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アートビオトープ那須の水庭を訪ねて

はじめに

栃木県那須高原にアートビオトープ那須というホテルがある。敷地内に2018年6月に完成したという「水庭」という名のボタニカルガーデンが話題となり、気になっていた。そこで天気の良い秋の週末に見学に出かけることにした。(2019年10月訪問)

水庭を手掛けたのは世界的に活躍している建築家の石上純也氏。この作品は、新たに設定された国際的な建築賞であるオベル•アワードの第1回受賞作品にも選ばれたそうだ。

見学予約と方法

ホテルに宿泊しないで水庭を見学する場合は事前にツアーを申し込む必要がある。ランチ付きで5,000円(税別)、お土産付き(冊子と絵葉書)で2,700円(税別)と、ややお高めの価格設定である。

水庭は自己の内面を見つめる「内省の場」として計画されたガーデンのため、見学人数は制限がある。作品を鑑賞するため、人が多くなるのを避ける必要もあり、高めの価格設定もやむなしだろう。

最もお手軽なお土産付きツアーは平日は1日1回、週末でもツアーは1日2回しか開催されない。ちょうど連休中だったこともあり、早めに予約を入れて11:00開始のツアーを予約完了した。もう既にランチ付きツアーは埋まっており、人気は高いようだった。

いざ見学へ

目的の場所は人や車の多い那須高原の中心からは外れて、自然に囲まれた静かな一角に位置していた。カフェの入口の受付で会計して冊子や絵葉書を受け取る。こじんまりした中庭には既にツアーに参加する他の人達が待っていた。

開始時間が来てガイドさんの案内でホテル敷地奥の水庭に向かう。途中には工事中のエリアが少し見えたが、ガイドさんによればガーデンレストランとスイートヴィラが翌年に開業予定だそうだ。

ガイドさんから水庭の木は横の敷地から1本1本時間と手間をかけて植え替えたこと、池はすべて人工的なもので地下でつなげているといった説明があり、見学に際しての注意を聞いたのち、各自で中に入って自由に見学する。

一人ずつの幅の入口から敷地に入り、置かれた飛び石伝いに思い思いの道をゆっくり進む。池は様々な大きさで作られ、水面に映る青空と木々の姿が歩みを進めるごとに表情を変える。

気がつけば人もばらけて辺りは誰も居なくなった。腰掛けるのに丁度良い石に座り、しばしの間、ぼーっとして休憩する。既に落葉した落ち葉が良いアクセントになっているが、これも計算されたものなのだろうか、ハート型の石はわざとだよなあ、などととりとめもなく考えを巡らす。

ここは人工的に作られた場所だが、歩くうちに自然の中に居るのと全く変わらない気がして来た。敷地奥まで歩みを進めると小高い丘があり、その上からは水庭の全景が一望できる。視点が高くなると全体が視界に収まり、また違う形が見えてくる。

恐らく朝や夕方の時間だと差し込む光の角度や色彩が変わり、また違う雰囲気のはずで、季節や天候によっても表情が違うのだろう。こんど来るときはホテルに宿泊して、その違いを味わってみたいものだ。

ホテル中庭で休憩

ゆっくり鑑賞した後にホテルの中庭に戻って来た。少し小腹が空いたので、中庭の一角の屋台でちょうど売っていた暖かい「すいとん」をテラス席で食べて休憩する。時おり吹きぬける高原の風は少し冷たいが、日なたは暖かく、外でのんびりと過ごすのは気分が良い。

ホテルにはガラス工房や陶芸スタジオが併設されており、滞在してゆっくり楽しくこともできるらしく、スタジオの前に道具や作品が並んでいる。経験したことはないが、滞在してアート体験を楽しむのも良さそうだ。

このホテルは2017年にクローズした二期倶楽部の経営とのこと。二期倶楽部は那須を代表する高級文化リゾートホテルとして知られた存在で、いつの日か泊まってみたいところだった。今回訪ねたホテルでも、その伝統を受け継いだ文化や芸術の香りが敷地内に感じられる気がした。

終わりに

那須には以前から何度も来ているが、これまでは山深くにある温泉を訪問したり、登山ばかりしており、あまたある観光客向けの施設には敢えて近づくことはなかった。

しかし那須には訪ねてみたい美術館やアートスポットも増え、定期的な芸術イベントも開催されているらしい。これからは芸術に親しんだり、ゆっくり読書に耽るような滞在もしてみたい。

水庭は人工的に作られたものだが、那須の自然を味わうとともに、思索をめぐらすことができる環境がとても気に入った。人工的に作られたこの水庭が、この先時間が経つと、どう変化していくのかも興味深い。ホテルには新たな施設も増えるようなので、また季節を変えて訪ねようと思う。


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