サイボーグ009 CALL OF JUSTICE 感想

公開から5年越しに、サイボーグ009のアニメーション作品「CALL OF JUSTICE」を見たので感想記録です。こんなとこに見に来る人はいないと思いますが、超適当なので違ってても怒らないでください。

本作品は「RE:」の神山監督が制作に携わった3DCGアニメーションの009です。したがって絵が原作とはまあ全然違うわけで、気になってしまってですね…。もともと「RE:」でポカンとしちゃったのもあって、映画公開当時、見に行かずじまいに。今になってネットフリックスに課金したので、どうせなら見ることにしました。たしか映画3本分でできているのですが、配信では分割して全12話です。

あらすじ(適当)(ネタバレ)

アメリカ(?)の広い荒野のあるところに、一軒の家があった。そこではおなじみのゼロゼロナンバーサイボーグが集まって暮らしていた。そこにジャーナリストのルーシーがやってきて、彼女の父親が残した謎を解き明かすよう依頼されることから物語は始まる。

そこへ天気をあやつるカウボーイのおっさんが襲ってきて、なんとか撃退するも、ルーシーを国連軍のガーディアンに保護してもらう前にまたも変なメガネかけたおっさんに襲われる。撃退したはいいものの、殺しちゃったのでガーディアンに敵視され、追われる身になってしまう。

ゼロゼロナンバーサイボーグを襲ってきたおっさんたちは「ブレスド」と言う超能力者であることがわかり、その情報を集めるために各地に散らばる。ところがその動きが筒抜けであるかのようにガーディアンに追われる。ドルフィン号(ドルフィン3って作中では言ってた)に残ったチームはガーディアンに囚われてしまうが、ガーディアンの一機が突然暴れ出して001を拉致。002とガーディアンの中間管理職のおっさん(五十嵐)がそれを追跡する中で、めっちゃ強いロボが出てきて敗北。暴れたガーディアンの中身は死亡する。これをきっかけに誤解がとけてガーディアンと和解する。

001奪還のため、001がいると思しき工場に潜入作戦を実行する。009が001との接触に成功するが、何をたくらんでか001は拒絶し、井上和彦ボイスのラスボスと一緒に消える。ここでブレスドが蚊みたいなマイクロドローンでウイルスを撒き散らして人間を進化させる(なお成功率5%)企みが判明。

蚊は宇宙ステーションから落下させるようプログラムされていたため、宇宙へ行く。いろいろあって落下は阻止するも、004が犠牲となってしまう。悲しむ間もなく、009とラスボスとの熾烈なバトルが繰り広げられる。009の加速装置はラスボスのスピードに勝てず、不利な状況となるが、実はブレスドだったガーディアンの部下の子の抵抗などで盛り返し、最後はなんかよくわかんないけど加速が次元を超えて自分共々別次元に閉じ込めることで勝利した。めでたしめでたし。

…だいぶ端折った(にしては長い)ので、後から補完しよう。ここからは気がついたことを書いていきます。

誰がために戦うのか(クソ真面目感想)

今作のよかったところは、なんと言っても009がサイボーグとして戦い続ける理由を認識する過程が丁寧に描かれるところだと思っています。今作の設定として、どうやら原作と同じ時代に改造されて戦い続けてきたが、冷戦終結を機に役目を果たし終え、隠居した設定のようです。一部のメンバーは各国の諜報機関などに所属することはあったものの、戦わずに静かに暮らしたい、という願望を持ち荒野の真ん中にひっそりしてたんですね。

しかしブレスドに襲われたり、ガーディアンに誤解されたりして戦いに巻き込まれる009たち。そんな中で接触したブレスドの仙人みたいなじいさんに、サイボーグの力を失い普通の人間に戻る幻覚を003と009は見せられます。

ただでさえ望んだわけではない改造、そこから人間に戻ることは、呪縛からとかれて普通に幸せに生きれる希望を与えます。喜ぶ003。人間と同じく血を流し、痛みを感じることができる。そうか、痛みってこんなだったわ、と009。ここはなるほどなあと思うところでした。

