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20201120 春日屋No8 金世佳とサシで呑む(2)試訳

(照明のセッティングが話題にのぼり、それをうけて金世佳がNHKドラマでの経験談を話し始めました。)

金世佳:去年の暮れに日本のNHKドラマの撮影があってね、全部日本語で、日本の制作チームが来てさ、芥川龍之介伝という作品で、(出番は)わずか2~3シーンかで。監督、、、その時俺は青島にいて、何教授と例の撮影をしてるところに監督が朝一の飛行機で俺に会いに来たんだ。
房:監督が役者に会いに?
金:うん、そう。たぶん誰かが俺のことをとても素晴らしいと吹き込んだのかもしれない。理由はわからないけど、ただ、そこに監督が来て、それでさ、衣装デザイナーも連れてきた。あの監督は今、、、つまりNHKの、NHKってCCTV(中国国営放送)みたいな日本の国営テレビ局なんだけど。彼はNHKドラマ部のビックボスで、それから衣装の人とスタイリストを連れてきて、スタイリストは「おくりびと」の人で、ビックネームが揃って青島にやってきたんだ。俺、その時青島じゃなく黄島にいたんだけど。
房:ああ、そこも、そう、わかる。
張:青島の端っこだ。
房:わかってる、わかってる。
金:あの撮影所で会って、、、彼らはその役(李人傑)がどれほど重要かを話して、というのも俺が演じるのは中国共産党の重要な創設者で、1921年当時、最も重要な創設者、、、一人は李達、もう一人は李漢俊(=李人傑)。中国共産党の第一回党大会が彼の兄の家で開かれて、その時、11人、11人の中国人が参加したんだ。それから監督は芥川の遺書のコピーを取りだして、なぜこの役がそれほど重要なのかを言ったんだ。つまり芥川は遺書にたくさんのことを書いているのに、その1ページには、そこには三文字しかない。李漢俊、と。で、「上海游記」でもっとも影響を受けた人物だと、ね。
房:ああ~~~~


金:うん。興味があれば「上海游記」を読んでみて。1921年の上海を日本人の視点から書いたもので、実際、芥川が言ったことはとても興味深いよ。それで俺は監督に「わかりました、引き受けます」と言って、日本語の台本を受け取ったんだ。俺はそれを一か月かけて暗記したよ。李漢俊のセリフ、日本語がとても難しかったから。
張:慣れない言葉はどれもそうだね。
金:そう。彼と芥川はずっと一緒の場面だった。芥川は長いこと上海に滞在してて、ずいぶん長い間中国(T10,03~07)にいたけど、日本語を話す中国人が彼の身近にいなかった。ただ一人、李漢俊だけが。李漢俊は東京帝大を卒業してる人で、14歳で日本に渡っている。そしてずっと日本暮らしだった。現場に入って、松田龍平と共演したんだけど、彼らはずっとこう言って、、、う~ん、お金がなかったんだろうな、「とてもハードな撮影です」ってさ。松田龍平が前日に26時間撮影したっていうから、俺さ、ちょっと待って!何?って。26時間って概念は何?つまり、、、
(予算の都合でタイトな撮影スケジュールだったか?)
張:昨日から撮影が始まって明後日に終わる?
金:いや、一昨日からぶっ通し。
張:それから撮影は?
金:それで、日本の俳優はこんな感じで、中国の俳優には契約時間がある。例えば今日12時間どう撮影するか、一日12時間どう撮るか。でも、彼ら日本の俳優は何日間という契約で、だからその間はいくらでも撮影に応じるけど週に一日は休ませてください、という。
房:ああ~。
金:彼らには一日オフ日が必要なんだ。、、、うん。それでさ、彼のセリフは俺のより難しいんだ。芥川と李漢俊はフランス革命とその哲学、それからイギリスの哲学(をベースにした会話をする)。見慣れない言葉がどれほど並んでいたと思う?!
(芥川龍之介のセリフを聞き取るのも大変、非常に難解)
房:でも彼は母国語だろ?
金:いや、でも、もし日本語はこう・・・、いざ会話になると彼はカタカナ、、、つまり、ひらがなとカタカナで、全部カタカナを使って、それでオリジナルのものを。(フランス語や英語を表現する)
房:中国語にはない(言語習慣)。

