あのお方【お題：閏年 ＃シロクマ文芸部】

閏年が今年もやって来た。１日足さないといけないのだが、いつもギリギリになってから暦たちは大騒ぎをする。

「どうしよう。１日ずれちゃう。」
「このままだと世界中が大パニックに陥っちゃうよー。」

「拙者でよければ何なりと申せされよ。」

「あっ、あなたは。また来てくれたんですね。」
「本当にありがとうございます。いつもの通り１日だけ、こちらの２２９番の椅子に座っていてください。」

「よかろう。お安い御用だ。」

こうして、どうしようもなく困ったときに現れる侍口調の紳士により暦は守られた。

「おかげで助かりました。こちら些少ではありますが…」

「いや、礼には及ばぬ。それでは失礼する。」

「いつも颯爽と現れて、お礼も受け取らずに帰ってしまわれる。」
「僕たち助けられてばかりだね。」
「それにしても、あのお方は普段どこで何をしてるんだろう？」

おしまい。

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