というのも、彼らはもう半世紀以上も戦い続けたことで、もう人間と同じ時間の流れにはいないわけで、いくらジョーとフランソワーズがキャッキャウフフしていても、中身は老夫婦、あるいはそこも超えてしまった人間性になってしまいます。若さゆえの悩みとかコミカルさもろとも、もう成立しなくて、人間とは乖離した存在に嫌でもなっていくんじゃないかと思ったんです。

でもここで、歴史を積み上げたからこそ、人間らしさと兵器の間で揺らぐサイボーグとしての宿命を突きつけてくるんですね。だから、人間に戻った二人の反応、やっぱり苦悩し続ける姿にハッとさせられるのです。

人間に戻れた009、それでもサイボーグの力を欲します。ガーディアンに銃で撃たれた003を見て、これでよかったのか?守りたいものを守るための力がほしい、と悟るのです。その結果、サイボーグの力を手放さない、そして守るものがある限り戦い続ける覚悟を決めるんですね。カテリーナに向かって

「僕だってつらいと感じるときはある。戦いの日々から逃れたいと思うことだって。確かに望んで手に入れた力じゃない。けどそれが僕にしかできない戦いならーー僕はそこから逃げ出さない」

と語りかけるシーンは、この作品もちゃんとサイボーグ009してるって感激したところです。そうだよ、そういうのが見たかったんだよ。

ブレスドって何?

今回の敵です。どうやら有史以来存在するらしく、超能力を持ち人間よりも遥かに長い寿命を持つそうです。世界に3000人くらいいて(結構多いな)、歴史の裏側で人間の進化を促してきたといいます。そのうちの一人、井上和彦ボイス、髪型は009似のラスボス(名前はエンペラー)の企みを、009たちが阻止することになります。ちなみにブレスドというくくりはあるものの、一枚岩というわけでもないらしいです。え?エンペラー名乗ってるのに?

エンペラーさんによれば、人間このままじゃ進歩しねえな、よっしゃリセットしてやり直しじゃ、というのが動機らしいです。で、蚊のドローンからウイルスを撒き散らし、生き残った5%の人類をクロックアップさせるっていうのが彼らの作戦です。クロックアップってもう完全に天の道を行くアレしか思い浮かばない…

エンペラーさんは終盤で人間がバベルの塔乱立して進歩がないだの何だの、人間に対する不満を述べるんですが、いまいち具体的にどう不満なのかよくわかりません。読解力ないので。

あと、確かに(一部の)ブレスドは人間にとって脅威であり、わかりあえない存在だと思うんですが、あれだけ敵を倒すことに葛藤していたゼロゼロナンバーサイボーグが、ブレスドの正体が明らかになってはいない序盤で、すんなり殺しすぎなのは、正直今作最大の不満点です。

そりゃ正当防衛だし、手加減できる相手ではないにしても、してもだ。少なくとも話ができるなら何度でも訴えるとか、すると思うんですよ。直接手を下さなきゃならないときはもっと情に溢れていると思うんですよ。いくら情のわかない殺意バリバリのおっさん二人でも、あっさり殺すのはちょっと違うんじゃないですか。そりゃガーディアンに敵視されても仕方ないってずっともやもやし続けました。敵が自分から事故ったりして死んだ→お前らが殺したんだな!?→誤解です!だったらわかるんですが。

この武力行使についての価値観のゆらぎはガーディアン相手でも、水中のピュンマがガーディアンをどんどん水中にしずめていく(救助なかったら終わりじゃん?)のを淡々とやってのけてしまう一方で、操られて暴走したガーディアンに対してジェットが中の人を心配する描写があり、誰かに傷つけられる人には慮っても、自分たちに襲いかかる相手はたとえ普通の人間でも正当防衛だから武力行使する、というのはなんか違うような、という気がします。

各登場人物の活躍

キャラデザがな…という抵抗感が視聴を遠ざけていた本作ですが、見ているうちにある程度慣れたというか、性格や声はすんなり受け入れられたので、思ったよりちゃんとしてたと思いました。でもフランソワーズのキャラデザだけは好きじゃないや…ごめんなさい。

