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寒冷地での服装について(マイナス25~マイナス5度)

2021年-2022年の年末年始、日本最北端での年越をむかえるために僕は北海道を1週間ほど野宿ツーリングしていた。この記事ではそのツーリングの時にどのような服装をしていたのか書いていく。知識のある方や、北海道よりも寒い場所でツーリングしてきた知識豊富な方からすればだいぶおかしいと思うところもあるかもしれないが、自分なりに自分自身が体験したことを備忘録という形で残していきたいと思う。

~自分にはどんなウエア構成が良いか~

まず僕の寒さに対する耐性やどんな体質の体なのか軽く説明したいと思う。人によって代謝は様々なので当然服装に対する考え方も変わってくるかもしれないからだ。基本的に僕は寒がりで長野の冬の室内でこもって生活するときには暖房がないと生きていけない。ダウンなどを着こめば耐えれるけど、足先指先の末端が寒さに時に弱いのだ。しかし運動して一度体温を上げてしまえば比較的寒い場所でも活動は出来る。(当たり前かもしれないが)多少寒くても10分ほど漕いでいれば体は温まってくる。つまり平常時に温かいウエア構成にすると運動時にとても暑く感じる。そして僕は汗かきである。夏場はちょっと外を歩くだけで木綿のTシャツに地図が描ける。簡単に言うと体育の授業でよくいるめっちゃ汗かきな奴といった感じだ。ざっとこのような体質の自分が行ったウエア構成についての説明である。ここからわかるのは運動時には温度が上がりにくく、かつ汗をなるべく体から離しドライに保つことで汗冷えしないようなウエア構成が必須だ。僕が使ったのは一般的に言われているレイヤリングシステムに加えて手の指先と足先は”あえて蒸れを起こさして飽和状態にさせる”VBLというレイヤリングである。

レイヤリングシステムとはウエアの構成をインナー、ミドルウエア、アウターウエアの3層構造にしてインナーで汗を体の表面から離す→ミドルウエアで保温しつつ蒸れをさらに体から離す→防風性・防水性のあるハードウエアで外界からの冷気をシャットアウトしつつ透湿性のある素材でミドルウエアからの蒸れを外界に放出する、といった考えのもと構成されたものである。これは登山などでは一般的に行われていることである。

そして末端が冷えやすく汗冷えしやすい僕が使ったもう一つのレイヤリングが末端をVBLにするというものである。VBLとは体から出る水分を一切外に出さずに肌の表面にとどめていくことで、シューズや手袋を濡らすことなく保温性を保つというものである。どうしても衣類は濡れると保温性が落ちてしまうがVBLは衣類をドライにでき、さらに気化熱による冷えが無くなる。実際に僕はニトリル手袋の上からグローブをしたりビニール袋を履いた上から靴下を2枚重ねで履くなどしていた。靴下はX-socksというスキー用ソックスでふくらはぎまで保温しつつその上からモンベルのメリノウールの靴下を履いた。(写真下↓↓)

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残念ながらビニール袋は簡易的な物にしかならず、1日走ると親指の爪の部分に穴が開いてしまうが、それでもシューズ内の濡れ防止には十分役に立った。ネオプレンでできた靴下を履くのが本来は好ましいと思うが、シューズを履いた際にきつくなってしまうのではないかと思い購入はしなかった。他にも手足をVBLにしておいて他によかったこととしていくつか挙げてみる。手袋を外して作業する際にニトリル手袋だと素手よりも多少暖かいということと、手が乾燥しにくいということがある。基本テントを張るときもずっとグローブは外さないが、調理器具を使う際にどうしても外さなくてはいけないことがある。そんな時にゴム手袋だと便利だ。足をVBLにしてよかった点やはりシューズが凍らないということだろう。寝てる際は靴を脱ぐのだが、靴が濡れていると寝ている間に凍ってしまい朝出発するときに本当にひどい思いをする。ところがVBLにしてシューズが濡れないようにしておくと、寝てる間にシューズを適当に放っておいても翌朝苦労することは無くなる。ただVBLにも欠点はある。それは主に足に言えることだが、寝てる間はVBL用のビニール袋を脱いだほうが良い。蒸れた状態をずっとキープすることになるのでそのまま長時間いるとどんどん足がふやけてしまうのだ。結果として雨の中1日中走ったような状態になり歩くたびに足の皮が痛むといった状況に陥る可能性がある。冬山登山をする方の記事を見ると寝る間はネオプレンソックスからウールのソックスに履き替えるという情報を目にした。保温効果の高いレイヤリングだけど、使用する状況を考えておくことが重要である。ここで僕が使ったシューズを紹介(写真下↓↓)

