モンブランな日曜日のつくりかた
MCで、話したいことの2割くらいしか話せなかったので
asaさん、水色デザインさん・白いベランダの三者共同企画
「モンブランな日曜日」が終わったので一息ついている。
ライブ中に話しそびれたことが色々あった気がするので、興味のある方がいたら話したいと思って、ちょっと書いてみることにした。ついでに、ブログより見やすいのかと思ってnoteを作ってみた。
という訳で、さっそく書いてみようとおもう。
「モンブランな日曜日のつくりかた」です。
これを読むと、あなたも「モンブランな日曜日」を作れるかもしれません。
step1. お誘いがくる
asaさんはかなり前から白いベランダのことを知ってくれている友達で、製菓のプロでもあった。asaさん自身もギターを演奏したり歌ったりする人で、だからイベントを作るということに関心を持ってはいたけど、やってみよう、ということになったのは今回が初めてだと言っていた。きっかけは、水色デザインさんのイベントにasaさんが遊びにいった時に、水色デザインさんがやってみたら?と提案してくれたからだそうだ。
「僕がサポートするので、asaさんも企画ライブをやってみたらどうでしょうか?」
「じゃあ、白いベランダという人たちがいるので、声を掛けてみます」
※この会話はおれが勝手に想像して書いたので、
実際と全然違ってたらすみません。
そういう訳で、白いベランダのところにお誘いが来た。
「私がケーキを作るので、コラボして、カフェでライブをしませんか?」
話を持ってきてくれた時、asaさんは機会を得たことをとても喜んでいる様子だった。おれたちも喜んで「是非」と言った。
step2. 打ち合わせ
経堂は下北沢らへんにある、なんとなく、小田急線沿いだなぁという雰囲気の町だった。その日は、すずらん通りと呼ばれている商店街の中にあるカフェ「aki cafe」で集合して、asaさん・水色デザインさん・白いベランダ・aki cafe店主の安芸(あき)さんの五名で打ち合わせをすることになっていた。店に着いて、安芸さんが製作した椅子や机の持っている呼吸感に護られている空間に一歩入ると、おれは街から遠く離れたような気持ちになった。白いベランダ以外の皆さんは全員面識があったようだが、白いベランダにとっては水色デザインさんと安芸さんとの初顔合わせでもあった。初対面ということで少し緊張はしたけど、水色デザインさんも安芸さんも穏やかな方だったので、乱闘が起きることもなく無事に打ち合わせが進んだ。打ち合わせでなんとなく決めたのは、こんなことだった。
・夢の中で食べたケーキの味を思い出すとき、みたいな体験にしたい。
(打ち合わせの前の日、asaさんと夜の公園でそういう話をしていた)
・秋に開催するから、季節に合ったケーキを楽しんで頂けるようにしたい。
・aki cafeの設備を一式お借りして、その場でケーキを作る。
・終わったあとに手元に残る、ちょっとしたお土産を用意したい。
・さとこが絵を描いて、フライヤーなどで使う。
・水色デザインさんの、光や映像の表現のなかで演奏する。
この時点では、何のケーキを出すか、とか、イベントのタイトルはまだ決まっていなかった。それでもある程度の形は定まったから、その日は解散することになった。いつの間にか辺りはもう暗くなっていて、夏の日暮れの中、商店街を歩いて帰った。
step3. 当日
開場前
やや中略して、ライブの当日になった。今回は音響周りのセッティングやサウンドチェックを全部自分達でやることになっていた。マイクスタンドやら何やらを沢山抱えて白いベランダは電車に乗った。重くてつらかった。おれたちは、
「みんな本当に来るのかな?」
と本気で心配していた。早くから企画して予約開始して、次の日にはもう満席になってしまっていたので(びっくりした、本当にありがとうございました)、みんなもう忘れちゃってるんじゃないか、と恐れていたのだった。
aki cafeに着くと、水色デザインさんが空間をセッティングしているところだった。
「ブライダルみたいな、祝福されている空間をイメージしました」
透けて見えるようなふわふわの白い布を天井から垂らしたりしながら、そう話してくれた。白いベランダは結婚式をしていないタイプの夫婦なので、「やった!おれたちの結婚式だ!」などと言って少し喜んだ。asaさんは最強アシスタントのけんたさんと二人でケーキを作っていた。なんだか文化祭の準備が最高温度に達したような雰囲気だった。白いベランダもマイク類各種を会場に設置して、いそいそサウンドチェックをした。
「開場って何時でしたっけ?」「15:30ですね」
「あれ、もう3時だ」「思ったよりギリギリだなぁ」
「僕もやばいです」「私もやばいかも」
などと慌ただしくしていて、それも結構楽しかった。
準備はなんとか間に合って、開場直前にBGMを選ばせて頂いた。その時も水色デザインさんがアドバイスして下さった。
「歌モノのライブだから、被りすぎないように、インストだったりするといいですよ」
なるほど確かに、と思った。水色デザインさんはご自身でイベントを企画したりしている方なので、こういうちょっとした助言も含めて、多角的に助けて頂いた。
