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20201120春日屋No8、金世佳とサシで呑む(1)試訳


*20230827 中国・相方の協力のもと加筆修正しました。

始めに)
春日屋(はるひや)とは張承と房超然の二人がパーソナリティをつとめるラジオ番組です。
中国系音声APP・Ximalayaで聴くことができます。
APPにはAI文稿機能がありテキストも表示されますが、間違いも多いです。また話し手ごとに整理、表示ではないので、誰が話しているのかリスナー自身が聞き分けなければなりません。
この稿は微博で知り合った金世佳ファンのある方が好意で書き起こしてくださった文稿をもとに日本語訳に取り組みました。1時間半に及ぶ、金世佳と春日屋(張&房)の、歯に衣着せぬ野郎っこの駄弁り…かと思いきや、かなりアルコールが入っているにも関わらずシビアでディープな話が展開します。今後しばらくお付き合いください。6回くらいに分載予定。

番組パーソナリティの二人

*番組中、「春日屋」は日本語読みで「はるひや」と発音している。

1) 私たち(はるひや)は少し前に混雑した酒場で偶然、金世佳に会いました。ひょんなことから私たち三人だけが最後に残っていて、その晩は大いに語り、大いに呑み、またこういう話をしよう、という約束をしました。数日後、約束通り集まり、横店・上海・食べ物・映画スタッフ・日本・ハムレット・鎖骨・石庫門・アイドル・友人サークル事件・そして旧友の喬任梁(キミー・チャオ 1987年10月15日―2016年9月16日)など多くのことを語り合い、差し向かいで大いに呑みました。

オリジナル音声へはこちらのQRコードからアクセスできます。

張承(番組ホスト):春日屋にようこそ! あなたの名前は何ですか?
房超然(同):今日は特別です。春日屋にとって特別な酒場です。初めてベースキャンプを飛び出しました。
金世佳:ああ?本当?いつもはゲストがスタジオに行くの?俺はこの番組のためにここにいたんだけど。
房:そうそう。俺ら初めて。
張:春日屋は架空の居酒屋なんだけれど、録音スタジオは割と決まっていて。でも、今日我々は…
房:はい。ゲストの家に来ています。いやいや、我々が実際にはお邪魔しているという。
張:我々がお客。
房:お客。実際俺らの目標は、みんなの家を春日屋にすることです。
張:うん。
金:どうして春日屋なの?
張:前にも話したんだけど、この企画を思いついて始めたのがちょうど春で、それから春は人があれこれ希望を持ちやすい頃で、それから、我々ふたりともお酒を呑むのが好き。春日屋と聴いて居酒屋とかまぁ酒場を思い浮かべたのと、それからとてもお気に入りの古詩で「春日宴」に「緑の酒を一杯飲み一句歌う」っていう、、、それが想像していた雰囲気と非常によく一致していたんです。