ドラマ公開時の宣伝映像から。


金:そう、そう。(中国語では)オリジナル(のまま)を使う。俺、バカだった・・・。それからさ、監督が「リハーサルをしよう」と言うんだ。俺はそこに座っていてさ、一か月かけて覚えてきたのにまだリハーサルが要る?冗談でしょ?って思ったわけ。で、リハーサルで、監督も見てて、松田の滔滔としたセリフがあって、俺、まったく馬鹿。26時間も・・・。(中国での)いつものリハーサルなら決してこんなことはないのに。相手役がここに来て、セリフの掛け合いをする。でも、松田との演技はずっとこんな感じで、彼がセリフを言う。これホントの話だよ、俺初めて馬鹿って言われたよ。松田龍平が俺に、彼のセリフが終わったのに俺が何も言わないのを見て、あなたのセリフの番です・・・って。

(ここは大変わかりにくい部分で中文テキストとドラマそのものを何往復もして、この翻訳をひねり出すのに約3週間かかった。概要は日本語の台本を受け取り、一か月かけてセリフの背景など内容を理解、暗記して、撮影に臨んだ。リハーサルは要らないと思うくらい自信があった。しかし想像以上にハードルは高く、日本人俳優たちは26時間連続撮影など非常にハードな状況にあったのに、さらに自分が芥川の難解な日本語セリフを聞き取ることが出来ず手間取り、辛い思いをさせてしまった。初めて馬鹿と言われた。自分でも馬鹿だと思った。・・・と推測した。)

房:ああ~~~~~。
金:俺は、ああ、はい、ええ、私のセリフの番ですねって。それで、1ショットを撮り終えて、OK!次に進みましょうってなった。それでさ、俺らはまあ一服ってなったんだけど、セッティング変更でカメラの位置を変えるのに15分くらいかかるよね?
張:うん、15分くらいだね。
金:短くても。
張:うん、メイク直しもして。
金:そうだよね。いま座ったところで、煙草に火をつけて一口吸った途端、日本人スタッフから呼ばれたんだよ。はい、OKです、お願いします! 俺は、ええ?って言いながら行ったんだ。で、また撮影OKになって俺は・・・
張:もう一本、煙草に火をつけた?
金:いいや、さっきの煙草にまた点けて、一口吸うともう、OKです、お願いします!って。それでさ、俺、我慢してられなくなって助監督に訊いたんだ。光は調整しないんですか?って。そしたら、メインライトは三日前にカメラマンと照明技師によって調整されています、という返事なんだ。俺は、撮影に入ったから何があるかは知っています、ライトだけでスチレンボードは要らないって言ってましたよね?と、また言うと、助監督は、ええと、、、どういう意味ですか?ってさ。私の顔の半分は黒いですって言っても、それはどういう意味ですか?って返事なのさ。
房:ああ~~~。
金:つまり彼らの照明の概念は俺らのとは違う。彼らがそこに居る、自然光の下でなぜ人の顔の半分が黒くならないのですか?(それが自然でしょ?)
張:はい
房:ということは、実際には15分もかからないかもしれないね。我々も事前に準備していれば。
金:どうして・・・
張:15分は悪くないよ、ホントに。
金:15分なんてあっという間だよね
張:うん、15分、拙くないでしょう
房:あ~、俺~
金:どうして、、、俺も理由は知らないし、調べてもないんだけど、でもこれって、中国の河南のあたりにランプ村って無い?
張:河南省にランプ村、あるよ。
房:え?
金:皆、ライト関係の仕事をしている。
房:ホント?
張:照明チームの技師はほとんどが河南出身だという気がする。多い。八割が河南省出身者。
金:はい
房:あ~、そうなんだ。
金:うん、全部そう。
張:制作チームが食事を注文してるのを見ると、たいていゴハンと饅頭を注文してるから。饅頭はまず照明チームのものだね。河南人の好物だから。
金:どうして俺らが撮ったシーンに質感が無いのか。思うんだけど、質感がないのは、なんでもあからさまに見せすぎているからでは?それとも・・・例えば役者にサーチライトを向けると、彼がくっきり鮮明になるよね。彼の思うことすべてが。でも、どうしてアメリカ映画を長く見てると時々、え?何をしてるんだ?なんでよく見えないんだ?って、こうなる。鮮明さがない、それが必要なんじゃないか?何故なんでもあからさまにする必要があるんだろう?
張:これは二つの側面がある問題だね。
房:「八佰」は全体がハッキリ見えないね。
張:いや。俺、この仕事を始めたころ横店で撮影してて、見かけたよ。それでさ、このシーンがどうなったか。夜でもその撮影隊には照明が準備できないほど、予算がない。ホントに貧乏な撮影隊。照明が無ければ、夜の場面は本当に夜の光景で、モニターをみるとそこに立ってる男女4人の俳優がわからない、いるのかどうか、わからない。全話放送後、皆のコメントを読むと、見えなかった、いったい何が立っていたの、と。
金:2013年と2014年、横店で時代劇を二本続けて撮影したよ(極品新娘と美人製造)。それきり横店には行ってないんだ。何かオファーがあっても横店と言われたら絶対に行かない。

