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ドラマ2話-7(試訳)

●梨園会館 ホール
舞台の上に「北平梨园慰问军义演筹饷大会(北平梨園の、軍を慰問しチャリティ興行により資金調達する会議)」との横断幕。
客たち:ご無沙汰してます、いやいや、お久しぶりですね。
范涟:金の奴、まったく嫌な男だ。集会を企画するだけで、私らに献金を持って来いと。どういうつもりなんだか。
程鳳台:わからないか?ここで集めた金は二通りの使い道がある。一つは、自分の懐に入れるため、二つ目は曹司令に送るため。軍への献金という名目で、自分の株を上げるのさ。
范涟:まるで泥棒だな。曹司令は北平に到着したら彼のためになにかしてやらないと、と思っているのではないかな。今だって相当な資金を送っている。司令は彼に苦労を掛けて申し訳ないと、ね。
程鳳台:よくない話だ。一つの山に二頭の虎は相容れない。金部長と曹司令、遅かれ早かれ、どちらかが倒される。
范涟:考えるのはやめよう。私たちに関係ありますか?今日ここに来たのは、我が愛する商さんの歌を聴きくためなんだから。
程鳳台:商さんも来ているのか?
范涟:もちろんさ、一番の人気役者なんだから。彼の義援公演なんて滅多にない。
程鳳台:そうか、じゃあ今日は芝居を聴くことにしよう。また君たちと一緒に行こう。私はどんどん京劇の専門家になっていくよ。
范涟:聴くのはいいけどさ、家に帰って鼻歌なんかやめてくださいよ。そうでなければ、私は二人の姉さんに引き裂かれてしまう。ホントに。

●舞台傍 あるいは楽屋寄りの隅

金氏秘書:今日の準備はどんな具合ですか?
姜登宝:ご安心ください、うちの父が金部長のよろしいように取り計らっています。
金氏秘書:それならいい、それなら。
钮白文:趙さん、いけない、趙さん!
(出て行こうとする楽師を引き留める钮白文)
钮白文:舞台を始められない、商さんはどうしたらいいんだ!
趙楽師:彼がどう考えているのか、知ったことではない。私はあの大役者に仕えていられないよ。
钮白文:趙さん、これ・・・
(騒ぎを見ている姜登宝と秘書)
金氏秘書:これは一体?
钮白文:趙さん、趙さん、始められないじゃないか!あんたが行ってしまったら、商さんは!趙さん、行かないで!趙さん、話を聞いて!趙さん、どうあっても行っちゃだめだ。
(程鳳台、范涟。金氏周辺の人々も騒ぎに注目する)
金部長:钮白文、来なさい。
钮白文:金部長
金部長:揉めてるのか?
钮白文:いいえ、いいえ。
金部長:商細蕊に伝えてきなさい。この義援公演はほとんどの人が彼の芝居のために来ている。もし揉め事を起こしたら、銃弾を喰わすとな。
钮白文:わかりました、調整してまいります。

●舞台裏手
姜登宝:(離れたところで接客中の姜荣寿に)父さん、こっちに来て。(散っていく客たちに)すみません、すみません、ごめんなさい。(父、来る)楽師が出て行ってしまったんですよ。商細蕊のために来たのに、怒りに触れて行ってしまいましたよ。彼は酒をちょっとひっかけて(舞台にあがる)なんて承知しないから、商細蕊、許されないことだ!って咎めたようで。楽師だって梨園で最高の評判なんだからちょっと呑んだくらい、どうということもないでしょうに。立つ顔が無いって、出て行ってしまいましたよ。
姜荣寿:お前は商細蕊をどうにかしたいと思っていたよね。いい機会じゃないか?

