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陰キャ大学生のaiko歌詞解釈 ~愛は勝手~

『愛は勝手』

aikoはこの曲を「不良少女が更生するような恋愛の曲」と語っていた。だが、この曲に登場するあたしは不良少女というより、自暴自棄になっており、根底は優しすぎる女性のような気がする。何度も裏切られて人を信じられなくなった少女。この解釈ではこの想定で話を進める。

何も受け入れない方が悲しくないし 良いと思っていた
だから信じられなくても どうせいつもの事だと吐き捨てた

全てを諦めて、1種の悟りを開いてしまった彼女。
何事も受け流せば、親身にならなければ傷つかない。
そう、彼女は防衛手段を覚えてしまった。
今回現れた人もこれまでの人達と同じ。また裏切られるなら、信じない方がマシだと彼女は思っていた。この時までは。

無理してささくれ探し ついつい前歯で噛んでしまってた だけどあなたに出逢えました 心が気を失ったよ

小さな自傷行為。けれど心は大きく傷ついていた。
しかし彼女に、転機が訪れる。突然現れたあなたは、自分の全てを受け入れてくれるそんな存在だった。これまで出逢った人の中にいなかった温かい存在に驚き、価値観が覆された。
“心が気を失ってしまった”と表現するaikoはなんと素晴らしいのか

今日も愛してるの 今日もしっくりいかないの
他に言葉はないんだろうか
毎日あたしの体があなたで形成されていきます
羽根いっぱいのプールで泳いでるような めちゃくちゃな嬉しい日々
これじゃ救えない 誰か知りませんか 愛の言葉を

今日も愛している。今日もしっくりいかない。
愛しているという陳腐な言葉では表現できないほど、あなたの事を想っている。
日々を重ねるごとにあなたがあたしを創りあげていく。あなたに染まっていく。人間が必要とされている五つの栄養素 炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、無機質。そんな物以上にあなたの存在が今のあたしには必要なのだろう。
羽いっぱいのプール。思い浮かぶだけで暖かく柔らかな幸せの象徴。幸せに包まれている日々。
こんなに幸せであたしはいいんだろうか。
aikoは「これじゃ救えない」と表現しているが、救うというより、あまりにも平和ボケしてしまった自分を客観視して、過去の自分には戻れないよねと笑っているような雰囲気を感じる。
この幸せを表現できたら…
「誰か知りませんか?」
人を信じなかった少女が人に助けを求めている。あなたに染まった少女は体だけでなく、心さえも変わっていった。

繰り返すのは呼吸だけ 明日は知らないと口答えして
短い爪に繰り返し 綺麗でいてねと赤を塗り続けた

「繰り返すのは呼吸だけ」
この解釈は無限。
色気を感じる表現から、アダルトな場面を想像することもできる。
無言の間さえ心地いい。あなたとの時間がトキメキから安らぎに変わっている表現にも感じられる。
だが、私は思春期独特の情緒の乱れから、呼吸が乱れ、すすり泣いている。そのような情景が思い浮かんだ。明日のことすら分からない。未来の、将来の事なんて何も考えたくない。
それとも単純に親と思春期少女の会話だったりするのかもしれない。
ここまで解釈を広げることができるのはさすがaikoとしか言いようがない。
校則をしっかり守っているのだろうか?短く切り揃えられた爪に情熱の赤を塗り続ける。自分を綺麗に見せること。それが彼女の幸せでもあるのだ。

愛の深さは勝手 まだ大したことはないんじゃない
だけどこれから気づくのかな 辛くなったら抱きしめてよ

あなたへの愛は自分の気持ちなんてお構いなしに勝手に膨らんでいく。「まだ大したことはないんじゃない?」なんておどけて見せるが、大したことあるに決まっているのは彼女自身が1番わかっているはず。
けれど、人を愛してしまった怖さや不安が突然襲うかもしれない。あなたがもし裏切ってしまったら…とありえない想像が襲うこともあるかもしれない。けれどあなたが抱きしめてくれたら、そんな想像なんて消滅するのだ。

盗んだ心をどう扱っているの?
毎日何回触ってくれているの?
こんなあたしとずっと一緒にいたいの?
あなたに出逢えて最高だ どうしよう
楽しい日々 あたたかく包まれる感じに慣れないよりも
失う方が怖くなったじゃないか

質問攻め3連発。
陳腐な言葉に直してみると
「あたしのことどう思ってる?」
「あたしのこと好き?」
「あたしとずっと一緒にいたいの?」と言ったところだろうか。
“盗んだ心”と表しているのがミソ。すでにあたしの心は自分のものでは無いのだ。あなたの扱い次第であたしはどうにでもなってしまうのだ。
どうしようと頭を抱えてしまうくらいあなたに出逢えて生まれた楽しい日々。
まだこの幸せに慣れてはいないが、それよりもこの幸せを失ってしまうことのほうが怖くなってしまった。
2人が恋仲になってから、それほど時間が経っていないのだろう。まだこの幸せに慣れていないにも関わらず、失うほうが怖いと思ってしまう彼女は実に幸せものだ。

今日も愛してるの 今日もしっくりいかないの
他に言葉はないんだろうか
毎日あたしの体があなたで形成されていきます
羽根いっぱいのプールで泳いでるような めちゃくちゃな嬉しい日々
これじゃ救えない 誰か知りませんか 愛の言葉を

ワンコーラスのサビを繰り返す。
けれど、少し月日が経っているように感じる。
それでも変わることのない気持ち。きっとこの気持ちは永遠に続くのだろう。
やはり、まだ愛の言葉を探しているようだ。
彼女がこの幸せを表すことができる日が来るのだろうか。
所詮、言葉など五十音の組み合わせ。そんな物で表現できるほど愛というものは簡単ではないはず。
なのに健気に言葉を探している彼女はなんと幸せな悩みを抱えているのだろう。
尽きることない想いと尽きることのない悩みを抱えてながら、二人はこれからも歩み続ける。

2回目のリクエスト頂きました!
この曲は僕も大好きな曲なので、解釈ができてとても楽しかったです。
リクエストしてくださった方ありがとうございました。 読んでくださった方にも感謝申し上げます。

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