それで、演奏時間外のBGMはGuillermo Rizzotto / Pablo Giménezの「El paso del tiempo」にした。
開場
開場すると、ちゃんと予約してくれていた方達が入って来てくれた。おれは、(本当に来てくれた……)と静かに感動していた。受付も、水色デザインさんにやって頂いた。会場の空間作りも水色デザインさんだ。入り口に貼ってあったポスターのデザインも。それから、お土産として用意したチケットも(イラストは、さとこのイラストをつかって頂いた)。
来てくださった皆さんが、会場に入ったときに空間を見回したりしているのを見かけた。その場にある気の流れみたいなものを、即座に読み取って下さったのかなと思っている。うまく表現できないけど、神社の鳥居をくぐった時みたいな。
モンブランについて
一人二人と会場に人が増えていって、モンブランと飲み物がテーブルに運ばれていく。最強アシスタントのけんたさんが、一日カフェ店員と化して忍者のように完璧に業務を遂行していた。普通にaki cafeにいつもいる店員さんだと思った人も沢山いるんじゃないかな?モンブランが運ばれてきたときに「わ~」って感じで喜んでいる人もいて、おれもとても嬉しかった。asaさんも終演後、
「(ケーキって普通は持ち帰って家で食べるものだから)食べてくれたみんなの反応が目の前で見れて嬉しかった~」
と言って笑っていた。
asaさんの作ったモンブランは「いつもつくってるやつ」とかではなく、今回のために研究と試作を重ねて作られたものだった。だからこだわりポイントが沢山あって、その一つ一つがカップの中で調和するように考え抜かれていた。話を聞いたときに感動したのに、おれたちが覚えているポイントが少なすぎる。追記できたら後でしたいけど、ひとまず思い出せた三つだけ書く。モンブランを食べたみんなが味を思い出す手掛かりになったり、来れなかった方にも想像して楽しんで頂けたら嬉しいです。
・栗とカスタードクリームを混ぜた、特製のマロンクリーム。
・自家製のラズベリージャム。種が食感を邪魔しないように裏ごしした。
・クリームの砂糖の量。何パターンも試作して、一番丁度いい甘さになるように。
余談だけど、試作品の段階で食べさせてもらったものも、とても美味しかった。それでも更に改良を重ねていたと話に聞いて、なんというのか、しみじみと真心を感じた。だから、みんなおいしそうにして喜んで下さって、ほんとによかったとおれも思った。
モンブランについて(追記)
asaさんからモンブランについて詳しく教えていただきました!
送ってもらった文章をそのまま載せます。
転記していておいしかったな~と思い出して幸せになる文章でした、送ってくれてありがとうございます。
(おれが記憶を頼りに書いたものもそのまま直さずにしておくので、
これを読む方は答え合わせなどしないようにしてください。多分何かしら間違ってるので…。)
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今回はライブ中にお出しするということで、食べやすいようにカップに詰めました。
以前働いていたケーキ屋で作っていた「トライフルケーキ」をモンブラン風にアレンジしました。
マロンカスタード、生クリーム、スポンジ、を重ねて、最後にモンブランクリームを絞ります。定番のツヤツヤ渋皮栗トッピング!
モンブランといえば甘い、ですが、最後まで飽きずに食べていただきたくて、食感や、味にもこだわりました。
ひとすくいめには、ラム酒の香るモンブランクリーム、甘さ控えめな生クリームと、渋皮栗をゴロゴロ入れたクリームの層。
1番下には自家製ラズベリーピューレを仕込みました。甘さと、甘酸っぱさ、香りの組み合わせを楽しんでいただけていたら、嬉しいです。
美味しそうに食べてくださるお客様の顔が見れて、とても嬉しかったです。
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演奏について
演奏した曲目はこんな感じだった。前半が三十分、後半も三十分…くらいになっていたと思う。いちおう、そのつもりでやった。
(前半)
わたげ
ペーパー・フィルター
三色すみれ
辿り着く浜辺
やわらか
(後半)
とけた雲
原の幻想譚
昼の帳
金木犀のララバイ
ぎこちない旅
(アンコール)
君が笑う
「ペーパー・フィルター」は一番あたらしい曲で、先週くらいに作った。「原の幻想譚」がいちばん古くて、これは白いベランダを始めた2014年よりも前、当時やってたバンドで演奏するために作った歌。なんでもすぐにボツにしたり記憶から消してしまう自分としては、寿命の長い曲だと思う。今回は、
「どうしたら夢っぽい雰囲気を感じてもらえるかな」
「ケーキや映像の邪魔にならないような音楽がいい」
