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地雷男

あれは、私がまだ幼き頃、小学校低学年の冬休みのことだったろう。家族で母方の祖母の家へと出かけたのだが、その場所は車で一時間ほどの距離にあった。 その日、珍しく父も一緒に来ていた。祖母、母、父は居間で和やかに話しをしており、私はその隣で大人たちの話を片耳で聞き流しつつ、ひとり遊びに興じていた。 だが、突然として大人たちの空気が変わった。その異変に気づき、私は振り返ると、父の顔がひどく不機嫌になっていたのだ。居心地の悪さに居間の雰囲気は途端に冷え、やがて我々は祖母の家を後にす

    • 愛着障害 〜親からインストールされたOS〜

      小学校3年生の夏休み。 遊園地の入り口で父親に怒鳴られて、涙を堪えている女の子がいた。 楽しそうな子どもたちの声とBGMが、遊園地の奥から虚しく響いている。 他の子たちは、思い思いに駆け回り、笑っている。 同じ子どもなのに、その女の子の肩には小学校3年生らしからぬ、重大な責任がのしかかっていた。 「愛着障害」 それは、人間の大きく人生を変えてしまうほどの影響力があるにもかかわらず、本人からは全くもって見えない呪縛である。 自分で愛着障害だと気づくことは、RPGゲー

      • 自分の心のブラックボックスを開けてみた話。

        私は中学1年生のときに、車に轢かれた。 奇跡的に、体は無傷だった。 一歩間違えれば死んでいた。 そんな恐怖が込み上げてきて、 布団にくるまりながら 自分の部屋で、ひとりで泣いた。 でも、事故のことは、親には言えなかった。 親は、どんな事で怒り出すかわからないような地雷のかたまりだったから。 事故にあったことさえ言えない、 それが私と親の関係だった。 父親は、私が物心ついたときから、 家で大声で怒るひとだった。 「お母さんが買ってきた牛肉がおいしくなかった。」 「お

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      • 動物写真
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