・009/島村ジョー

さすが主人公というべき活躍をしていました。私服パートは序盤にしかないけど、実は意外と胸板厚いんですね。先述のようなサイボーグとしての葛藤の部分はよかったですし、加速装置の活躍も申し分なし!能力は加速だけじゃない、と言われて(あとは勇気だけだろ)と思っていたら、なんか時間を巻き戻したり別次元に飛ばしたりしてて、何でもありになっていました(は?)。これってブレスドの力があったからできた芸当なのかなと思ったんですが、普通に009が進化したってことなんでしょうか。で、最後は別次元に飛んだその足で帰ってこれたってことでしょうか。

・001/イワン・ウイスキー

今回はめちゃんこ活躍してました。ガモ博士が凄いのか、イワンがすごいのか、ラスボスといい勝負できるくらい強かったです。こいつ一人でいいんじゃないかなジレンマもうまく回避していた印象。あと、意識保ったままテレポーテーションやってたけど、ホントは意識飛ばさないとできないんじゃなかったっけ?何だかアプデ著しい子です。

・002/ジェット・リンク

REでは全身飛行ユニットでぶいぶい言わせたのが不評だったか、今回は飛行ユニットは大人しめ。とはいえ、随所で空中戦が見られ、そのスピード感はCGの良さが出ててとても良かったです。その活躍を少しピュンマに分けてやれよ…。宇宙でクソ強ロボットと壮絶な戦いを繰り広げ力尽きても、スペースデブリに意図的にぶつかって宇宙ステーションに戻るところは、理知的というか、歴戦の戦士としての賢さが見えます。ちなみに途中で暴走して下半身ごとぶった切られますが無事。えっ、平ゼロではちょっと傷ついたくらいでヘタってたのに。やはり、かなり機械化されてしまったようです。最後の戦いで生死不明に…と思いきやまた仲間のもとに戻ったことが示唆されますね。

・003/フランソワーズ・アルヌール

視聴覚の索敵はもちろん、謎コントロールパネルも器用に使いこなして作戦のオペレーションを完璧にこなします。009を思いやる健気な姿も健在…なんですが、ほんとなんで日本人萌キャラみたいな見た目にしてしまったのでしょうか。フランス人的な可憐さがもっと出てきてもいいと思うんですけどね。声がよかっただけに、どうしても最後まで見た目が好きになれませんでした。バイク乗り回すかっこいいシーンもあるならなおさら萌系はしっくりきません。あと、ちょっとなぁと思ったのが、ガーディアンの誤解がとけて謝罪されるシーンで、カテリーナにアンタは何も言わねえのかよって責めるんですが、ここで怒るようなキャラだったでしょうか。まあ撃たれて危うく死ぬところだったので仕方ない部分はあると思いますけど。今回はエロいシーンはありません(カテリーナちゃんにおっぱいで負ける)。

・004/アルベルト・ハインリヒ

ぶっちゃけ時代が進みすぎてあまり兵器が太刀打ちできてはいない印象。宇宙のシーンで超銀河伝説ばりの最期を遂げますが、何でかあまり悲壮感はありませんでした。ちゃっかりラストでいることが示唆されているので何らかの形で戻ってきたのだろうと思ったのですが、イワンないし協力的なブレスドあたりが遥か彼方でもテレポーテーションできる力を持っていたか、ラスボスがいなくなったので宇宙ステーションに留まる必要がなくなり、実は装備されていた脱出ポットで地球まで戻ってきた、とかですかね(適当)。不遇というわけでもないが大活躍であるわけでもない…推しなだけに複雑な心境です。

・005/ジェロニモ・ジュニア

やっぱり寡黙なのであまり多くは喋らないんですが、フィジカルの強さがガーディアン相手に結構有利にはたらいていたと思いました。本気出せば一人なら逃げ切れそうですし。森の仙人みたいだなじいさんに会いに行くとこで自ら案内役をかってでた後のシーンでフランソワーズがついてきてて、うわあデートの付き添いじゃん気まずいとか思っちゃったんですが、その後の語りがかっこよかったですね。

・006/張々湖

コメディ要員。リアルな造形にするほどキャラとの乖離ができてしまう難しいキャラですが、声の演技もあってうまくマッチしていました。脂肪蓄えてるから機械を暴走させる針は効かない!という謎理論をかましていてさすがに笑ってしまいました。閉じ込められて007ともども「俺たちいつもこういう役回りだよな」と笑う場面は長年の付き合いを感じさせます。

