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陰キャ大学生のaiko歌詞解釈 ~蝶の羽飾り~

『蝶の羽飾り』

リクエストにお答えして、『蝶の羽飾り』の解釈をしたいと思います。カップリングでなおかつライブ披露回数も多くないこの曲。けれど他の楽曲に埋もれることなく、人気があるのには秘密があるに違いない!今回私はその秘密を探ることにした…

胸の痛いうちはあなたの事を
想い返さない様いつもいつも
違う事を考えてる
平凡な日々はそんなあたしに沢山の罠を仕掛ける

恋人と別れたことを引きずっている女性。あなたのことを考えてしまうと、胸が苦しくなってしまう。なのであなたの事は考えないように暮らしているつもりだった。けれどそんな事は不可能だった。あなたと過ごした月日はあまりにも大きかった。日常でふと襲いかかる“あなた”の色を帯びた風景、癖、匂い、あなたの好きな物、嫌いなもの…。二人で過ごした月日の中で日常は日常で無くなってしまった。月日は意味の無い物に意味を持たせてしまったのだ。
この現象を罠と例えるaikoは実に秀逸だ。

まだ空が綺麗過ぎて
涙が出る位
あたしはまだあなたの事を
好きで
好きで
好きで

綺麗な空が感情を揺さぶる。変哲のない空さえも傷ついた彼女にとっては毒になる。
そして畳み掛ける“好き”。
けれど、その言葉はあなたには届かない。
「やっぱり、あたしはまだあなたの事が好き」という事実は、ただひたすらに彼女を締めつけていく。

海に浮かぶ蝶の羽
両目じゃ眩しい太陽が悲しい切ない
気付かず過ごした毎日に積み重なった大きな存在
決まった時間にいつも鳴ってた電話が今は鳴らない
あなたが解いた胸の糸が逆に苦しいよ

“ 海に浮かぶ蝶の羽”情報源は忘れてしまったが、この蝶の羽とはサーフボードのことだとaikoが言っていた。
しかしこの情報を知る前、私は蝶の羽は蝶の死骸ではないかと思っていた。海に浮かぶ蝶の死骸を傷心のあたしと照らし合わせているのではないかと。海に浮かんでいる羽はキラキラと輝いて綺麗だ。だが水の中にある体の本体は波にもまれ、原型を留めていない。
周りには失恋を引きずっている素振りなんて見せないように明るく振舞っている自分だが、心の中はグチャグチャ。
そのようなイメージを思い描いていた。
ただ、サーフボードを蝶の羽に例えるaikoの想像力というのはすごいとしか言えない。
太陽が明るい。ただ、あたしは万物を浄化をするかの如く輝く太陽が眩しすぎて見ることができない。輝く太陽を見て惨めにさえなってしまった。
けれど、両目では無理だが、せめて片目でその恩恵にあやかりたい。あなたの事を忘れられたら…
思い出が一気に彼女を襲う。日常に染み付いたあなたを消すことはできない。
恋愛という呪縛を解かれ、自由になったはずなのに、何故か苦しいのだ。

可哀想と手をさしのべられたり
ひとり迷子だと思われない様に
足も心も動かして平凡な日々の中でも
とびきりでありたいと願うの

失恋を引きずっている自分の姿を周りに見せてはいけない。自分の印象というのは強い女のはず。弱い自分を見せてはいけない。
アクティブに物事を楽しみ、心も弾ませて平凡な日々でもあたしは楽しんでいると、あなたが居なくてもとびきりの人生を過ごせるとそう信じたい。そう願っている。しかし願うだけ。本当に楽しんでいる訳では無い。虚勢を張っているあたしは限界を迎える。

目を背けてはいけないと解ってるけど
あたしはあたしに嘘を付く
嫌い
嫌い
嫌い

気持ちに正直になりたい。けれどあたしは自分を自分で封じ込めてしまう。“嫌い”ワンコーラスで歌った言葉とは真逆の言葉を叫ぶ。“嫌い”。恋愛に引きずられるような自分ではなかったはずなのに。そう思っていたのに。“ 嫌い”という言葉で本当の気持ちを塞ぐ。偽りの言葉が彼女を閉じ込めてしまった。

ぐるぐるに巻いたマフラーの隙間に
まとわりついてくる海の風が
気付かずに過ごした毎日を「今更だ」とあざ笑う
受け止めきれない今の自由
死んでしまったあたしの羽
あなたが解いた胸の糸を波がさらってく

季節は過ぎ、夏から冬へと変わる。
暖かく武装した首元に冷たい海の風が鋭い一撃を与える。
当たり前だと思っていた日々の大切に気付いたあたしに『今更だ』と吐き捨てるかのように嘲笑った。
有り余るほどあたしは自由を得た。けれどあたしに必要なのは自由ではなかった。
ついに羽は死んでしまった。今のあたしは何処へも行けない。
自分の弱さを知った彼女は、最後の希望として持ち続けた二人の赤い糸を海に投げ捨てた。
波が糸を攫っていく様子を見て、彼女は…

細かく刻まれた愛し方や
渡せずホコリをかぶった手紙も
あたしが作ったカケラ全部大切にすればいい
次にあなたを思い出すのは
あたしのこの羽飾りが
もう一度自らちゃんと生え変わった時

ついに彼女は全てを受け入れることができた。
自分の弱さや本当の気持ち。全てを認めたのだ。
恋愛が作り上げたカケラを抱きしめた彼女。
これからあたしはもう一度綺麗な蝶へ生まれ変わらなくてはいけない。
もしあなたに逢うことがあったなら、綺麗な羽を見て欲しいから。

解説やらさせて頂きました。
蝶の羽飾りとは一体何なのか。もしかしたら気持ちに嘘をつき続け、死んでしまった羽すらも彼女は羽飾りとして認めてあげることができた。という事かも知れませんね。
リクエストありがとうございました。

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