春日宴 五代時代の溤延巳(903-960)の作。長命女・春日宴。夫婦がお互いの健康長寿を願い、杯を交わす詩。

金:春日屋(はるひや)
張:はるひや
房:もう一つの理由は、いつも良い酒場を探しているんだけど、今、特に北京では閉店が早すぎるか、いろんな制限があったり、やたら混んでたりうるさかったり。
張:禁煙だったり、ね。
房:そうそう。
張:しょうがないよね。呑んだあとって、これは。この癖がある人はとても困る。
金:はるひや、はるひや。
張:春日屋
房:○○屋って居酒屋のことだよね?
金:ya、ね。ya。
房:俺はちょっとだけ日本語を覚えたよ。
金:部屋のことを日本語でheyaって言って、yaとかheyaね。春はharu、日はhiって言って、nichiもあるけど、だけどまあ、人の名前とかタイトルだとhiって読んでるよね。
房:そのizakayaは正式名称?
張:どうしてそんないきなり詳しいの?
金:izakaya、うん、izakaya。
房:でもizakaya何々、とても少ない、○○izakayaとかさ。
金:○○yaっていうのは、まあ、izakayaはそういうものの総称で、言わないんだよ。
房:例えばマクドナルドレストランとかKFCレストランとか言わないように。
張:はい、まだ紹介していませんでしたが、今日は老張と小房はここ、金世佳の家に来ました。春日屋移動スタジオの第一歩としてこの番組をお送りします。
金:どうも、どうも。
房:お世話になります。
金:いやいやいや。
張:ごめん、ちょっと呑みます。
房:実は俺、老張と知り合ったのも酒の席で。
金:俺も一杯。
房:佳兄のことを知ったのも実はある飲み会で。
金:うんうん。何教授(何熙維)の。
張:そう。偶然にね。たまたまその日、何教授が北京に来てて。音楽の演奏で。何教授は長年の良い友人だし、ひとりで行くのも寂しいから小房を呼んで一緒に見に行ったんだよね。
房:思ってもいなかった…
張:そう、行った先でたくさんの人に会えるとは予想外で。老何も映画を撮っていて、その後、以前「国家行動」という映画の助監督・シスター西西…
金:ああ、はいはい。高群書監督。
張:はいはいはい。西西姐は実際に私の運命を変えてくれた人です。あの時の出来事。
金:変わったのは、老何の運命でしょ?
房:これは主に老何の運命だ。
張:老何と俺らはこれ、けっこう話したんだよ。俺が「あなたの人生の転機は何だった?」って訊いたら彼は「前は工場があまり忙しくなかったから短いビデオをよく撮っていた」と言うんだ。そう。それで、その時作ろうとしてた作品があって、そして彼にぴったりの役があって、そこから老何は今に至ると。
金:高群書監督は昔から素人を起用するのが好きだからね。彼の「神探亨特張」、その後の「太平洋大劫案」もね。
張:「太平洋~」の役者募集の告知で「プロの俳優は要らない」って書かれていたのが強烈だった。
金:うん。彼は好きじゃないんだ。
張:そう。自然な表情が好き。
金:何年前か、、、けっこう前、高監督の「刀尖」(未公開作品)を撮影していて、「風聲」や「刀尖」の麦家(作家、脚本家)の、撮っているときに老何に知り合ったんだ。そして去年「八歳的爸爸」(その後改題。「最好的相遇」メインキャスト)を撮影して、老何が、「刀尖」に出ていて「太平洋~」も。西姐が呼んだらしいんだ。で、俺との場面があったって、1シーン、彼はちょっとした報告をする部下の役で。俺は国民党の将校の役。それから…よく覚えてないんだ、その日ちょうどクランクアップで、フルスピードで次に、どれくらい急いでいたかと言うと、次の撮影が控えていて、撮影所の門で車が待ち構えていて「今日こそは何が何でも連れて行かなきゃいけない」ってさ。「刀尖」の撮影は常州だったんだよ、次が蘇州。常州から蘇州へ(直線距離で100Kくらい)。覚えていないんだよな、、、。一緒に撮影をしたって言うんだけど。誰を演ったの?って訊いちゃった。
張:あなたに報告する役です。
金:報告する役と言われたけど、でもさ、自分は前に何を撮ったかよく覚えてないから、思い出せない。ああ、そんな人がいたかも、、、くらい。
房:でも。役者がプロじゃないとすると、監督の負担は大きくなるのでは?
金:いや、職業俳優より巧いよ。
張:プロよりやりやすい。
金:いや、素人のほうが…自分が監督だったら素人も使いたいな。
房:そうなると、矛盾しない?
張:何故?
金:どうして?
房:誰もがアマチュアとか素人を役者として使いたがるけど、プロは?どうなの?
張:いや、俺が思うにこの件は、、、
金:職業俳優だからって、プロなら充分だとは言えないよ。
張:佳兄はそう思う?
金:そういう…理論があるから、つまり、プロでない人を使うなら、それはキャラクターそのもの本物に違いない、そうでないなら、何故使うの?
房:ああ~
金:あなたはプロの役者で、アイデンティティは役者で、仕事は役者だから、あなたは人物像を作らなければならない。
房:多くの人物に。
金:キャラクター作りが良くなればとても強いはず。でもあなたは巧くないから似たような役を探した方がいいかもね。
房:ああ~~~
張:うん、そうだね、俺だって前は素人だった。
房:そうそう。役者ではなかった。
