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工場夜景クルーズで京浜工業地帯を訪ねる

工場夜景クルーズがメディアでよく紹介されるようになり、一度見に行きたいと考えていた。せっかくなら海上で納涼も出来る真夏がベストだと思われる。そこでお盆休みに夜景評論家・丸々もとお氏プロデュースの横浜港出発の工場夜景ジャングルクルーズに参加した。初めて見た夜の工場はなかなか迫力あるもので、滅多に見る機会の無い工場夜景を鑑賞する貴重な経験が出来た。(2019年8月)

横浜港から出航

事前にメールで予約を入れて、1人あたり4,600円を支払いした。当日は横浜港ピア赤煉瓦桟橋を18:30出航予定とのことで、少し前に赤煉瓦倉庫に到着した。ちょうどイベントをやる日だったようで、赤煉瓦倉庫の辺りは沢山の人で賑わっていた。

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出航時間の少し前に受付が始まり、予約名を告げて乗船する。予約したクルーズ船はいわゆる観光船よりも綺麗で新しく、配られたドリンクを飲んでいるとちょっとしたクルーズ気分も味わえる。

これから横浜港を出て川崎の京浜運河に向かい、京浜工業地帯の中枢部の工場夜景を鑑賞する90分間のクルーズが始まる。

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出航時間になり、まだ暗くなりかけの横浜港を出て川崎方面に向かう。ほとんど揺れもなく快適なクルーズである。せっかくなので冷房の効いた船内から上に出て、潮風に当たりながら港の景色を眺める。湿った潮風だが蒸し暑さとは無縁な涼しさである。

鶴見つばさ橋

しばらくして、大黒埠頭を超えると鶴見つばさ橋が長い姿を見せ始めた。これは大黒埠頭と扇島を結ぶ橋長1020mの斜張橋である。ライトアップされた姿は横浜ベイブリッジと並ぶシンボルとして親しまれている橋である。一面吊斜張橋としては世界最大規模だそうだ。

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京浜工業地帯へ

つばさ橋を超えて京浜工業地帯の中心部に入って来た。大きな発電所やコンビナートが次々と姿を見せる。海上からこんなに間近で巨大なコンビナートを見るのは初めてで、巨大なクレーンやタンクなど、ライトに浮かび上がるさまざまな形は見ていて飽きない。

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フレアスタック

発電所が近ずくと高い煙突の先から炎が上がっている光景が見えてきた。余剰ガスを無害化するために焼却した際に出る炎をフレアスタックというそうだ。高い煙突の先から勢いよくでる炎は相当な高温らしく、距離のある船上からでも熱を感じるほどである。この様なコンビナート特有の光景は初めて見たが、薄暗い夜空に赤々と揺らめく焔は普段見ることが出来ない光景であり、ちょっと異次元の様な雰囲気を感じる。

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昭和電工川崎工場

クルーズのハイライトと言えるのは昭和電工川崎工場である。煙を上げて光を放つ巨大な工場の姿は怪しげな生き物のようでもあり、なかなかの迫力を感じる。

この工場は昭和の初めに国産技術でアンモニア合成に初めて成功した場所であり、化学工業の歴史の上でも記念すべき場所だそうである。また、世界恐慌後や第二次世界対戦後の食糧増産にもこの工場で生産した化学肥料が復興に貢献したと聞く。重化学工業はイメージが今ひとつ良くないが、国の発展に大きな貢献を果たしてきた歴史はもっと知られても良いだろう。

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終わりに

闇の中で煙を吐きながら光を放つ工場夜景はなかなか迫力があり、得難い経験であった。「工場夜景萌え」なる言葉も、実際に観ると理解出来る気がする。なによりも、これまで観光の素材として眼中にされなかった工業地帯を人気の観光コースとして発掘したことは評価したい。工場夜景クルーズをきっかけに、産業観光につなげることが出来るかも知れない。観光の新たな形として、この様な動きを応援したいと思う。


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