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花唄

毎年の健康診断、一昨年は節目のため人間ドックでした。
私は健康診断が苦手です。診察ではないため患者さんも(この場合、患者でいいのかな?お客さん?)看護師さんも急か急かしながら動き回ります。

まず、それが苦手。
ゆっくり動いていると「なんでそんなにゆっくりなの?」という感じに見られてしまう。
ちょっと三半規管が弱いので早く動くとフラつくため、バレないようにゆっくり動くのですが、返って迷惑のようです。

1泊2日で行う人間ドック。指定の病院は会社の系列で伊豆にありました。
一人で、新幹線にも乗ったことがなければ、旅行というのも人生で数えるほど。人間ドックのために一人で伊豆に行く、そう決まった時から、私の緊張は始まっていました。

新幹線の切符の買い方もわからず、駅員さんには頼りっぱなし。やっとこやっとこ、病院へ到着しました。

受付を済ませ、検査着に着替え、恒例の血圧検査から。

あの、キューーー〜っとなって、プシューーー〜っとなるまでの、あの時間がやたらと長くて、もう本当に最初からゲンナリ。

普段は100もない血圧が、いきなり140!って! さらに血圧上昇です↑

でもこれは、これから起こる最大の出来事の序章にしか過ぎませんでした。

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1日目の検査が終わり、明日の大腸の検査に向けて説明を受けました。
受けたことのある方は知っていると思いますが、大腸検査をするには大量の水で薬を飲まなくてはなりません。私の場合、少し何かの数値が高いようで、他の人と違うお薬となり、それを2リットルのお水で飲むことになりました。

1日目の検査で疲れ果てている私にとってそれはもう、この上なく、、最悪のこと、、。
頭の中が真っ白です。

テンション高めに行こうと温泉に足を向けるも、楽しむことは全くできず。
では、食事を楽しもう!としても、ほとんど何も喉を通らず。

周りの人たちはワイワイガヤガヤとたくさん食べて、お酒もたくさん飲んでいるのに・・・。

「もう、帰りたい・・・」

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朝は5時に起きました。
と言っても、眠れていたかは定かではありません。

さぁ、2リットルの薬との戦いが始まります。

10分おきに、コップ一杯。

「まずい・・・」


10分おきに

「まずい!」

10分おきに

「まずい!」

「まずい!」

「まずい!」

「まずい!まずい!まずい!!!」

「・・・・・」


ゴールまで、あと、500mlくらいのところで、私の体は拒絶反応を起こし、そのまま倒れ込みました。

こうして、私の大腸検査はキャンセルとなりました。

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『よかった、帰れる!』
と思った時。

看護師さんが淡々と、「じゃ、胃の検査をしましょう!」

『え!胃??まだやるの??、、もう、嫌だ、嫌だ、イヤダ!帰りたい・・・』

私を誘う、看護師さんの笑顔とは裏腹に、気持ちはすでに自宅を向いていました。


胃カメラも初めてです。
通常の成人病健康診断でも、胃の検査はほとんどしたことがありません。
いつも断っているのです。
そう、三半規管がおかしいので、バリウム検査であの機械にクルクルとやられると
もう立っていはいられなくなるからです。

そうやって、避けて来た胃の検査。
今回もその予定だったですが、もうすでに断りを入れる余裕がなく。

遺物が鼻の中に入る?口の中??

どうしよう((((;゚Д゚)))))))

その恐ろしさに、私はまたそのまま倒れ込み、過呼吸となって車椅子で運ばれていきました、

とさ。


こうしてやっと私の人間ドックとの戦いが終了となりました。



病院の周りは小川が流れていました。

出向いた時期だけは最高だったようで、何メートルにも及ぶ川沿いの河津桜が満開を迎えていました。楽しめる余裕はほぼありませんでしたが、美しいその景色は私の心を癒しをくれました。

嗚呼、花が咲く、理由もないけど。 (TOKIO 花唄より)

ふと、頭に流れてきたメロディー。
ヘッドフォンを装着し、検索して流す。
聴いる私の目頭は、勝手に熱くなったことを覚えています。



いい曲ですよ。花唄。


最後に曲から一句。

言葉なくただ咲きほこる花吹雪 (青紫菫)


#桜にまつわるミュージック #エッセイ #エッセイのまち #ぷ企画 #曲から俳句

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