再視聴!古畑任三郎ファイナル 個人的にはやはり「今、甦る死」が傑作

先日、田村正和さんが亡くなったニュースは大変ショックでした。「古畑任三郎」シリーズは推理モノの中でも抜群に好きで、小中学生の頃に再放送やDVDを見漁っていたくらいでした。ファイナルの放送以降、いつか本来の続編が作られることを願っていましたが、もう二度と叶わないことでしょう。

訃報を受けてフジテレビでファイナルの再放送をしていました。イチロー回と松嶋菜々子回です。両方見たことはあるのですが、かなり昔の記憶だったので改めて見直すといろいろ新しい発見がありました。松嶋菜々子扮する脚本家に古畑が内心ウキウキしていたことに気づき、この物語の切なさをより認識することとなりました。小さい頃の私は恋心だとか人情みたいな話はまるで興味がなく、純粋に推理と駆け引きを楽しむことに重きをおいていましたが、今となってはエモーショナルな部分が沁みるようになったというわけです。

しかしながら、フジテレビにはどうせならもっと過去作品を大盤振る舞いしていただきたいところです。そもそも、「ラスト・ダンス」のエンディングをカットなんて言語道断です。今まで金曜ロードショーのエンドロールカットにはそこまで怒りを覚えたことはありませんが、古畑に関しては余韻ぶち壊しでしかありません。

…文句は程々にして、放映されたファイナル2作以外にもう1作ファイナルは制作されました。藤原竜也・石坂浩二が出演する「今、甦る死」です。田舎の山奥にある小さな村で起こる殺人事件はまるで祟りのようであり、わらべうたをなぞるようにして起こるのでなかなかホラー味があります。他2作はもう少し華やかな舞台設定なので一線を画します。私も視聴当時このホラーな雰囲気が怖かった記憶です。(以下ネタバレを含みます。ネタバレなしで見たほうが絶対に良いです)

ところが、改めて視聴すると真に怖いのは登場人物であり演者なんですね〜。藤原竜也に関してはカイジをやる前だったと思うので、まだそんなにイカれたイメージではなかったはずですが、無邪気に殺人を実行する時とかいちいち笑顔が怖い!そんなにやらんでもってくらいに不気味な笑顔です。

そしてその背後ですべてを操っていた石坂浩二もめちゃくちゃ怖い。わかりやすい怖さではなく、穏やかで自然な語りから出てくるやべえ発言が怖い。すべてを古畑に暴かれてなお、計画が上手く行ったのは君のおかげだよ、と握手を求めたり、音弥を殺すことはなかったのではという古畑の言葉に、今は自分の言いなりだがそのうち周りに流されるようになる、と教え子をバッサリ殺したり、めちゃ怖い。確かに兜が落ちるまでの時間稼ぎのために話を盛り返したり、疑われている音弥に被害者になる工作を示唆したりとあとから見れば怪しい行為はありますが、初見ではわからんでしょう。通常回の流れの裏をかかれ、当時は驚愕したものです。すべてが明らかになったとき、同情したくなるような犯人もいますが、この場合は穏やかな語り口のままやばいことを言うのでただただ怖い。脚本、演出、演技すべて絶品であるからこそ為せる回ではないでしょうか。

そんな怖い回でも救いはコメディシーンがちゃんとあることです。床に落ちてる得体の知れない液体をいきなり舐めさせられたり、ラジコンカーで寄ってたかっていじめられる今泉くんはパワハラを訴えてもいいレベルだと思いますが、都心の謎バーで3人仲良く固まっている仲睦まじい光景はほっこりするばかり。今泉くんは作品になくてはならない存在だと痛感しました。

そういうわけで古畑任三郎は良い回がたくさんありますが、個人的に一番印象的な回について見直してきました。テクノロジー面以外は時代を超えても全く色褪せない最高のドラマだと思っているので、この先も語り継がれてほしいと思っています。フジテレビは速やかに全話再放送してください。