張:キャリアを始めたばかりの頃、よく面接オーディションに行ってたんだけど、監督がよく「この青年はどこの学校出身?北京電影学院?中央戯劇学院?」と訊くんだよ。どっちも違いますって言うと上海戯劇学院か?と。「いいえ、北京広播学院(現・中国伝媒大学)の出身です」と答えると、演技科があるのかって。自分は音楽系だって言うと、どんなドラマに出たことがあるのか訊かれたけど、まあ、確かに北京、中央、上海と三大アカデミー出身のほうが安心だろうけどね。起用しようと思われなくても仕方ない。代表作もないなら尚のこと。
房:まったくの白紙か、信頼できる専攻を持ってるか、信頼できる学校の出身か。
張:でも、今になっても代表作ができないと思わなかった。
金:信頼できる学校の出身者が必ずしも信頼できるとは限らないよ。
張:オーディションで、同級に会ったことがある。彼がまだこの仕事をしてるかどうかわからないけどね。どこの大学の出身か、はっきり言わないけど彼はとにかく当時クラスで芝居が一番巧いと言われていた。彼と同じキャラのオーディションを受けたんだ。彼はとても緊張して、監督を見るとパニックになった。学校では皆が「ホントに上手、教えて教えて」っていうくらいだったのに。それが仕事になった途端、監督がプレッシャーになり、一気に混乱してしまった。私は恥知らずで、無知ゆえに怖いもの知らずだから、うまくできなくて、最悪起用されない、と。
金:まったくフツーのことだよ。学校と社会のシステムが違うんだもの。演技は100m走のようにはいかないんだよ。100m走なら誰が速く走るか一目瞭然だよ。一位から八位まで、12345678とランキングは明白。どうしてか?はっきりしてる。どうして?誰もが見ることができるからさ。数学のテストで、回答できた誰かは、できなかった私より優れている。でも演技とはそういうものではないから。演技を理解する必要がある。まず、この点から業界の誰もが理解しているわけではないよね。そうでしょ?わかりにくいから煙にまくことができる。
房:人脈か何か。
金:そう、どうしてかって言うと、パッと見えるものではないから。上級ディレクターにも見えない。彼らはやり方を知っているけど、今のプロセスが我々と違うから。ハリウッドとは、違う。すべての役柄をハリウッドはカメラテストをする。
張:非常に厳密に試す。
金:みんなひとりずつ。
房:我々はテストしないの?
張:演技のテストはするけど、カメラテストではないよ。
金:オーディションはオーディションだけど、、、つまり、、、まだよく見えてないんだよ。
張:よく出る話で、ブルース・リーがハリウッドでオーディションを受けていた時、それこそ、オーディションっていう感じでカメラもライトも整えられているところで座ってさ。今、ほとんどはホテルが会場で、助監督があなたを見て「アクシデントに遭ったところをちょっと演じてみて。崖から落ちたところ。このベットを崖に見立てて」と言う。さて、実際に演じようとするけど、違うじゃないか、差があり過ぎ。
房:オーディションの課題はストーリー性があるの?
金:そういうこともある。
張:うん。
房:ああ、今気がついた。これは異なる二つのものだね。
金:でも、大抵のオーディションは。オーディションの一番の問題はまっさらな状態で、そこに行ってセリフか何かを読んで、そして相手の反応なんかで決まるやつ。でもね、この何かのセリフとか何か、パッと見て理解する人はあんまり多くないよ。これはホントのことだけど、オーディションを受けたことないんだ。ディレクターかなにか直接会っただけで、この人と話をして、このキャラはどんな考え方をするか?この芝居はどう思うか。何がどうのこうの…いろいろ準備していくけど、だけど後で振り返ると、してもしなくてもどれも同じだったな、と。
張:うん、実際。
金:どうしてだろうか?特に今はそうだよ。新人監督がたくさんいるけれど、彼らはスコアを持っていない。概念的なスコアしか持っていない。
房:なっとく。
金:うん、だから見てごらんよ。つまり新人監督がたくさんいても、実際に作品を完成させたのは、すべての条件がそろった場合だけのごく少数。
張:まだ、まだ実践あるのみ!だね。
金:いろいろあるから言うけど、さっきの演技の定義はすごく難しいという話。例えば、料理人が、みんながすごく美味しいと言う特別な料理をつくります、と言ったらどう思う?
張:どう作る?皆が美味しい…
金:どうする? 最初に何料理をつくるか?中華料理を作るかどうかを確認する必要があるよね? 中華? 洋食? 日本食? インド料理? それぞれどれも美味しいものがあるからね。 そう、これだけでは足りなくて、これも知っておく必要がある。それは…中華料理を例に挙げると、五大料理があるわけだけど、あなたはどんな料理を作りたいですか? たとえば...九転大腸(豚の腸の香料煮)、そう、 山東料理で最も有名な、どんな大腸を選べばいいのだろうか? どの部分をどうすると美味しくできるのか、細部までこだわっています。 さて、腸、一番おいしい腸が目の前にあるなら、油でどうやって加熱するのか? 何度なのか? どうやって入れるの? 塩はどれくらい入れますか? 醤油はどのくらい? 砂糖はどれくらい入れますか? 、、、と。 だから、「おいしいものを作りたい」という思いだけなら、それは単なる思いつきで、それを九転大腸にしようと思ったら、完成まで数え切れないほどの工程を経なければならないよね?。これでひとつわかることがある。これはパフォーマンスの表面も同様で、演劇学校では何を教えてくれますか? (学校では)美味しいもの、素材の豚の腸を美味しい料理・九転大腸にする方法を教えるというけど、もう一つ問題があって、何というか? 藍翔学院は…