・007/グレート・ブリテン

戦闘面では目立った活躍は少なかったものの、相変わらずのカメレオンぶりで敵味方問わず欺くなど活躍。007はコメディもシリアスもどちらでも行けるので、とてもうまい立ち回りができるよなあと思いました。さすがにでべそスイッチではありません。004と組むとなかなかシニカルで渋いコンビでいいですね。

・008/ピュンマ

活躍させてあげて…。

まあ戦ってすらいないREよりはかなり良いんだろうけど、見せ場の水中戦はガーディアン相手なのであまり本気モードではないし、ちょっと油断している間に確保って、間抜けかよ!戦う前006あたりに、水中のピュンマと戦って勝てるやついないよ、みたいなこと言われてますが、それ噛ませがよくいわれるやつだから!空中戦の002がぬるぬる動くのに比べてしまうと、水中の008は迫力に欠けるし、結局作戦は失敗するし…であまり活躍になっていません。もっと言えば、どうして無酸素でも長時間動ける彼を宇宙に連れていかなかったのか、という点でも不遇ぶりは健在。まあそもそも宇宙ステーションに酸素がある前提の作戦であったことや、彼一人だけが動けたところで状況はあまり変わらないこと、メタ的に249が人気があって宇宙に因縁もあることを考えると、ピュンマに入る隙はないっちゃないんでしょうね。いやでも、活躍させたげてよ。

・ギルモア博士

アンタいくつだよ。杖をついていましたが頭も足元もしっかりしているのでまだまだ元気そうです。でも実際問題としてこの先サイボーグ009の物語があったとして、ギルモア博士の高齢化問題はどうなるのでしょうか。ベルリンの壁の設定がある限り、ギルモア博士は現実の時間とともに年をとることになります。サイボーグのメンテナンスが要るので、なしっていうわけにはいかないし、メンテナンス要員を入れるのもまた難しい。生きのびる方法として有力なのはギルモア博士もサイボーグになっていたパターンですけどまた納得の行く説明が求められるでしょう。

・ゲストキャラ 

ガーディアンの皆さん、一切顔出しなしで死んでかわいそう。彼らが乗ってたメカってなんだっけ、結局名前忘れちゃいました。

五十嵐のおじさん。最初から悪いキャラには見えなかったのですが、部下をちゃんと気遣う優しさもあるし、ちゃんと悪いことは謝るいい人でした。でもいい人過ぎて馬鹿なんかな?みたいな行動もしちゃうおじさんでした。

カテリーナちゃん。クールに振る舞ってるけど、ええっちょっとエロすぎません?誰ですかこんなけしからんコスチュームにしたのは!怒らないから出てきなさい!…と最初はそればかり思ってたんですけど、実は…というキャラでした。

ルーシー。最初は何か重要キャラなんかなーと思ったけど、最後とかほぼ空気じゃないですか?ジャーナリストしている感じもないし…。ブレスドの存在を解き明かし世間に明らかにする役目なんでしょうけど、本筋には関係が薄い印象が拭えません。あと、なんか004とフラグ立ってたっけ?004が帰ってきたときにルーシーがいなきゃ!みたいな007のセリフがあった気がしますが、なにがどうなってんのかさっぱりわかっていません。まあ004とフラグが立つともれなく悲劇が起こるので、ルーシーは生きててよかったですね。

ブレスドの皆さん、先述の通りなので特に書くことが思い当たりません。そういえば、記憶操れるやつって出てきましたっけ?

その他

・最近の009作品は戦闘服がメカメカしくて、今作もライトが装備されてたり、リュックの留め具みたいなやつが胸元についているのがやたら気になって、そこは正直慣れなかったですね。装甲紙だし。服でええやん。マフラーはよかった。

・毎回飛ばしてたのであまりちゃんと見てないですが、エンディングで原作のコマが流れる中、今作のコスチュームで出てくる003と009のコマってどういう意味なんでしょうか。(考察のやる気がないので疑問を投げるだけです。)

・作画がアレでも気にしない性格もあるのでしょうが、3DCGは慣れました。最初はスマホゲーみたいだなと思っていたんですけど、アクションは結構スルスル動いていい感じだったのでだんだん気にならなくなりました。

そろそろ書くこともなくなったので、終わりにします。