Rana 3 Moonlight Serenade

「Rana、今日は月が綺麗だ。満月だよ。そこから見えるかな」
「照明がなくても明るいね」
「こんな月の夜は思い出すな」
「いつも僕の母親は僕を殴っていた」
「満月の夜はとくに酷かった。月の引力が潮の満ち引きに作用するように人間にも影響があるんだろう」
「とくに僕がどもったら殴ってたな。なんでだろうね、コントロールできないんだ。緊張しているわけでもない。でもどもったらいけないという緊張はあるのかな。悪循環だね」
「英国王のスピーチっていう映画がある。イギリスの王のジョージ6世の話だ。エリザベス女王のお父さんだね。Albert Frederick Arthur George。彼は左利きの矯正で吃音になったらしい。吃音は原因も治療法もはっきりしないんだ。言語療法士と一緒に訓練してね、名スピーチをするようになる」
「そういえば僕も決まった言葉ならどもらないかな。俳優にも吃音者は多い。サミュエル・L・ジャクソンとかね。パルプ・フィクションでは聖書を読み上げる殺し屋を演じた。アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたんだ」
「僕もちょっと喋りすぎだね」
「君には聴こえているのかな」
「さっきのやつで鼓膜が破れたかもね」
「僕の友人で医者がいる。そいつにここで診てもらおう」
「君はここから出すわけにはいかないんだ」
「やっと手にいれたんだ。特別な宝石みたいだ。
誰にも奪うことはできない」
「僕はいままで奪われすぎた、何もかも」
「だから君のことも奪ったんだ」
「僕は地獄行きだね」
「君は天国に行くよ。こんなに天使みたいなんだから」
「愛してる。Rana」


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