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意外と知らないコスプレの著作権。パロディ系コスプレAVも著作権違反?

2021年1月24日(日)、突如「コスプレ著作権ルール化へ」という見出しが各メディアでも大きく取り上げられました。これにより、戦々恐々としているコスプレユーザーや同人AV監督もいらっしゃることでしょう。

コスプレ著作権ルール化へ 政府、海外展開を後押し
アニメやゲームのキャラクターに扮するコスプレに著作権使用料が要るの?―。政府は、海外にも人気が広がるコスプレが著作権トラブルになる事態を防ぐため、ルール整備に乗りだした。利益が出た場合、著作権法との関係が曖昧なためだ。日本文化を海外に売り込むクールジャパン戦略の柱として期待しており、積極展開を後押しする。

 日本アニメは海外のファンが多く、コスプレイベントも増えてきた。コスプレが非営利目的なら著作権法に抵触しないが、写真をインスタグラムなど会員制交流サイト(SNS)に投稿したり、イベントで報酬を得たりすれば、著作権侵害に当たる可能性が出てくる。(共同通信 1/23(土) 18:58配信)

このニュースを受け、コスプレしたら著作権違反なの?同人AVなどはどう取り締まられるのでしょうか?などの質問を多く頂戴しています。

そこで一旦出ている情報の取りまとめと、コスプレのどのような行為が現状の著作権などに深くかかわってきているのか、また、同人AVなどにおける作品(パロディなどを含む)について、詳しく解説していきたいと思います。


UGC時代の今後の著作権法の在り方を党内担当者として精査、表現の自由を守る

オタクの味方、山田議員も携わっているという本件。
山田氏はUGC時代における著作権の考え方について整理していくことが主な狙いであると主張しています。

用語:UGC(User Generated Content)
各種SNSやインターネットプラットフォームで展開される、テキストや画像などのコンテンツを指す。

コスプレイヤーはひとまず安心してもよい

何が何でもコスプレを取り締まるための法律を整備するといった内容ではなく、山田議員も「萎縮のないようにする」と伝えているように、あくまで表現の自由をどのように守っていくのかを規定を考えているという状況です。

皆様が安心してコスプレを楽しんでいただけるよう法整備を行います、と捉えても良いでしょう。
これにはコスプレに伴う著作権トラブルについて明確にしておく必要があります。それについて今から協議を始めますという段階ですね。

今のところは、法整備後の厳格化の気配はなさそうですので、コスプレが処罰されるなどの大事にはなっていません。

実は明確になっていなかったコスプレの著作権

コスプレには多くの権利が伴っているというのをご存知でしょうか。
主に、複製権翻案権私的複製などが挙げられます。少し基本的な部分から解説していきます。

複製権(ふくせいけん)<コピー>
著作権法(2条1項15号)内に定義されています。これは有形的に再製することを指します。平たく言うと「まるパクりはいけません」という法律です。

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著作物をそっくりそのままコピーして売ったりしたらダメ

翻案権(ほんあんけん)<アレンジ>
同じく、著作権の支分権の一つであり、著作物を独占排他的に翻案する権利を指します。(著作権法2条1項11号、同法11条、同法27条)
複製権が著作物をそのままの形で利用するものなのに対し、翻案権は著作物を用いて新たな著作物を創作する権利です。平たく言うと「アレンジしてはいけません」という法律です。

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構図や色を変えた!などのアレンジは翻案権の侵害です

現物にインスパイアされて、全く新しいものを作るのはOKです。これは、アニメや漫画などのサブカルチャーの世界ですと「トレス事件」などがこの手のトラブルですね。原作となる写真をトレースしたり、ちょっと構図変えたりするというのが翻案権利の侵害ということになります。

コピーとアレンジの区別の仕方
コピーの場合
▶他人の作品の「個性」を同一的に維持したもの

アレンジの場合
▶他人の作品の「個性」を維持しつつ
 新たな個性を付け加えたもの

私的複製(してきふくせい)<趣味の範囲でコスする>
自分自身や家族など限られた範囲内で利用するために著作物を複製することができます、ということが著作権法第30条に明記されています。したがって、個人でコスプレの衣装を作成し、それを着て、ごっこ遊びをするのはOKということです。

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ハロウィンやクリスマスイベントなど

このほかにも、コスプレ衣装には様々な権利がかかわってきます。意匠権上演権公衆送信権送信可能化権などです。特にSNSなどで、撮影した写真などをアップロードする行為は送信可能権の侵害になるなどが考えられます。
また、コミックマーケットなどの大型イベントでのコスプレ撮影会が良い例ですが、不特定多数が集まる大規模イベントは「私的利用の範囲」を超えるため、法律上はアウトとされています。

このように、確かに、細かく法律をつついていけば、どれも侵害になります。かといって、細かく処罰されるなんてこともありませんでした。これまでに大きな著作権トラブルにならなかったのは法律的にはグレーだったからなんです。

今回のルール化においては、このあたりがひとつの焦点となるのではないでしょうか。

コスプレでアウトな行為は何?

