追われたり。まあ貧乏なことは以前と変わらないが、何を隠そう無職。普通の貧乏とはワケが違うので、早々に現状を打破したいところだ。

さらには今後の活動に向けた準備も必要だ。変に急ぐより、焦らず着々とやるべきなのはわかっていながらも、気持ちはどうにも騒々しい。何かしなくちゃ、どうにかしなくちゃ、なんていう。

ただ、何においても、
深刻なほどの不安はなかったりする。

しかしなあ。
自分のこの根拠のない自信はどこからやってくるのだろう。大丈夫、なんだってやれると。
むしろ、その自信の根元について率直に不安になることがある。
暗闇の中を手探りで進むに等しい状況だとは脳で理解しながらも、あまり怖いとは思わない。
悩みに悩んでいるうちにメンタルが揺れることはある。が、どうしてか。どこに進むのが正解かを考えるより先に足が動いているし、動き続けている。

とにかく自分はきっと、欲に忠実だ。
人間が本心で人間をやっている。演じるでもなく。自分が思っていたより、自分は人間だった。

それを痛感したのは、今回の解散があったからかもしれない。たとえば初心に帰るといえば、物事を始めた時のことを思い返すだろうけど、もっと昔を思い出したみたいだ。
始める前は何をしていた、その時の気持ちはどんなだった、始めることを周囲に伝えた時のみんなの顔は、自分の声色は、姿は、目つきは、何が足りなかった、何で満ちていた、誰のため、どんな世界?

仕事でもバンドでも趣味でも。初心に帰るってのは、ぼんやり想像していたより深い意味合いがあるんだなぁ、なんて思うようになった。

もっともっと人間だったんだなぁ、おれは。
あ、そうそう。これだ。この感じ。
解散してすぐは、振れ幅が大きくて自我がオカシイ感じだったけど、うん、わかってきた。
誰にもへりくだらない、文句も言わせない。
そのためだけに生きているような、猥雑な優しさだけで、敵作ってばっかの、どうしようもない人間。
執念で物事にしがみついて、絶対的な人間。
ちょっと、変に丸め込まれてたかもなぁ。
おれ、なんかアレみたいだな。
人間に育てられた動物が、大人になって野生に帰っていくみたいな。
そう思えてちょっと恥ずかしい気もするけれど。

そう、東京都内某所にひとり。
ここは檻ではないし、野生でもない。
人里でもないし、スタジオでもない。

おれは、はじめて家に帰ったんだ。

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