藍翔学院=山東藍翔技師学院、年間およそ二万人の学生を受け入れる職業訓練校。済南市にある。料理、自動車修理、建設機械の操作、理髪、コンピュータースキルなどの教育機関。

張:つくり方を教えることは出来るよね。九転大腸を知っていればパッパとできる。
金:藍翔学院で、例えばクラスに30人の生徒がいたとしても全員の保証は出来ないとすると、とても変に思うでしょ?何故?同じ先生が同じ砂糖、同じ酢、同じ油、塩、タレ、同じ大腸を与えているのに、どうしてあの人の料理は美味しくて、この人の料理は美味しくないのか?
房:そうだ。
金:…一番単純なこと、それが才能だよ
房: 俺が幼い頃、両親はいつも「みんな同じ先生に教えられたでしょ。ほかの人はあんなに高い点数を取ったのに、どうしてあなたはこの点数なの?」って言うんだよね。 俺もよくそう考え込んだ。人生は...
金:いや、藍翔の話とは違う。小さい頃から通った学校は、国語、数学、外国語と。それはとてもとても...
張:総合的なもの、総合的な小学校。
金:例えば、数学は得意だけど国語は苦手、国語は得意だけど数学は苦手ってことあるよね? でも、ただ一つの料理を作るだけなのに、なぜ彼はクラスで1位を取れて、私は取れない...私は彼ほど美味しく作れないだけだろうか?
毎日ずっと時計をもって彼を見て、いつ何をするか観察して、彼のとおりにやっても、結果はやっぱり違う。
張:それでも違う。
金:これは…いわゆる技術の問題。
張:実は、...撮影現場で時々、俺は...たとえばある俳優と共演します。彼の演技のリズムが好きで、つまり...とても幸せな気分で、彼と共演するのだけど、監督はそれは良くないと言う。俺としてはとても奇妙な感じなんだ。俺は良いけど、監督は良くない、と。それなら何が間違っているのかを考えるし、監督とああせいこうせいやるんだけど、結局、言われちゃうんだよね。「張承、君はあまり上手ではないね」
房:ああ、そんなことがあるとは。たとえば、監督は良くないと言ったけど、ここで撮ったなら、後で監督に聞いてみれば?これを見せてもらえますか? 自分でちょっと研究したいからって。
張:プレイバックなら見られるかな。
房:全然だめ?!自分でも無理だと思う?
金:その研究は何か役に立つ?
張:あ、、、うん。俺もそう思う。誰にも訊かれない。
房:ああ~~~~~わかった。
金:腸(料理の材料)をいつどうするか、時計をもって計っているのと同じだよ。そこにこだわっても無駄。あなたが良いと思うもの、俺が良いと思うもの、観客が良いと思うものが必ずしも良いとは限らない。
張:はい。
金:だって、視聴者はテレビをつければ観られるし、今はメディアが発達しているでしょ?で、俺が言いたいのはさ、今はなんでも速く売って速く消費しろで、俺が学生だったころとは違うんだよね。前は、なにかひとつのことについて、みんな考察したり吟味したりしていたけど、今じゃ、何も考えないよね。すごくいい友達がいて、彼が言うに、どうして韓国ドラマや日本やアメリカの俳優は演技が巧いと言われるのに、俺たちは下手だといわれるのだろうか? もっとも重要な問題はハングル語も日本語も聞いてわからないから必ず字幕を見る。ドラマを見るには必ずそうしなければならない、と強制されている。でも、中国語のドラマは?食べながらかもしれないし、なにかしながら片目でチラチラ見てるだけかもしれないし、ひょっとすると聞いてるだけかもってね。
張:早送りとかね。
金:よく監督に質問するのだけど、台本を受け取ったときに、「なぜそんなに話さなければならないのですか?」と。 俺の印象は、演技とは言葉が多いほど意味は薄れる、と思ってて、、、
張:実際、特に映画では、言葉が少ないほど、演技の余地が大きくなる。 それから、実は今考えていたのだけど…ずっと前から考えていたことで。周りの多くの友人が、プラットフォームでドラマを視聴していて、マルチスピードで、どんどん早送りできるようになって、1.2、1.5、2.0、、、
房: 1.75
張:うん。いろいろな速度で見ると、制作で調整したもの、監督が調整したリズムは役に立たない。このリズムの問題、みんなのセリフのリズムが原因で、監督が長時間調整することもある。なのに、早送り。2.0以降は皆痙攣してるみたいな、、、
房:ぜったいしない。
張:俺も。
金:すべてがそうだから。舞台演劇、連続ドラマ、映画の3つの業界が意識的に特に分けられている。
張:そう、全然違います
金: それは一つの業界ではない。
張:全然違うよ
金:まさに、、、例えるなら、相声(日本の漫才に似た大衆芸能)のボケとツッコミ。ギャグはどうする?どう投げかける?早口の見せ場にはどう持っていくのか?彼らのシステムは俺らのシステムと全く違う。伝統的な中国のシステム。評書(日本の講談に似た大衆芸能)はどう語ればいい?評書は…
房:普通のリズム(早送りができない)