コスプレにおける著作権が非常にあいまいな存在であったことが伝わったかと思います。そんな中でも、はっきりとアウトとわかっていることがあります。

それは売るという行為です。

ここまでの説明で、アニメやゲームのキャラクター衣装は芸術性が高く創造的であれば著作物と判断されるという点、著作物の複製物でも自分で作って着て楽しむ分には問題ないという点についてお話してきましたが、では、キャラクターの衣装を作ったり販売したりすることは許されるのでしょうか。

キャラクターの特徴的な服装をそっくりに真似て作るのは、著作物の複製、翻案と判断される可能性があり、著作権の侵害、または著作権侵害のほう助に当たります。著作物の複製権、翻案権を犯して製造された衣装を販売すると、譲渡権の侵害にもなりうるわけです。

実際のコスプレショップを例に説明いたしましょう。

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楽天のコスプレショップから無作為に検索して出てきたコスプレ衣装ですが、こちらは、大人気鬼滅の刃から竈門禰豆子を模した衣装になります。
ここで重要なのは、商品や商品名に「(C)〇〇」と、クレジットが表記されているのか、です。この(C)はCopyright(著作権)の頭文字です。
このコピーライトは様々な方々が所持しています。
鬼滅の刃では、作家名の吾峠呼世晴、出版社である集英社、またグッズ販売権を持つアニプレックス、映像を担当したufotableなどです。
それの企業の表記がしっかりなされているかがポイントとなります。

残念ながら、こちらの衣装に(C)マークを確認することはできませんでした。そのため、鬼滅の刃を語り販売する行為は著作権侵害という扱いになります。

しかし、ちょっと待ってください。
この商品名、よく見ると…

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禰豆子「風」という表記が。
販売者側からすると鬼滅の刃をモチーフとした衣装であることに違いはないが権利を侵害するものではない、という主張とも取れますね。色や形など本元と微妙に変化させるなどして侵害行為を免れようとする工夫ということです。しかし、これはアレンジ。すなわち翻案権に該当する可能性が高く、万一訴えられるなどすると言い逃れが厳しい感じです。

版権元に無許可で著作物を複製するなどして、それをビジネスとすることが侵害行為となり、処罰の対象となります。

著作権侵害は「原則として親告罪」

仮に事実として著作権侵害していたとしても、著作権は「原則として親告罪」。
版権所有者が「告訴」しない限りは罪に問えないというのが現在の法律の仕組みです。

用語:親告罪
親告罪とは、事実が公になることで、被害者のプライバシーが侵害されるなどの不利益が生じるおそれがある犯罪被害、および、介入に抑制的であるべきとされる親族間の問題など、被害者による告訴がなければ公訴を提起(起訴)することができないと定められた犯罪のことをいいます。

親告罪の種類
・名誉毀損罪や侮辱罪
・ストーカー規制法違反
・信書開封罪、秘密漏示罪、過失傷害罪など

主に被害者の権利が侵害されるなどの不利益が生じるおそれがある犯罪のことを指します。

つまり、これらの違法な作品や商品が世の中に多数あるというのは、これら親告罪が大きく影響している部分があると筆者は考えています。

わかりやすく言えば、メーカーや版権元から「大目に見てもらっている」ということです。結局のところ「限りなく黒に近いグレー」とも取れます。結局のところ「限りなくクロに近いグレーゾーン」と考えるべきでしょう。

そして、さきほど「著作権侵害は『原則として親告罪』と書きましたが、それはなぜかというと、平成30年の著作権法改正で、著作権侵害が、

①対価を得る目的または権利者の利益を害する目的でなされた
②有料で提供または提示されている著作物等を、原作のまま譲渡・公衆送信するか、もしくはこれらの目的のために複製した
③権利者が有料で提供または提示されている著作物等を提供または提示することで得ることが見込まれる利益を不当に害した

という3つの要件を「すべて」みたす場合には、「非」親告罪(著作権などの告訴がなくても起訴できる)となったからです。

さきほどの「禰豆子風コスチューム」でいえば、①と③は満たしていますが、②はあくまで翻案ということで満たさないので、親告罪のままですが、親告罪だからといってOKではなく、あくまで著作権者らに「大目に見てもらっている」ということを忘れないでください。

コスプレ系AVのリスク(大手AVメーカーの場合)

実は、大手AVレーベルやメーカーではコスプレ系AVは禁忌とされているジャンルのひとつです。やっぱりどこも著作権侵害などのトラブルは避けたいんですよね。そんな折、業界のタブーに一石投じているメーカーがあります。

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