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【#ハリィしろかわのゆるゆる映画教室】第46回 マカロニウエスタンの登場



■弱体化したハリウッドで作られた西部劇では、黒澤明の「#七人の侍」(54)をベースにした「荒野の七人」(60)(ジョン・スタージェス監督)が大ヒットしたにもかかわらず、1960年代以降、衰退の道を辿る。
(西部劇というジャンルは安手のドラマを視聴者に提供するテレビ業界のお得意ものとなっていく。(「ガンスモーク」「ローハイド」等))

■むしろ、興行面で西部劇映画に救いの手を差し伸べたのはヨーロッパからであった。
ヨーロッパの映画制作は第二次世界大戦後の10年で弾みがつき、ハリウッドは恰好の手本となった。
ハマー・フィルム・プロダクションにてマイケル・カレラス監督が制作した「#荒野の愚連隊」(61)がマカロニウエスタン映画のはしりと言われる。

■その後、アメリカ西部を描き直したいという願望と日本の時代劇の影響を受け、初の本格的マカロニウエスタンが誕生する。
セルジオ・レオーネ監督が黒澤明の「用心棒」(61)を下敷きにして、テレビドラマ「ローハイド」のスターだったクリント・イーストウッドを主役に招き、「#荒野の用心棒」(61)である。

本作では、イーストウッド扮する主人公は私利を貪る私利を貪るガンマンで、わずかな良心しか持ち合わせていない。
善人はおろか、アメリカ先住民も登場しない。その代わり、物語は南部で展開し、メキシコの土地やラテン系の人々が重要な役割を果たす。

また、レオーネ監督の暴力的な世界観は、エンリオ・モリコーネの印象的な音楽に引き立てられているのも特徴である。

■次作「#夕陽のガンマン」(65)でもイーストウッドは若手の賞金稼ぎに扮する。そして、「続・夕陽のガンマン」(66)でも「名無しの男」役で登場したイーストウッドは不動の地位を築く。

■「続・夕陽のガンマン」は批評家からも高く評価され、興行的にも成功。同じレオーネ監督の「ウエスタン」(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ウエスト)(68)では、アメリカ西部開拓と市場拡大を批判。本作も批評家に評価され、同作はレオーネ監督の代表作になる。


■マカロニウエスタンでキャリアを築いた監督は他にもいる。
セルジオ・コルブッチ監督の代表作はマカロニウエスタンの中でも抜きん出て描写が残虐な「続・荒野の用心棒」(66)。
フランコ・ネロ扮するアンチ・ヒーローが、マシンガンを入れた棺桶を引きずり、土砂降りの中、獲物を追ってぬかるんだ荒野を進む姿が印象的。

ジャンフランコ・パロリーナ監督は、西部劇の大スター、リー・ヴァン・クリーフとユル・ブリンナーを主役に起用した「サバタ三部作」で成功を収める。



■エンツオ・バルボー二監督のコメディ「風来坊/花と夕日とライフルと…」(70)では、マカロニウエスタンのパロディであるが、本作が、西部劇というジャンルが最盛期を過ぎたことを表している。


そして、マカロニウエスタンは「ミスター・ノーボディ」(73)、「ケオマ・ザ・リベンジャー」(76)あたりで終焉を迎えたが、マカロニウエスタンの精神と形式は、その後、クリント・イーストウッドやクエンティン・タランティーノ、ロバート・ロドリゲスといった映画監督に影響を与えて現在に至る。

(つづく)

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