SOBGIT2s 1 Beat generation

「スイって何て字だっけ。お前の名前」
「翡翠の翠だよ」
「へえ。翡翠ってなんか青っぽいやつ?」
「深緑かな」
「お前の眼もなんか緑がかってるよな」
「うち両親ハーフだから」
「ふうん」
「もう死んだけど」
「あそ」
「リョウってどんな字だっけ」
「完了の了だよ。終わり」
「終わり、か」
「お前姉ちゃんいたよね」
「うん。葵」
「姉ちゃんいま何してんの」
「なんか特殊な店で働いてる。風俗かな。僕だけもよく知らない。小遣いはいっぱいくれるよ」
「だからこんなに違法のモノ買えるんだ」
「そだね」
「お前可愛いね。顔が綺麗。女みたい。女でもなかなかいないよね」
「そっかな。いろんな混血だと見た目はよくなるとか聞いたけど。リョウは僕の顔しか見てないんだろね」
「躰も好きだよ。めちゃくちゃやってるじゃん。
すげえいいよ。その辺のブサイクな女とやれねーわ」
「リョウらしいなあ」
「好きとか言われたいの?」
「ちょっと、ね」
「好きだよ。すげー愛してる。結婚しようぜ」
「いまのこの国じゃできないんじゃない」
「じゃ、外国行ってさ」
「僕英語とか喋れないな」
「そんな見た目なのにね」
「うん。いちいち日本語上手ですねとか言われてさ、本当にうっとうしい。もっとNYとかならそんなこと言われないのかな。人種の坩堝でしょ」
「いいなアメリカ。俺ルート66をバイクで飛ばしたいな。ビートニクとか好きでさ」
「何? それ」
「50、60年代にかけてさ、アメリカであったの、そういうムーブメントが。ジャック・ケルアックとかバロウズとかさ」
「知らないなあ」
「作家だよ。お前本とか全然読まないもんね」
「字とか読んで楽しい? 音楽のほうがいいな」
「ビートニクは音楽にも影響与えてるよ」
「どんな?」
「ボブ・ディランとかそうなんじゃない」
「結構好きだけど」
「検索してやるよ、ほら。beat generation……ビートニクだね。人生に望みを失い思想・音楽・空想ざんまいにふけったり異様な服装をしたりして気ままにふるまう人たち、だって」
「望みかあ」
「俺はお前とさ、ルート66を一緒に走りたい。タンデムでもいいしね」
「なんかロマンチストだね」
「そう?」
「キスしたいな」
「いいよ」

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