勝手にしやがれ 3 end.
レイカは俺のモノを踏みつけてきた。珊瑚色の口紅とおなじ色が塗られた足の爪。ボクサーパンツ越しにぐりぐりと踏みしだいては蹴る。
「あっああぅ……」
「すごいね。びんびんだ。恥ずかしいね、パンツが染みになってる」
どんどん出てくる俺の先走り液。上半身は紐で
縛られて床に転がされている。俺の家にあったビニール紐。ああ、お前もダイソーで買われたときはまさか買ったやつを拘束するハメになるとは思わなかったろう。四半世紀も生きているといろいろなことがあるものだ。
「パンツ脱がせちゃうね」
「うう……」
脱がされるグレーのボクサーパンツ。びん、と屹立する俺のモノが勢いよく飛び出た。
「あ〜すっごい。若いっていいね」
「……レイカさんっていくつなの?」
「さあ」
口に含まれる。ぬめぬめとした口腔。ああ気持ちイイ……。
「あ、出ちゃう……出していい?」
「まだ駄目だよ」
「あ、後ろは……後ろは駄目」
「ふふ、可愛い」
ああこんなこと……恥ずかしい。めっちゃ恥ずかしい。
そして気持ちイイ。あ、もう駄目。やめて。
え? それ何? やばい、やばいって。ちょ、待って、それ。
あ、ああ、あああああああああああああああ…………。
俺はどうなったか。いくら何でもここにはかけない。ネットリテラシーというものがあるだろう。ここは確かわりと健全なサイトだった筈だ、知らんけど。
いくらなんでもこれは……やばい。相当やばい。こんな世界があったのか……。何か新しく生まれ変わったようだ……知らんけど。
レイカはいつも通り煙草をふかしながら言った。細長いヴァージニアスリム。吸い殻についた珊瑚色の口紅。
「ふふ。だいぶよくなってきたよね。やっぱ君って調教しがいがあるわ」
「……勝手にしやがれ」
「勝手にしてくださいご主人様、でしょ?」
「…………」
「返事は」
「……わん」
「よしよし」
レイカって何歳なんだろう。どこに住んでるのか。見原レイカって本名なのか。レイカは持ってきたライカで俺を撮った。
「わ、何?」
「大丈夫、目線はいれるから」
「目線?」
「あたしフォトグラファーなのよ。緊縛写真とかも撮ってる。エロだけじゃないけどね」
「え、そうなの」
「初めて見たときからこの子いいな、って思ってたの。君スタイルいいしね。イタリアングレーハウンドみたい」
何だ、クラブでお持ち帰りしたと思っていたけどお持ち帰りされたのは俺のほうだったのか。レイカは裏表紙にLEICAと殴りかいた雑誌を開いた。
「ほら、これあたしの写真」
「あ、そうなんだ」
男性向けのライフスタイル誌。俺は毎号買っていた。捨てるときはビニール紐で縛って。まさか俺まで縛られるようになるなんて。
そこにはPhoto by leica miharaとあった。
「本名なの? これ」
「どうでしょう」
レイカはにっ、と笑った。
いい写真だな。どうってことのない公園の風景。芝公園かも。そして綺麗な外国人モデルが
芝生のうえで寝転んでいる。クリアで、伸びやかな写真だ。俺は写真のことなんてよくわからないけど。
「今度野外で撮ろうか」
「やめてよ」
「興奮するよ?」
「ええ……」
「ね?」
「……勝手にしてください」
「よしよし」
頭を撫でられる。もう俺はレイカでないと駄目かもしんない。
でもそれも悪くないかもしんない、そんな気持ち。
end.
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