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ドラマ3話-5(試訳)+参考図書紹介

〇程府前(程氏の屋敷、門前の通り)
通りを画面奥からやってくる曹司令官一行のようす

〇奥の間、前
韓総監:旦那様旦那様、司令がお越しになりました。もう、官兵が並んでいます。
程鳳台:商さん、この機会が成功するか否かはあなたの本気次第だ。
商細蕊:(笑って)とくとご覧あれ

〇門
程鳳台:お義兄さん、ついにいらっしゃいましたね。お待ちしていました。
曹万钧,司令:待っていただと?車の中からお前の様子を見ていたぞ。
程鳳台:そんな風に言わないでくださいよ。外にいては冷えますよ、風も強いし。風を避けていたんです。さ、あなたも到着したことだし、中へ入りましょう。
曹司令:北平の風がお前を弱っちくしたのか?そんなことで、大きな商売をして家族を取り仕切れるのか?
程鳳台:私はもともと運のない奴ですよ。あなたの助けがあるからこそ、できる商売です。私自身の力ではありません。
曹司令:お前はまだ俺に依存しきっているつもりなのかい?(部下に合図する)さ、贈り物を運びこみなさい。
程鳳台:こんなにたくさんの贈り物を。人が見たら、婚約の品々かと思うようだ。うちには嫁がせられる二人目の姉はいませんよ。
曹司令:こっちへ。これは地面を走るおもちゃの列車だ。ウーウーウーって唸りながらだ。絶対に見たことがないぞ!
程鳳台:それは面白い。なら、私が遊んだ後で子供に譲ることにしますよ。
曹司令:こいつめ。
程鳳台:行きましょう、歩きながら話しましょう。(韓総監に)いそいで宴会を始めるように、司令が到着したと伝えなさい。
韓総監:はい。
曹司令:慌てなくていいぞ。先に話したいことがあるから。
程鳳台:足下に気を付けて。

〇屋内、調理場等裏方付近
廊下を進む范涟の後ろ姿
家人:おめでとうございます
范涟:義姉さん。
家人:おめでとうございます
范涟:何をしているんですか?そんな、ほっといて、ほっといて。あなたはここに何をしに来たんですか?
蒋梦萍:別に。手伝おうと思って。
常之新、出てくる
常之新:今日は大事な日ですから、手が足りなさそうだから梦萍と手伝いに来たんですよ。
范涟:どうしたものかな。あなた方はお客さんなのに。
常之新:どうしてお客?家族でしょ。あなたや湘儿さんに私も梦萍も良くしてもらっているのだもの、私たちもなにかできることはないかと。
范涟:だめ、絶対にだめ。これが姉さんに知られたら、私は何を言われるか。二人とも急いで着替えて、宴席に行きましょう。ぼんやりしていないで!之新兄さん、曹司令官が来ているよ。あなたは政府の仕事をしているのだから急いで行って面識を深めないと。顔なじみになれば、将来助けになる。
常之新:いやいやいや。私はそういった取り入るような付き合いはしたくないんだ。
蒋梦萍:行ってらっしゃいよ。ここは私が手伝うから。心配しないで。あなたは彼の面子も考えてあげないといけないわ。
范涟:義姉さん、そうともさ。彼ら程家の大尽ぶり。見てごらんよ、働き手はいるし、あなた方が必要ですか?まだ、言い張るなら怒りますよ。急いで、行きましょう。
常之新:いや。
范涟:急いで着替えて、さっさと脱ぐ!
常之新:わかった、わかったよ。
范涟:さ、さ、さ、行こう!

〇宴会場
程鳳台:うちの若いのが北方から持ってきた野生のハシバミです。体にいいらしい。食べてみてください。
曹司令:あまり食べつけないなあ、食べても少しだ。おならが出てしょうがない。
程鳳台:好きでないなら、私のためにとっておきましょう。
曹司令:私はお前に親切なのに、お前は私に不親切だな。
程鳳台:そうだ、今日は息子さんは来ないのですか?
曹司令:あいつのことは言わないでくれ。曹贵修、ろくでなしめ。(程鳳台を見て)どうした?
程鳳台:お義兄さん、そう言うことを言ってはダメですよ。何を言い出すんですか?自分で自分を罵るようなことでしょう?。
曹司令:あいつには、ずいぶんと金をかけて、外国に留学までさせた。将来帰国したら私を助けてくれるだろうと期待して、だ。それが、あいつめ、戻ってきたら(长脾气了)。事あるごとに私に盾突く。ついこの前もよくわからない連中に会ったよ。
程鳳台:よくわからない?それはどういう人ですか?
曹司令:わからん。しかし、非常に危険だと思えたよ。良くないというのは、連中は弾丸のような存在だ。あいつが唯一の息子でなければ、とっくに撃ち殺しただろうよ。
程鳳台:これはどうです? うちの姉と、子供を作ってみる。やってみて、もし息子が生まれたら、曹贵修には退いてもらう。
曹司令:お前だから言ったんだ。お前だからあえてこう話しただけだ。
程鳳台:お義兄さん、あなたは私にでさえ、こんなに良くしてくれます。なのに、息子にはとても厳しい。実の親子なのだから、許せない仇同士であるまいし、時間を見つけてよく話したら良いですよ。
曹司令:話すものか、あいつの言うことは私を怒らせるだけだ。あいつの話はやめよう。鳳児、子供を連れてきて、見せてくれよ。
程鳳台:お義兄さん、その呼び方は。どこからそんな子供のころの呼び名が。人が聞いたら笑われるのは私だ。
曹司令:鳳児、鳳児、鳳児。
程鳳台:あなたが楽しいならいいけど。ミルクのみ人形のなにがそんなに良いのやら。お義兄さん、後で良いものをお見せしますよ。
曹司令:どんなものだ?
程鳳台:先に話しますよ、私は大慌てしたくないのでね。あなたは絶対に怒ってはいけません。もし怒り出したら、彼を出しませんからね。
曹司令:彼?誰だ?
程鳳台:商細蕊です。私は彼をこの宴会に招いています。
曹司令:商細蕊、平陽のあいつか。
程鳳台:今、巷であなたと彼の仲が悪い、仇同士だとうわさがあって、北平の劇場はどこも彼を舞台に立たせない。のけ者にされてどうにもできず、彼は困っています。
曹司令:商細蕊は一介の役者に過ぎない。どうして私の敵になるのか?
程鳳台:もちろんです。しかし私も本当のことを知りません。お義兄さん、もし本当なら私は即刻彼を放り出します。もし、バカバカしい噂に過ぎないなら、今日ここであなたの為に歌わせて、改めて詫びさせます。
曹司令:忘れていいよ。あいつの性格はわかっているから。感心するほど頑固な奴だ。跪いて謝るなんて、忘れていい。蒸し返せば、奴は一発でお陀仏だ。(祝いの席で)不吉だろう?!まあそれなら、しばらくぶりの京劇だ。ずいぶんとご無沙汰だったな。そうとくれば、何を置いてもまず「秦腔」だ。
程鳳台:かしこまりました。
韓総監:旦那様
程鳳台:商さんに伝えてくれ。何か少し食べたら、支度をして「秦腔」を歌うように。

