20230211-18 劇団fireworks 畳の上のシーラカンス

衣装を担当させていただいた「札幌演劇シーズン2023冬 劇団fireworks 畳の上のシーラカンス」が終演いたしました。
改めて、ありがとうございました。

劇団fireworksさんでの衣装スタッフは今回が初めて。しかも初演では衣装専門のスタッフは居なかった公演ということで、とても緊張しながらのスタートでした。

〈全体を通して〉

今回の衣装仕事の半分以上は時代考証と場面ごとの並びの確認だったように思います。
「昭和、平成、令和を駆け抜けるはちゃめちゃノスタルジックコメディ!!」をやるにあたり、時代としての正しさとその役らしさのバランスは大切にしたかった部分。

平成の部屋に昭和の人物が映し出される、という展開で意識したのは画面として見たときの彩度の違い。特に一番最初に平成チームと昭和チームが相対する場面では、平成チームの衣装彩度を抑えて昭和チームを鮮やかな赤青にすることでパッと見でどちらの時代の人かが分かりやすいよう意識をしました。

こだわりたかったのはラストシーン。ひよどり荘の人たちがちゃんと夢を叶えた姿で出てくる、最高にハッピーなところなのでちゃんとそれぞれの職業らしさを出すことを意識しました。

〈各役の衣装について〉

1月中旬にキックオフステージへの出演があったので、一番最初にメイン衣装が決まったのはザ・ウィークエンドの三人。

きゃめさん演じる順子はフライヤー撮影時の私服がとても可愛かったのでそのままお借りしました。彼女のテーマカラーを赤系にしたく、それに合わせて他の衣装も赤系レトロワンピが中心。少し育ちの良い女性感を目指しました。

井上さん演じるシンについてはレトロ柄シャツにパンタロンという組み合わせをどうしてもやりたくて、ボトムスはどちらも型紙から作成しました。年代を考えるとパンタロン全盛期はもう少し後なのですが、昭和のモテるバンドマンのイメージを重視。ばっちり着こなして頂きました。

山崎さん演じるケンについては初演時の衣装をベースに、他二人と並んだ時に相性の良い色味が欲しくてベストを作りました(生地を決めたのがギリギリで、キックオフに間に合うように一晩で仕立てた思い出…)ギターを持つ姿が似合う衣装になって満足。

平成チームで一番最初に衣装プランが確定したのは棚田さん演じるがんも。
裸エプロンというのは確定事項だったのですが、どうしても白フリルエプロンにしたくて、オリオン座が絶妙に見え隠れする丈で仕立てました。現在設定のはずのラストシーンでがんもがおじいちゃん服ではなく管理人服なのは、ひよどり荘の管理人というのが彼にとっての夢を叶えた姿だから。

桐原さん演じる亮の服は初演時のも参考に、平成のお洒落に無頓着な青年、というのを意識した組み合わせ。デニムの色味に時代感が出るようにしました。桜子とちょっといい感じになるシーンだけ若干お洒落な着こなしになっているのが個人的ポイント。

橋田さん演じる桜子については服を全て初演時と変え、全体的に少し生真面目さと女性らしさを意識。ブラウスやスカートについては母が独身時代に着ていたもの(つまりリアルに90年代のもの)も使いました。衣装ではないですが、前髪の時代感もこだわり。

雲さん演じる石橋については初演時のジャージ そのまま。これだけ周りが着替える中あえてほとんど衣装替えがないという…。その分ラストのスーツ姿が格好良く見えるといいなと思って、あの一瞬のために弁護士バッチのレプリカを用意しました。

恒本さん演じる長万部については演出指示で登場のたびに衣装が変わっていたので、本編中で8パターンの衣装がありました。アイテムとしても、アパレルデザイナーを目指す青年ということでその時代の流行に敏感な若者が着ていたラルフローレン、POLO、ラコステなどのブランドを意識的に取り入れ。そして今回のために仕立てたラストの花柄スーツ。歌の途中で長万部が出てきたときに「夢が叶っている!」という印象を強くしたくて、着こなしてくれるという信頼の元できた衣装でした。

木村さん演じるりんちゃんは1990年代前半のドラマなどを参考に、アイテムはシンプルながらある意味一番平成初期っぽさを感じる着こなし。ビタミンカラー中心、シャツを腰に巻く、ラフなデニムスタイル。ちなみに本編ではありませんがアフターライブのピンクレディー衣装は今回用のオリジナル。可愛く着こなしていただきました。

和泉さん演じるヒデジについては、実は最初に用意したメイン衣装は違うシャツでした。稽古時に和泉さんが着ていたシャツの柄と色味が良くてそのまま差し替えることに。初演は派手なカラーシャツでしたが今回は部分ウィッグもつけてアマビエっぽさを重視。ウィッグは絡まりやすいので毎日とかすのが私のルーティーンで、ちょっと愛着が沸いていました。

むらかみさん演じる翔太の衣装はとにかく「弟っぽさ」を重視。車が好きな少年感も出したくて、少しアメカジっぽい、でも絶妙に野暮ったい感じを狙いました。そこからのラストシーン、翔太が公務員ではなく車メーカーに勤めているというのがとても大切だと思っていたので作業着のシルエットにこだわりました。彼があの姿で出てきたときに胸がギュッとなったのは私だけではないはず。

昭和時代、同じくむらかみさんが演じていた竜一の衣装は喫茶店の仕事着ということでかっちりめ。転換中田中さんが演じていた店員まどかと合わせてエプロンはオリジナルで縫いました。実はポケットのところに「にじゅうまる」の刺繍入り。順子とのあのシーンで綺麗な色合わせにしたくて緑色にしました。

最後に小川さん演じるゆなについて。令和っぽさというのが悩ましく、確定したのが直前でした。最近の流行が90’sやY2Kなど平成らしさのあるものなので、それとも違う服。くすみカラーやニットベストなど、“よく見る”アイテムを取り入れました。平成とリンクするところは照明がとても格好良かったので、透け感のあるロングシャツ。

あとは各シーンの組み合わせによっても考えたりしたところがあるのですが、あまりに細かく長い話になってしまうのでこの辺りで。

〈最後に〉

劇団初の演劇シーズン参加作品、そして多くの人に愛される素敵な作品に関われたことに感謝いたします。
今まであまり同年代がメインの劇団で衣装を担当する機会がなかったので、今回はたくさんの出会いに恵まれありがたい限りでした。ここからまた楽しいことに繋げていきたいな。

作品をご覧いただいた皆さま、そして関係者の皆さま、本当にありがとうございました。

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