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読書感想-BL小説-『あなたを好きになりたくない/夕映月子』

こんにちは、falです。
今回は、夕映月子先生の「あなたを好きになりたくない」(イラスト:みずかねりょう先生)の読了記録です。

夕映先生の山BLーーー!
大好きです!
今回の「あなたを好きになりたくない」は三作目となります。
続き物ではなく、それぞれ別の主人公のストーリーです。

▼第一作「天国に手が届く」(イラスト:木下けい子先生)

▼第二作「恋してる、生きていく」(イラスト:みずかねりょう先生)

単体でもとても素晴らしいが、他作品も読んでいるとより楽しい!
それぞれ別のコミュニティに属している彼らを繋ぐのは“山”。
端々に滲み出ている夕映先生の山を愛する気持ちも味わえるのが堪らんのよ。

自分自身はほとんど山登りをしたことがないから尚更、実際に山に触れている人の文章だと感じられる描写があるとゾクゾクしてしまうよね。
行ったことのない世界・見たことのない景色を見ることができるというのは読書の醍醐味オブ醍醐味。

そんな山BLシリーズの三作目の今作は、山岳遭難救助隊員の真里谷と民間航空会社のヘリ操縦士、加賀の話。

山BLでありお仕事BLでもあったなんて!あざす
自分の仕事に誇りを持っている人、真剣に仕事に向き合っている人、まじかっけえですよね。
命がけの仕事の緊迫感と二人の恋愛模様の描写が違和感なく融合しているのすご…となりました。

好きだから、好きな人にきらわれたくない。

好きとか好きじゃないとかって、紛れもなく自分のもののはずなのに、何にも思い通りにならないよねぇ…

人間に惚れた場合、相手が受け入れてくれるかとか大事に思ってくれるかとかって自分のどうにかできる範疇にないしな。

加賀遼平という男がどんな人間かわかってくるほどに、真里谷のときめきセンサーが最高品質であることが保証されていく様を眺めるのは大変に楽しゅうございました。

山BL三作品のうち「恋してる、生きていく」の梓と穂高が特に好きなので、最後に収録されていた「in love」の挿絵を見た瞬間歓喜の声をあげたよ。
楡生〜いつか行ってみたいロテル・ドゥ・ラ・モンターニュ。

メインの方々全員登場でファン垂涎ものでした。
また全部読み返したくなってきた!

山好きな方も、そうでない方もぜひ!


▼これよりネタバレあり




加賀さん、かっこつけているようで自然体なのが魅力溢れてたな〜。
過酷なレスキューの仕事を「実力試しのついでに〜」とかいう発言について、カッコつけとか照れ隠しとか言われてバレちゃってんのかわいいじゃん。

チャラチャラのかっこつけに見えて、大事なことはきちんと言葉にして心の中を見せてくれるからいい男なんよ…
(それでも真里谷は十分弄ばれてたようだが)

仕事へのリスペクトがそのまま恋になっていったとして、なんの不思議もないことなのに、真里谷がああまで頑なに自分の気持ちを拒否してしまったのは彼を取り巻く社会のせいじゃん…って思って悲しかったよ…
あんな飲み会も無くなってくれ〜

山やヘリと同じくらい大事ってことが、どんだけの愛か分かり合えるの堪らんな。
恋のときめきやセックスの心地よさよりも、何よりもまずお互いの人生で譲れない根幹の部分をリスペクトしあっている関係って尊。
もしも究極の選択を迫られるような事態に陥ったら、互いに山やヘリをとるだろうことを了解しあっているような雰囲気もあって最高す。
(そんな事態には俺がさせねえという加賀さんの声が聞こえてきそう。)


山BLシリーズで共通しているのは、“一緒に生きる“ってことを考えさせてくれるところ。

山に登っていなくとも、病気でなくとも、いつ命を失うかなんてことは誰にもわからないことなのに、いつか必ず失われるものだということを、つい忘れちゃうんだよね。

命そのものを愛おしむ姿はやはり胸に深く刺さってくる。
生きているだけでいい、何をしてくれなくても、ただ一緒にいてくれるだけでいいと愛し愛される描写は私にとって最強ヒーリングです。

命愛してこ。

末永く、どうか最期まで共に、お幸せに。

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