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#48 見栄で手に入れた向田邦子全集…

今から二十年以上前に、「三十歳以上、未婚、子なし」の女性を自虐的な意味合いから「負け犬」と定義した酒井順子は、負け犬女性の中の「勝ち組」を、向田邦子としている。

この「負け犬」の定義付けの適否に関しては、今のご時世、たぶんに炎上要素を含むのでそっとしておくが、ある程度の年齢を重ねたおひとり様女性の中で、向田邦子が圧倒的な輝きを放つ、みんなの憧れ! カリスマ! であるということについては、激しく同意する。

どこまでもクールな向田邦子

わたしを含む、結構な数のおひとり様女性(以降、前述の負け犬の定義には従わず、独身・パートナーがいない女性とする)が、年齢を重ね、人生のフェーズごとの生き方に悩み、もがきながら進んでいく中で、一般的に知られている向田邦子の姿というのは、あまりに颯爽としている。

比較するのもおこがましいが、わたしが匍匐前進で進む道を、向田邦子は最新の電動自転車で通り過ぎて行くような感じだ。
決して彼女が楽をしているという意味ではない。
わたしのイメージの中で、彼女の周りにはいつも青く爽やかな風が吹いているのだ。

いや、実際には道ならぬ恋をして、その恋人を自死で亡くしていたり、本人の胸の内というのがどうだったのかは分からないが、それをおくびにも出さないことを含めて、やはり向田邦子は華麗、格好良過ぎる。
ソークール‼️

向田邦子は、わたしのような匂わせも、メンヘラ発動も、かまちょもしないのである。

容姿端麗で、センスが良くて、自分の好きなものをよく心得ていて、
旺盛な好奇心を持ち、おひとり様の人生を存分に謳歌しているように見える。

さらには、文筆家として、エッセイ、小説、シナリオ、何でも書けて、アラフィフなんて関係なし!で、みずみずしい文章を書いて直木賞を受賞。
そして、美しいまま、みんなに愛されて惜しまれて、51才という若さで飛行機事故で逝ってしまった。

もはや、向田邦子の存在、それ自体がドラマである。

こんなわたしでも、向田邦子が好き

ということで、おひとり様であり、一応は文字を書いてご飯を食べている身であるわたしも、お恥ずかしながら、向田邦子が好きなのである。
ただ、「えっ、そんなしょーもない下品なことばかり書いてるのに、向田邦子に憧れてたの? プッ」と言われるのは目に見えているので、プライベートで誰かにそれを打ち明けることはない。

また、ファンというのも僭越で「好き」と言うに止めておいたが、にわかもにわか、全作読んだとか、いつも読んでいるとかではなく、毎年夏になると、清涼感のある向田邦子エッセイを、「夜涼」として楽しむくらいだ。

あとは、和菓子が得意でないのに、彼女が贔屓にしていたという青山の和菓子屋へ行って水ようかんを買ってみたり、
向田邦子レシピに従って、ちびちび大切に飲んでいたウイスキーを半瓶使っていちじくを煮込んだりと、マイペースに、思いつきで「向田邦子推し」を楽しんでいる。

しかしまあ、人にはひみつとし、マイペースをモットーとする推し活だって、時には失敗もする。

以下は後輩エムオくんとの最近の会話である。

※背景
後輩のエムオくんに、処分を検討中のIKEAのベッド写真を送って見せた際、うっかり、向田邦子関連の本が写り込んでしまった。

エムオくん「あ、白丸さん、さすがだ、向田邦子全集持ってるんすね
わたし「あ…? え…んー……」
エムオくん「あれ? でも、なんか違うな。向田邦子全集自立語索引って書いてある。この分厚い本、一体何?」
わたし「んー…(ボソリと)単語の索引…」
エムオくん「もしかして、作品は収録されてないの?」
わたし「うん…」
エムオくん「マジ❓ おいおい、アンタは向田邦子の研究者かっ!
わたし「😞…勘違いしたの…。ネットで見つけて、見た目と値段から全集だと思って、わざわざ神保町に買いに行ったんだ…」
エムオくん「店で、中身確認せずに買ったんすか?」
わたし「そりゃあ勿論、確認したよ…。店員さんに、店の中から重いのわざわざ引っ張り出してもらってさ…」
エムオくん「あ、それで、違うって気づいたけど、悪いなって思って、または、勘違いしたのが恥ずかしいから、ああ、これ探してました風の顔して買ったんだ!
わたし「……🙄(図星)」
エムオくん「本屋だって、白丸さん見て研究者じゃないことくらいわかってるよ!」
わたし「いや…インテリっぽく振る舞ったし…」
エムオくん「いくらだったんですか?」
わたし「…一万三千円」
エムオくん「ガチのアホっすね!!!
わたし「は…廃盤でレアだし…。か、家宝にするからいいんだよ…」
エムオくん「いやいやいや、ベビ子ちゃん(娘)だってそんなマニアックな本要らないでしょ!! あと、白丸さん絶対、それ、買ってから一度も読んだことないですよね! 相変わらず、やってることがアホっすね!」
わたし「……🙃(図星)」

いいんだ…。
今メルカリだと1.4万円で売ってるの見たから、あと二十年、三十年経てばきっと十倍、二十倍に…。

ということで、ミニマリストだとかドヤりながら、まーまー使わないものを家に溜め込んでいるわたしでしたとさ。

おわり

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