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はじめからあったもの

「ぼくにはなにもない」
齋藤真行著

ぼくにはなにもない https://www.amazon.co.jp/dp/4908564299/ref=cm_sw_r_cp_api_i_buw.EbXFG5KY8

ちょっとだけ大袈裟にいうと、ここ最近の僕は、この本に救われた。
ここ数ヶ月、僕は沢山の本(電子書籍を含めて)を読んでいた。
それを全部合わせても、この本の価値はそれより大きい。少なくとも僕にとっては。

簡単で短い本だ。絵本のような装丁で10分もあれば余裕で読み終わる。
この本を読んで、ひとしきり何日か余韻に浸った後、僕はAmazonのこの本のレビューを見たくなった。
いい本について、僕がよくやることだ。

本の評価は全体的には良かったが、意見はとても割れている。
悪い評価の代表的なものは、「大したことない」「子ども騙し」「救われない」というもの。
また、良い評価には、例えば「日々の生活の大切さを感じた」とか、何もないことで見えるものを大事にしたい」とかが並ぶ。
その中で、ある感想があった。
「この本は見る人によって全然違うものに見えるだろう」

昔読んだ本が、今になって読んでみると全然違う感触になっていた経験が、僕にはよくある。
昔感動した本が、今はそうでもなかったり、違うように読めたりする。それは、読んでる僕が変わったからだろうと思っている。
ある表現物から伝わってくるものは、必ずみんな同じではない。そのときによって、人によって結構違っている。

この本も多分そういう本だ。
この本で書いてるものは、大したことないことだと思う人もいるし、本当に主人公はそれでいいのかと思う人もいる。
主人公のぼくも、本の中で、自分の考えに対して、ただの負け惜しみに聞こえるかもしれないと書いている。
確かにそうだろうと僕も思う。ここに書いていることは何でもない話だ。

僕がこの本から気づいたことはこういうことだ。

僕も含めて、たくさんの人は自分が当たり前にしていることに気がつかない。
それが自分にとって当たり前すぎて、やってる感覚もできている感覚もない。人から褒められてさえ不思議に思う。そんなこと言ってくれるなんて変だなと。
むしろ、そのことが自分のコンプレックスだったりする。ここにいてくれるだけでいいと周りに言われても、自分は何もしていないと悩む。

私がこの本で気づけたことは、
「自分が今求めているものが、本当は既に持っているものだとしたら」ということだ。
それを何もないことで既に万全に感じているとしたら、という気づきである。もう探す必要はない、ということだ。

僕はもう変わりたくなかった。
何を気づいても、何かが変わったように感じても、もう何もやりたくないし、そのままでいたかった。
どんなに変わっても、そんな自分を自分で肯定できなかった。誰が僕の何を褒めたとしても、僕は納得できなかった。

そんな何もない僕が、既に持っていたことをこの本が教えてくれた。しかも、僕が一番望んでいたものを。
もう探さなくていい。変わらなくてもいい。知らなくてもいい。
もうそこにあり、そこにいる。

この本と著者に心からの感謝を。

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