相声=漫才に似た大衆芸能と紹介されることが多いが、実際は日本の漫才と歌舞伎や能、さらにイマドキのお笑い芸人的要素、加えて民謡歌手、流行歌手+楽器演奏など相当に幅の広いパフォーマンスを見せるマルチ俳優。

バラエティー番組・西遊奇遇記で金世佳と共演した岳雲鵬(写真左)は本職・相声役者。

金:そう。映画は映画館に行ってそこに座って、そこに座りながら携帯電話を見ることもあるけど、80、70、60%、おそらく自分の注意のほとんどは、映画にまだ集中している状態のはずだよね。
張:うん。
金:それで観客は映像を追いかけて、ちゃんと見る。
張: 多くの人は、ある俳優がこの...大きなスクリーンでとても良い演技をしていると考えるけど、それは見る人が集中しているからだよね。家でテレビを見ているときなんか、例えばお湯が湧けば立ち上がって行ってしまうし。
金:テレビって、100%…分からない、あまりテレビを見ないから、つまり、視聴者はただ知りたいだけだよね? ねえ、何が問題なの?
張:とても焦ってる。
金:じゃあ、逆にいえばパフォーマンスも同じで、いろいろあるけど、テレビのパフォーマンスで一番大事なことは何? わかる? はっきり言える? 映画のパフォーマンスはもう少し複雑になるけど。う~ん。ちょっと。片面しか見てないな、たぶん俺もちゃんと説明できない。小津安二郎は「映画は後味で決まる」とよく言っていてさ。
房:後味。
金:つまり、観客は映画を観終わって映画館から出てきても、地下鉄に乗って家に帰ったり、タクシーに乗って家に帰ったりする間も、まだその映画のことを考えているということ。
房:ジワジワと。
張:俺が言ったことを覚えてる? 少し前に「信条(tenet テネット)」がとても流行ったよね? それで丹東で観たんだけど、観終わってトイレに行く途中、トイレから後ろ向きに歩いてくる人が見えて、何が起きたのか⁉と思ったよ。
房:じわじわくる。
張:そう。まさに後味。「テネット」のストーリーの前後が複雑で、さらに時間と空間についても話してるからだと思う。これが、いわゆる映画が人にもたらすことが出来るヤツ。でもテレビドラマは、これが良いあれが良いって一か月くらい盛り上がって評判になっても、どんどん過去のものになっていくよ。
金:今は速さが良いとされるから、すべてが速く速くさ。撮影も投資家たちは皆どうすればもっと速くできるか、とね。
張:コストを削減して、さくさくオンラインに上げると。
金:そう。その通り。けどさ、速いって本当に良い?
張:速さにこだわれば損失が出るはずだよ。でもしょうがないよね。ただ、物事には時間が必要でさ。そこんとこだけど、つまり、、、世界で最高の料理人を見つけることはできるけど、その人が5分で手間暇のかかる九転大腸をつくることはできないってこと。
金:はい。
張:マジ。無理。
房:今日は九転大腸を避けては通れないな。
張:大腸が美味しくなるにはすごく時間がかかる。芝居も同じ。現場だと照明でよくあるね。照明の調整は長いこと待たされる。調整が細かいから、10分間与えられたとしても見栄えよくセッティングできる人はいない。10分ならサーチライトの調整だ。
房:そういえば佳兄は上海っ子だけど、九転大腸は好き? 天津っ子としてハッキリお聞きしたい。
金:大好きだよ。九転大腸も好きだけど、今彼が言ったことは、、、。
房:ははは。唐突だったね。
(2に続く)

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