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フィジークのARTICA X5というSPDのウインターシューズである。このシューズには使用に適した温度が記されておらずまた裏起毛でもないためメーカーの想定している温度はせいぜいマイナス5度くらいなのではないかと思っている。実際北海道では走行中にマイナス25になることがあったが、先ほどのレイヤリングに加え、ネオプレン製のシューズカバーをつけることによって凍傷になると思うくらいに冷えることはなかった。しかし一応言っておくと温かいということでもない。止まると体温がどんどん冷える&地面を歩くと地上から熱が奪われるので寒い時ほど漕ぎ続ける必要があった。

~実際に僕が着たウエア~

実際に僕が着たウエアが写真下である↓↓マイナス25度でもこの構成だ。

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左:インナーウエア→モンベルジオラインの中厚手シャツ、ジオラインの極厚のタイツ

中央:ミドルウエア→フリース(ノースフェースのバーサミッドジャケット)、ニーロングのフリース素材タイツ(モンベルのトレールアクションニーロイングタイツ)

右:アークテリクスのジャケット(ゴアテックスパックライト)、アークテリクスのアルパイン用パンツ(ゴアテックスプロ)、反射ベスト

まずはインナーから。インナーはモンベルの速乾性と防臭性に優れたジオラインの物だ。モンベルのインナーにはスーパーメリノウールのインナーもあるが、発汗量の多いアクティビティにはジオラインが良いと判断した。速乾性は本当に素晴らしく、保温効果も備えた素晴らしい製品だと思う。僕がシャツを中厚手にした理由は上半身のほうが汗をかきやすいから。しかし欠点もあり、ウエストの細い自分には腰回りがぶかぶかする。前傾姿勢になるとお腹とシャツの隙間に空間ができて汗を含んだシャツがお腹に当たるたびにヒヤッっとする。またほつれやすいので、指にささくれのできやすい僕が使うと引っかかって繊維が出てきてしまうことも多々ある。

続いてミドルウエア。上着はノースフェースの物を使用。値段のだけあってこのフリースは本当に温かい。そして汗の排出が早い。フリースの表面の細かい毛の部分に恐らく毛細管現象で汗がすぐに吸い上げられるのだろう。またモコモコな素材なので温かい空気の層を作ってくれて多少あせの排出が追い付かなくなってもヒヤッとした感覚がない。本当に素晴らしいとしか言いようがない。ただこのフリース自体には防風性は全くないと言っていいのでこのフリースを外側に着て走ることは出来ない。それくらい通気性が良いと汗の排出も早いのかもしれない。そして僕は下半身にもミドルウエアを着ていた。自転車の場合、下半身にミドルウエアを履く人はあまり見かけない。しかし僕の個人的な感触だとジオラインとハードシェルの2層だけだと保温してくれる層が足りないと感じた。足は基本的に動きっぱなので冷えにくい部分ではあるけど、僕は膝痛持ちで筋肉をジワジワ冷やすようなことはしたくなかったのでミドルウエアを使用した。中々フリース素材のズボンは見つからなかったものの、モンベルがニーロング(膝下までの長さ)のフリースのタイツを出してると知って即購入した。使用感としては若干汗の乾きが遅いかなという感じ(ノースフェースのフリースに比べて)しかし寝てる間に体温で乾くので北海道においてとても頼もしいウエアの一つとなった。

最後にアウターウエアについて。アウターは冷気や雪をシャットアウトするという重要な役割を持っている。僕が使ったのは上下ともにアークテリクスのゴアテックスのハードシェル。残念ながら商品名は分からないが上着はゴアテックスパックライト、パンツはゴアテックスプロの記事を使っている。上着に関して言うと実は真夏の日本縦断の時にレインウエアとして使ったものである。冬山登山をする視点から見ると恐らく極寒な環境では不向きな素材のウエアだと思われる(ゴアテックスと言っても色々素材に種類があるのがややこしい)。僕の使っていた感触からすると別にそこまで使い勝手が悪いとか不満があるといったわけではなかったけれど2レイヤーの生地なので(冬山登山用のハードシェルと比べると)多少熱は通しやすいと思う。また内側がつるつるでペラペラな生地なので写真の様にミドルウエアが放出した湿気を内側で凍らせてしまうといったことが多々あった。↓↓

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こうなってしまうと湿気を外界に排出できないのでコンビニ休憩の旅に手で凍った水分をはらう必要があった。このようなことはマイナス10度を下回った時によく見られた。次にパンツについて。パンツはアルパイン用の物ゴアテックスプロの厚めの生地でできている。ビブタイプでおへその少し上までの長さがあり、下から吹き付ける冷気もシャットアウトできる。アルパイン用だとだいぶシルエットが細くなるようで自転車との相性も悪くない(少なくとも冬のツーリングでは)。アークテリクスの特徴の一つとして体の動きに沿った生地のカット、縫い合わせがされており、ペダリングで足が上下に動く状況でも伸縮性の少ないゴアテックスのツッパリ感といったものもなかった。マイナス25度のような状況でも不満は全くない。

以上僕が年越し宗谷岬で使用したウエアについてまとめてみた。何かの参考になれば幸いである。


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