サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER(平ゼロ)についての雑記

自分にとっての原点となるエンタメ作品って何だろうと思った時、どう考えても「サイボーグ009」に行き着くくらい、009は思い入れのある作品である。で、原作、アニメ、いろいろ見てきたけれど、やっぱり平ゼロは何度見ても素晴らしく、また見返してしまったので、本稿では平ゼロ、もとい「サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER」について雑に語ることにした。

ちなみにCOJのことを書いた文章。長い。

「平ゼロ」に出会った(=サイボーグ009の作品世界に出会った)のは、たぶん2009年の009の年だったと思う。ディズニーXDというケーブルテレビのチャンネルが新規開局されて、その記念に放映されたのを見たのが最初だった。

サイボーグ009という作品自体、まだ小学生でよく知らなかったので、見たときは衝撃を受けた。確かコンピュートピアの回だったと思うのだが、なんと言ったらいいのかわからない「未来感」に感動したのを覚えている。

今思えば00年代初頭ならではの未来感だと思う。デジタル作画黎明の色使い、あの空の青さを背景に赤い戦闘服の009が加速装置を発動する一連の動作。音楽小室哲哉でOPEDはGlobe、聴いても歌詞がよくわからないというのも、アニソン的なセオリーから外れ、未来的なものを想起させた。(話は横道に逸れるが、小室哲哉の00年代は90年代に比べるとあまり評価されていないように思うが、平ゼロで初めて小室サウンドに触れた身からするとこの時期の作風は結構好き。平ゼロを評価しない人の理由の一つに小室サウンドをあげる人がいるが、個人的には合っていたと思う。)

もう一つ感動したのは、あれだけ単純な線画のキャラクターデザイン、しかもとことん漫画的なのに、ちゃんとかっこよく成立して、大人の哀愁(そして色気!)が漂ってくるところだった。それは原作者の石ノ森章太郎氏のすごいところであり、キャラデザ担当の紺野直幸氏のすごいところでもある。子供が見ても安心できる画なのに、社会情勢や戦争に踏み込み、それぞれのキャラの宿命と因縁は重い(しかも一部の脚本に小林靖子氏が参加してんだよね、重いなあ〜)。大人が見ても子供が見ても面白いアニメなんだと思うのだが、放映当時はサザエさんの真裏だったために視聴率は散々だったらしい。悲しい。

今でも009の入り口として勧めるなら平ゼロがいい。原作にもシームレスに入りやすいキャラデザだし、誕生編〜地下帝国ヨミ編の重要エピソードを描ききるので、とても見やすい。サイボーグたちが初対面でスタートし、仲間になっていく過程も丁寧に描かれていてる。近年のre:やCOJは時代背景との整合性でどうしても歴戦のサイボーグ戦士になってしまうので、平ゼロの改変はうまいことできている。話数が多いので掘り下げエピソードもある。

特に地下帝国ヨミ編は単体で見ても良い。

  • 003に淡い恋心を持っていながら、009と003の関係を察する002。009がヘレンにかかりきりで拗ねる003の気持ちを上向かせようと、砂金ではしゃいで見せたりもする(で、003に怒られる)。からの最後の飛行…

  • 004のビーナとの出会いと短い交流。あなたの名前教えて、からの悲しい別れ(そりゃ推しになるって)

  • 命をなげうって魔神像に単身乗り込む009。直前に003に微笑みかける作画の良さたるや…。人間そのものが悪である、というブラックゴースト首領(脳)に対して、009は「悪を超える何か」を信じると言い切る。

近年、サイボーグ009というコンテンツは現代にはもう通用しないものになってしまったのではないかと思っていた。それはre:やCOJを見ていて、冷戦を背景にした設定に無理が生じたり、004を筆頭に武器人間が戦力的に優位に立てなくなってしまったこと、また年月を重ねてサイボーグ技術にリアリティが増し、改造の悲哀より障害を克服する進歩のほうが取り沙汰されるようになったことなどがある。

でも、平ゼロを見ていると本当に通用しなくなったのか?と思う。環境問題や神話、異星人との邂逅、機械と人間、そして戦争。わりと何でもありで、話の作り的にちょっとウルトラマンぽさがある。

もう一度平ゼロ路線でリメイクしてくれないかなあ。シン・サイボーグ009みたいな。やるなら完結編になるのかなあ。これも激重だからなあ。