沓掛温泉・叶屋旅館でプチ湯治

沓掛温泉とは

長野県上田市から西に向かって車を20分ほど走らせた青木村の外れに沓掛温泉というこじんまりした温泉地がある。旅館として営業しているのは2軒、共同浴場が1軒だけの山の緑に包まれた集落に溶け込むようにある静かな場所である。

叶屋旅館

叶屋旅館は長年に渡り湯治宿として営業して来たが、2019年4月から、沓掛温泉に移住して来た夫婦が新たにリニューアルして始めた。ゲストハウスと湯治宿を合わせた様なスタイルで、宿での食事の提供は無い。1階には自炊用のキッチンや相部屋の和室があり、2階にはいくつかの大きさの異なる和室が並ぶ。食事が必要な場合はすぐ隣の食堂と提携しており、食事付きのプランもあるので、好みに合わせて組み立てられる。今回は2泊のつもりだったので、素泊りで個室を予約した。

宿泊記

訪れた時期はちょうどお盆の暑い盛りの時期であり、途中の広場では盆踊りの準備もされて賑わいを見せる場所もあった。沓掛温泉は青木村中心部から県道を数キロ南下し、川を渡って急な段丘を登ったところに位置する集落の中にある。県道沿いに宿や民家が点在し、最奥部に小さな共同浴場の小倉の湯がある。叶屋旅館はその直ぐ隣に位置している。暑い日差しの中、道を歩く人の姿は全く見られず、至って静かである。

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宿でチェックインをして通された部屋は2階の薬師の間である。洗面トイレ無しだが、綺麗に掃除はされており、居心地は悪くない。

温泉

宿の浴室は内湯が2つあり、浴槽は2名浸かればいっぱいになる小さなものだ。全てグループごとに1時間単位での貸切利用となる。チェックインの際に夜と朝の希望時間を申告して予約ボードに名前を入れてもらう。

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予約時間を待って浴場に向かう。浴室はタイル貼りの小さくて清潔なものだ。源泉は36度で夏は加温も無いのでかなりぬるく感じる。鼻を近づけると、ほのかに硫黄の香りがする良いお湯である。

最初はぬるく感じたが、湯に浸かってしばらく時間が経って来ると、徐々に身体がポカポカと温まってくる。のんびりと長湯するのに適したお湯と言える。湯上りは身体がじんわりと温まって、少し汗をかくほどであるが、外の風にあたって涼むとだんだん収まってきて心地よい。やはり、暑い夏はぬる湯に限る。

風呂は予約のない時間には、空いていれば自由に入れる。部屋数も少ないので他の客とかち合うことも少なく、滞在中は、ほぼ好きな時に入れた。好きな時間に貸切で風呂を楽しめるのがこの宿の一番の魅力である。

食事

宿では自炊用の共同キッチンも使えるが、隣の食堂と提携しており、食事付きプランを予約すると、そこで食事をとるシステムである。我々は決まったセットメニューでなく、好きなものを食べたかったので、素泊まりとして、適当な時間に食堂に行った。もっとも、メニューを選べるとは言っても、うどんやカツ丼など、ほんの僅かな数の選択肢しか無い。それでも、暖かい食事を提供してもらえるのはありがたい。小さな厨房で調理は全てお一人でやられると見えて、注文が重なると時間がかかるが、さして急ぐ旅でもなく、テレビの野球中継を見ながらのんびりと待つ。お味は至って普通だが、お値段もお手頃なのが嬉しい。

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食事を済ませて部屋に戻ろうと外に出ると、共同浴場の前の道の真ん中に、誰かを待っているのか1匹の猫がじっと佇んでいた。夜は道に車の通りも殆どなくなり、山の温泉の夜は静かに更けていく。

館内設備

2階には共用の休憩室が用意されて、お茶やコーヒーを自由に飲むことが出来る。以前は客室だったところを転用しており、周辺の観光パンフレットや古い調度品も置かれていて、宿泊客がくつろげるように整えられている。

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終わりに

今回は2泊して静かな温泉を心ゆくまで楽しむことができた。古い旅館をリニューアルする途上のようで、どこも手作り感でいっぱいだが、居心地はすこぶるよろしい。なにより、良質のお湯を低価格で自由に楽しむことができる。隣の食堂と役割分担して泊食分離しているのもうまいやり方である。車で行くのであれば、持ち込んだ食材を自炊したりレンジ調理でき、それが面倒なら周辺の食堂に出かけて食べに行けば良い。長期滞在を考えると宿が無理に固定費をかけて食事提供に拘る必要はないと思う。叶屋のような素泊まり温泉宿のスタイルを参考に、他の経営に苦しむ湯治宿も経営を続けていって欲しいと願う。

源泉名 沓掛温泉1号泉、3号泉

泉質 アルカリ性単純温泉、アルカリ性単純硫黄泉

源泉 34.7°、38.5°

加水、循環なし、冬季のみ温度維持の為加温あり




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