〇奥の間、水雲楼控室
商細蕊:今ごろ「秦腔」に変えろと言われても。衣装の支度をしていません。まさか「紅娘」の衣装で「包公」を歌うわけにはいかない。笑いものになってしまう。
韓総監:急なことで。しかし、曹司令官自らのご要望ですから。旦那様もダメとは言えません。商さん、あなたも今日のお祝いの席のために頼みますよ。
外の声:韓総監!早く来てください、ご指示を仰ぎたいことがあります。
韓総監:ああ、今行くよ。
商細蕊:わかりました、行ってあげてください。なんとかします。
韓総監:それと、お料理をお持ちしました。皆さんで軽く召し上がってください。では、失礼します。
大圣:曹司令はどこに行っても曹司令だよな~。そのために何が要るのか、知っているはずなのに、気が利かない。あ、もも肉もらいっ!
商細蕊:どう思う?何か思いつく?衣装なしで歌うか?!
小来:ええ、私もそう考えていました。
商細蕊:これ、この食事はイマイチだな。僕にいつものを頼むよ。
小来:はい、もちろんです。
大圣:じゃあ、これは俺が食べちゃうよ。
商細蕊:うん、食べといて。

〇屋外、渡り廊下
程美心:覚えておいて。そうだわ、持ってこなかった。
韓総監:お嬢様お嬢様!
程美心:どうしたの?
韓総監:お嬢様、曹司令が既にお越しになられています。旦那様がお話相手をなさっています。
程美心:わかったわ、厨房を見てから行くわ。彼にすぐに参ります、と伝えて。
韓総監:はい。
(小来が通り過ぎる)
程美心:あら、あの娘さん、誰だったかしら、見覚えがある。誰が奥にいるの?
韓総監:旦那様が招いた劇団の人たちです。
程美心:どこの劇団?
韓総監:水雲楼。
程美心:え?ちょっと訊くけど、奥さんの従兄夫婦は招待してる?
韓総監:はい。ご招待しております。
程美心:大変だわ!
韓総監:こ、、これ、、、

<3-5 3話完>

2021年5月からDVDの発売やBSでの放映が日本で始まります。なので、この翻訳チャレンジも3話までで終わりとします。また別の作品の字幕翻訳に挑戦する予定でいますが、一旦は筆を置く区切りとして、翻訳のために参考にした書籍をご紹介します。

蛇足ながら、翻訳のベースにしたオリジナル字幕は愛奇藝国際版「鬂辺不是海裳紅」です。

1、「中華電影的中国語 さらばわが愛 覇王別姫 中国語日本語対話シナリオ集」陳凱歌著 水野衛子訳 キネマ旬報社刊 1996.5.初版

2、「中国語で歌おう!まるごと京劇編」山下輝彦著 アルク刊 2005.9

3、「京劇鑑賞完全マニュアル」趙暁群・向田和弘共著 好文出版刊 1998.2初版

4、「京劇への招待」魯大鳴著 小学館刊 Shotor Library 2002.2初版

5、「京劇「政治の国」の俳優群像」加藤徹著 中公叢書 中央公論新社刊2002.1初版

6、「京劇と中国人」樋口克夫著 新潮選書 新潮社刊 1995.9

7、「中国古典からの発想 漢文、京劇、中国人」加藤徹著 中央公論社刊2010.9初版

8、「妓女と中国文人」斎藤茂著 東方選書35 東方書店刊 2000.1初版

9、「京劇の世界 見て読む中国」徐城北著 陳栄祥・施殿文共訳 東方書店刊 2006.6初版

10、「清代中国における演劇と社会」村上正和著 山川出版社刊 2014.初版

11、「京劇俳優の二十一世紀」章詒和著 平林宣和・森平祟文・波多野眞矢・赤木夏子共訳 青弓社刊 2010.3初版

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