●商細蕊・楽屋
(鏡の前の商細蕊。じっと自分を見つめている。钮白文、傍を歩き回る)
钮白文:とんでもないことになったのに、どうして落ち着いていられるんですか?
商細蕊:彼は私に銃弾を喰わせると言うのであって、あなたが慌てることはないでしょう?
钮白文:冗談言ってる場合ではありませんよ。あなたに梨園会館で何かあれば、私は・・・。
商細蕊:そんな悲壮な顔をして。心配しないで。どうするか、考えてるから。
钮白文:本当ですか?
(商細蕊うなづく)
小来:来たよ来たよ来たよ!
団員たち:小来姉さんごきげんよう。
小来:来たよ~!
钮白文:この豚の煮込みを待っていたのですか?!
小来:座長はいつも飽吹飢唱(楽器を演奏する人は食べる必要が、歌う人は空腹でいる必要がある)、食べ過ぎると舞台の上で口をあけたときに吐いてしまうって言っているのだけれど、いざ自分のこととなると、それもどこ吹く風なのよね。
钮白文:小来さん、舞台に上がる前の役者はそれぞれ変な癖があるものなんですよ。たとえば、侯玉魁、侯さん。舞台前に必ずアヘンを一服します。宁九郎は宮中の規則で、舞台に上がる前に必ずきくらげと蓮の実の甘い汁ものをあがります。原小荻はもっと面白いですよ。もとは学者の彼だから、巻物の気が良いのでしょう。道徳経を読んでから舞台に向かいます。商さんは、ほんとに素朴ですね。
商細蕊:(食べ終わりゲップ)いいぞ。
钮白文:なにか思いつきましたか?
商細蕊:待って、待って。思いついたから。
(姜登宝、楽屋にやってくる)
姜登宝:商さん、父が呼んでいます。

●舞台裏
商細蕊:姜会長、もし皆の前で私が、あなたに恥をかかせるようなことをしでかしたら、今後あなたのどんな要求ものまなければならなくなりますね。
姜荣寿:そう構えなくても良いだろう。私はお前さんの師匠の兄貴分だ。いわば身内だ、身内を助けるようなものだろう。
商細蕊:僕はあなたがどう助けようとしているのか、わかってますよ。楽師を一人用意しているんでしょう?
姜荣寿:よその人は、お前さんの師匠の兄貴分が巧みな歌い手であることを今こそ知るのだが、胡琴のよき弾き手でもあることは知らない。
商細蕊:お気持ちは承りました。ご恩情に感謝します。しかし、この件は私が引き起こしたこと。姜会長にお手間は取らせませんよ。
姜荣寿:お前さんは自分がどれほど未熟かわかっていないようだね。これは、金部長の手の裡だよ。人の命など物の数にもならない。彼にはどんなことも可能なんだよ。
商細蕊:あなただって、なんでもできるのではないですか?
姜荣寿:どういう意味だ?
商細蕊:あなたのお祝いに行ったなら、あなたは人々をけしかけて私に熱湯を浴びせたのではないですか(ひどい嫌がらせをするつもりだったのではないですか?)私もあなたも、誰からも見下されることはないのに、なぜ嘘偽りに凝り固まるんですか?
姜荣寿:いいだろう、助け船がわからないようだ。せっかくの提案も消えてしまったよ。・・・小僧、うまくやれよ。
(姜荣寿、去る。商細蕊、皮肉な笑い。入れ替わりに程鳳台がくる)
商細蕊:程さん、なんて偶然。
程鳳台:商さんが歌うのを聴くつもりだったが、今はそれどころではないようだ。私と一緒に行こう。
商細蕊:どこに?
程鳳台:金の奴、悶着を起こす。
商細蕊:悶着でも何でも、起きることは起きる。
程鳳台:何も起きないうちに。うちの倉庫に数日隠れていなさい、そうすれば奴もあなたに何も手出しできない。
商細蕊:程さんは英雄で、美女を助けるのがお好きなんですね。確かにあなたは英雄だ、間違いない。でも私は美女ではない、私も英雄だ。芝居を聴きに席に帰ってください。がっかりさせることはありませんから。
(商細蕊、程鳳台を残して舞台に向かう)・・・2話終わり

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