ということを話し合って選曲した。そうやって選んでいると、古いものも新しいものも関係なく曲が集まってくる感じだった。最近はわりとそういうことが多いかもしれない。目立たず地味に10周年、という感じだけど、10年やってみると自分の人生を俯瞰するような不思議な気持ちをたまに味わうから面白い。規模は小さいけど、自分達の音楽がゆっくりと成長して、誰かとのコミュニケーションになることは楽しい。
演奏を聴いてなにを感じて頂けたのかは、自分が演奏する側だからよく分からない。聴いて何か思ったよって方は、よかったら会ったときにでも教えてください。聴いて下さる方にとって、自分の心を探検するための道具の一つ、みたいになれたらいいなぁと思う。でも、なんでもよくて、好きに楽しんで頂けていたら幸せです。サンプリングしてラップしたりとか。
映像について
後半は、水色デザインさんの映像/光の表現とのコラボレーションという形で演奏させて頂いた。空間をつつむ白い薄布のなかで、色々な光が姿や速度を変えながら会場を流れていくのを、演奏しながらだけど、自分達でも見ていた。企業秘密の可能性もあるから詳しく書かないようにするけど、ただ映像を作って流すのではなく、色々な道具を駆使して、さらにその光に命を吹き込んでいるようだった。終演後に、これはどうやって使ってたんですか、これは何ですか、といろいろ訊いたら、実演しながら教えてくれた。楽しかったな……。あ、それから、作って頂いた映像の中には、じつはさとこが撮った動画とかも混ざっているのでした。さとこが使ってもらえた~!と言って喜んでいました。
これでもまだ書き残していることがある気がしてならないけど、だいたいこんな感じのイベントをみんなでやって、来てくれた人もいたよ、というのを少しは残せた気がするので、ライブについてはこれでいったん終わりにします。
step4. 終演後
終演後、諸般の事情でライブに間に合わなかった友達がわざわざ会いに来てくれて、演奏は間に合わなかったけど、モンブランは食べて頂くことができた。今度は当日の朝に電話します。いや、それだと迷惑かな?どうしたら良いんだろう、出来ることがあったらこんど教えてください(これを読むか分からないけど……)。友達は少しすると街を散策するといって去っていった。おれたちもついて行って遊びたかったけど、片づけとか色々があるから断念した。
片づけの後は、主催側のみんなでしばらくお茶をした。asaさん、けんたさん、水色デザインさん、安芸さん、あと白いベランダ。ライブのお客さんがみんな帰ったaki cafeで、安芸さんはJudee Sillの曲を掛けていた。
「Judee Sillですか?」
と訊いてみたら、ええ、白いベランダの演奏を聴いていたら……と安芸さんが話してくれた。
「聴いていたらなんか思い出して。聴きたくなって」
Judee Sillの曲を聞いたのはすごく久しぶりだった。そしてついに、おれたちはasaさんのモンブランを食べることが出来た。とても幸せだった……安芸さんが買って下さっていたパンもおいしかった。パンは、途中で小腹のすくお客さんもいるかもしれないから、という理由で用意して下さっていたらしい。(優しい……)と思った。誰も泥酔せず、乱闘もなく、とても穏やかな打ち上げだった。
「またやれたらいいですね」「やりましょう」
15分おきぐらいに、誰かがそう言っていた気がする。
だから、またやるかもしれない。やらないかもしれないけど、少なくともその日はそう思える一日を過ごすことができた。もちろん、来てくださった方達にとってどうだったのか、というのが全てではあるけど、でも、やってる側も楽しかったよ、という報告でした。
step5. 結論
とにかく楽しかったです。
ありがとうございました。
あと、帰り道の夜空に満月が浮かんでいました。
step6. さとこの絵について
(以下、さとこ談)
今回描いた絵の中には椅子がふたつあって、片方の椅子はお茶をする人が座る向きになっているんだけど、もう片方の椅子は向こうの景色を向いていて、そこに座っていた人はその風景の中に入っていったんだと思う。誰かが居た気配を残したいと思った。半透明のカーテンには風とか光があたって、そういうものが向こうの景色に人を誘っている感じ。川の流れを近くで見たいなぁとか、橋を渡ってみたいなぁとか、向こうは公園かな、森かな、みたいな……夢の中、みたいな雰囲気っていうか……ここで好きに過ごしていいんだよって感じとか、これから日が暮れて夜がくるときの感じとか。素敵なテーブルと素敵なデザートがあったけど、向こうにはもっと素敵なものがあって、席に座ってのんびりしたい人も、景色の中に行きたい人も、どちらの人も自由にできるように。夢の中で食べたケーキ、っていうのを想像していたら、そういうことが思い浮かんだ。あと、たまたま描いたカーテンが、水色デザインさんの空間演出の道具(白い布)にあったのが、おおっ!っておもった。おれがかいたやつだ、みたいな……。あと、みんなが貰っていたベージュ色のパール紙のチケットにしてもらったのもすごくうれしかったなぁ、飾ってもらったり、栞にしてもらえたらいいなぁ。おれもほしかったなぁ!
(そう言うと、さとこはしみじみと去って行った)
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