猫を引き取るために私は引越しをした。(3)
いる。
えっ???????
めッッッッッッッちゃくちゃ
かわいい!!!!!!!!!
朝起きるといる。
かわいい。
飯食ってる。
かわいい。
生きてる~~。
かわいい。
知ってたけどかわいい。
こんなかわいい生き物いる?
いるわ。
はあ~~~~、かわいい。
神様ありがとう。生きてれいればこんなこともあるのね。
あーーーーーかわいいんだなコレッ
この生き物。はい、かわいい。
それ以上に伝えることある?
かわいい。ありがとう。
完。
と言いつつ、引越してからのことも書きます。
せっかくだから聞いてほしい。
■ ■ ■
引越し当日。
朝イチで鍵をもらい、その足で新居へ。
掃除とガスの開栓(電気水道は事前手続済)を済ませ、昼食も忘れて旧居へとんぼ返り。
引越業者さんと合流して荷物の運び出しをし、トラックを見送ってタクシーで再び新居へ。
荷物を運び込み、作業終了。
夜のうちに荷解きしながら、あらかじめ時間指定しておいた猫用品の宅配を受け取っていった。
翌日から連勤。
ちょっと心配だったが、私は間違えて旧居に帰るほどバカではなかった。良かった。
でも米びつだけを旧居に忘れていた。バカだ。
米が食べられなくて連夜98円のカップ麺を食べた。
サ●ウのごはんを買えばいいだけなのに、私はバカだ。
連勤明け。新居ではじめての休日。
朝イチでキャリーを掴み、旧居へ。
最後の掃除を半日かけて行い、米びつを回収して、ブレーカーを落とした。
振り返ると、なんにもない四角い部屋がある。むき出しの掃き出し窓からフローリングへたっぷりと陽光がそそがれていて、ただ静かだった。
もう私の場所じゃない。いずれ誰かの部屋になるんだなあ。
外に出て、鍵をかける。
帰り道のポストに、返却袋に入れた旧居の鍵を投函した。
引越しが終わった。
新生活だ。
と、そんな清々しい体験をするまでの連勤中にも色々あった。
入居2日目、仕事から帰宅して思ったことがある。
「くせぇ」
部屋が臭いのだ。
このにおい、覚えがある……
タバコの臭いだこれ。
なんで??????
私か? いや吸わんし。
移り香かな? 覚えがない。
どう考えても壁じゃん。
部屋に染み付いたにおいじゃん。
内覧のとき、風邪の病み上がりで鼻は無能だった。
玄関に消臭ポッドが置いてあるのはたしかに不思議に思っていたんですよ。
嫌な予感がして、速攻で管理会社の時間外窓口に電話した(夜だったので)
打ち明けると、「どう対応するか、明日担当から折り返します」と言ってくれた。
入居してから言うなんて、めんどくさい奴でごめん……。
でも、五感ポンコツ(腕の骨を折っても2時間ほど気が付かなかった)の私が気付いて喉がイガつくほどのにおいなら、嗅覚が発達している猫は尚更つらいだろう。
極端思考は良くないけれど、改善しないなら引き取るべきじゃないかもという思いがよぎりながら眠った。
翌日、仕事中にスマホが鳴った。管理会社からの折り返しだ。
「たしかに、前に入居されていた方はけっこう吸う人だったみたいです……。でも、壁紙は張替えてるんですよ」
壁紙は綺麗な白色をしていた。
それは本当だろう。
「そうだとしても、気になって眠れないくらいのにおいの強さですし、お伝えしている通り猫を飼うので、これでは困るんです」
「そうしたら、特殊清掃ができるかどうか、大家さんとも相談してまたご連絡します」
すまぬーーーー!!
入居2日目に手間を取らせてすまぬーーー!!
絶対あの女めんどくせぇと思われてる。
すまぬーーーー!!!!!
その2日後に連絡があった。
「特殊清掃をするので、業者が下見に行きます。見積もりを出して大家さんのOKが出た後に、施工日時は入居者さんと業者とで決めてください」
センキューーーーーッッッ!!!
その3日後の夜に特殊清掃業者さんが下見に来てくれた。
「猫ですか。なるべく人体に優しい薬で壁紙を洗いますね。薬剤のにおいが数日残るので、猫が来る日より少し前までにやりましょう」
優しい。
そうして入居から2週間ちょっとの日。
「口に入るものは冷蔵庫に入れてください」と言われ、猫の餌だけは入らなかったので抱きしめながら喫茶店で1時間程度を過ごした。
そうして電話で施工終了を伝えられ、戻ると部屋は無臭になっていた。
まじで無臭だった。
「変な話ですけど、孤独死とかの死臭も消せるやつなので大丈夫だと思いますよ」
特殊清掃ってやっぱそゆことなんですね。
生きながらにして死の処理を経験し、安心して猫を迎えられる環境になった。
ハッピーエンド。
んなわけない。
臭いが移ったら嫌だからと、ダンボールから出していない猫用品ばかりで、ケージの組み立てもしていない。
本番はここからだ。
2週間ちょいずっと何かしら動いたり考えたりしていたせいで、無臭を得た瞬間すごい睡魔に襲われたが、ネコタノシミエネルキーが勝ってベッドから飛び起き、カッターを握った。
そして……
あとは猫だけ。