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映画感想【サヨナラまでの30分】

【どこまでも青が印象的な作品】

YouTubeで偶然流れた予告をはじめてみた時に映像、主題歌から感じる儚さに惹かれて、絶対公開日には観に行こう心に決めていた。
(結局公開日には行けず悔しさが残った)

楽しみにしすぎて公開までが果てしなく長く感じてしまうほど期待していました。

期待しすぎかな…と、座った映画館のシートで心配にもなりもしましたが実際観ると、期待を遥かに上回っていました。正直バンドにも音楽にも縁のなかった私でも楽しめるか不安でしたが、なんら問題なかったです。

死を扱っているストーリーだし、感動ものっぽそうだから泣いてしまうだろうなとは思っていましたが、初見で本編始まって5分で泣くなんて思ってなかった!

一回見ていたら最後の流れとか知った上で泣いてしまうことはあるけど、これは最速記録かもしれないです。

MVのような構成で、アキの今までの記憶を継ぎ接ぎの走馬灯のように追体験していく中、もうアキの人柄に惹かれていく。でもアキはこの世からいなくなってしまう。

そこでOPにあたるアキのボーカルからはじまる(記憶が曖昧だけど歌い出し真剣佑さんであってる?)『瞬間』が流れたところでなんだか胸がいっぱいになって泣いてしまいました。

もうこの段階で観にきてよかった、の満足感でいっぱい。

私は涙腺が貧弱なので何かが”ハマった”瞬間にその勢いと圧倒的な圧に押されて、なんの予兆もなく涙が出ることがあるのですが、これもそのタイプでした。

この映画、至る所で”ハマった”瞬間が多くて本編中ほとんど目に涙をためて観ていたような体感。

■キャラクター

アキ(新田真剣佑さん)は底抜けに明るい性格で笑顔の似合う好青年。絶対周りを引っ張って明るさを分けてくれる太陽みたいな人だと思う。

明るいアキだからこその後半にいくに連れてみせる切ない表情が際立ってました。

真剣佑さんこんな歌うまいなんて聞いてない…めちゃくちゃいい声だしなんだか切ない声色で虜になりました…

ソロ曲なんて映画を観た後に聞くたびに涙が堪えられません…

颯太(北村匠海さん)は引っ込み思案で人との関わり方がわからない、1人でいいと思おうとしてる?ちょっと頑固そうでクールな人物。

アキに振り回されつつも徐々に世界が開けていっているようで、一番感情移入しやすいキャラクターでした。

あと、颯太に関しては歌い方の違い!北村くんの歌の歌い分けが素晴らしかった。ちゃんとアキが乗り移ってる時の歌い方と颯太の歌い方が違うって感じれた!

演技で入れ替わりはたまに見るけど、入れ替わって歌を歌うってかなりハードル高くないですか??

圧倒的な”陽”のキャラクターのアキとそれと対比するような"陰"の雰囲気を纏う颯太のバランスがとっても素敵。

周りを囲むECHOLLのメンバーも魅力的な人たちばかりで、特にヤマケンのワンコ感は好きにならざるを得ないだろうと思いました。

■光、映像

とにかく光の扱い方が美しかった。

2人の対比に光が印象的に扱われている気がして、常時アキを透けさせるなどせずにこの世のものではないことを見ている側に伝えるための手段は光かな、と感じました。

死んでしまっているアキへの光の当たりかたが他の人物とは違って異質な存在ということが浮き上がってみえたから。(アキだけ後ろからスポットが当たっているような。)

大学での講義のシーンや食堂でのシーンは特にアキにだけ別の強い光源から光が当たっているように見えて、下手すれば授業中に話を聞いていない2人組なのに、アキは颯太とは別の次元にいる。ということを強く感じるシーンでした。

夜のプールのロッカールームに蹲る颯太が影の中にいてアキに月明かりが当たっているのは心情も写しているみたいで、こういう演出が大好物の私はツボをおさえられました。

あと青も印象的で、空、颯太の部屋、プール、月夜のピアノのシーンなんか、様々なニュアンスの青がふんだんに使われていました。映像もフィルムっぽい青?がかった感じの色味が素敵でした。

■ 印象に残ったーシーン

「忘れたくない。誰かと一緒に音楽やる楽しさも、仲間も、全部アキがくれたから。」

予告動画にもあったこの夜のプールのシーンのカナのセリフは、聞いてる颯太自身とリンクしすぎる言葉であまりにも切ない…アキから与えてもらった2人だからこそ、惹かれ合うものもあったのかなと。

あと、カナのいないECHOLLのメンバーでの練習で『stand by me』をピアノで演奏するシーン。初めて”颯太”の歌声を聴いてやっぱり今まで歌っていたのはアキなんだって鳥肌が立ちました。

ラストのフェスシーンに向かうカナと颯太の走る一直線の道が、上書きされても層になって前のデータは残っているというカセットテープを連想させて印象的でした。

■ さいごに

そう、音楽について直接触れてなかったんですけど、どの楽曲も素晴らしすぎて劇中でECHOLLの曲が流れるたびに泣けるほどでした。

終わってすぐ映画館のグッズショップでCD手に取ってました。
アキのソロ曲の風と星が1番お気に入りです。

最初、予告を見る前に映画館においてあるフライヤーを見た時、これもよくある売り出したい若手を使って作った薄い映画なんだろうな、と正直思ったりしてました。

青春×バンド×カセットで入れ替わりなんて!って。

でも、予告を見て期待して、本編を観て、違うんだ。って思いました。

多分、観てない人の中には最初の私と同じように感じてる人がいると思うんですけど、観てみて後悔はないと思うので、是非とも観て感じてもらいたいです。

DVDででからでもいいかなって思ってる人にはうまく伝えられないんですけど、映画館で観るのをおすすめしたいです…劇場を出る時、なんだか世界が開かれてる感覚を感じられたので…!

架空の物語ではあるけど、確かにアキは生きていたし、今日、颯太はカセットを拾うかもしれないというワクワクと、夏の日に楽しみにしていたラムネを飲みきった後のような、炭酸が喉を通った後のもどかしさみたいなものが心に残りました。

学生時代に観たかったな、と心底思う映画でした。

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