気温40度の酷暑の中、撮影された。2014年公開の「美人製造」から。

房:傷ついた
金:好きじゃない
張:俺、2014年に横店には二度と行かないって誓って、その後一度も行ってない。
房:それは出来合いのセットだから?
金:うーん、そうでもない。あの雰囲気が好きじゃない。ただ、、、当たり前の事が嫌いなんだ。
房:よくわかんないな。
金:役者として当たり前、撮影に行くのが当たり前、撮影が終わったら皆で呑むのが当たり前。その時には、、、皆が知り合いだっていう、、、。
張:みんな知り合い。
金:このチーム、あのチーム、このチームのメンバーも、あのチームのメンバーも。
張:ものすごい人数になるよね。
金:結局、一緒にお酒を飲むことになって、つまり、俺は、それが俺の好きな状態ではなくて、それに、全部が、なんというか、非常に工業化・・・というのも違うけど、非常にステレオタイプな、それってただ、・・・ええと・・・タスクの完了がすべてみたいな。誰もがそこに合うようになって欲しいと思ってる、けど、だけど、日本から帰ってきたばかりで、最初の時代劇で、それまでやったことがなくて、一週間撮影した後プロデューサーに言われた。もともとは大スターにやってもらうつもりだった、でも君もなかなか良いじゃないかと思って演ってもらうことにしたんだけど、でもこうしてみると、君の芝居はダメだ、とね。

(極品新娘 2013,10~2014,1月撮影 2015,1月公開/ 美人製造 2014,7~2014,8月撮影 2014,9月公開。とても寒くて、とても暑い横店撮影所での経験談)

房:直接言われたの?
金:うん。直接ダメだって言われた、もしこのままなら、まだあまり撮影していないからキャストを替えますって。そんなこと、それまで一度もなかったけど、でもうまくいかないのは、おそらく俺が理解できていないからで、日本での演技の勉強から帰ってきたばかりで、それで、彼らの仕事のやり方が理解できなかったかもしれない。どういう流れなのか、どうやってこのショットを撮ったのか、なぜまたそこで撮るのか?つまり、そのシステムについて俺は無知だった。彼らが必要とする役者というのは、来たらすぐ現場に入り、すぐに「横店モード」と呼ばれるそれになることができる。
張:ショートムービーみたいな超快速撮影。
房:流れるがごとくの生産ライン。
金:当時はまだ男性主人公をやっていて、見ると一日30シーン以上。どうやって撮影したのか?
張:16ページ。
金:そうだね。・・・でも、もちろん俺、配役交代の憂き目に遭わずやり切ったよ。あとから彼らが何を望んでいるのか理解したからね。
張:ゲームのルール。
金:初めは何を望んでいるのか理解できなかったから。ああ、彼らが望んでいるのはこれ、それでも俺は、理解しようとしても理解できなかった、つまり、それは撮影が7月1日に始まり8月31日に終了すること。
張:そんなに早いの?
金:たった二ヶ月。二ヶ月。そして夏休み。横店の夏がどれくらい暑いか知ってる?
張:俺、これは聞こえない。
金:毎日熱中症になる。
張:うんうん。
金:そう。それまで熱中症になったことがなかった。助監督が「主役が倒れた、主役が倒れた、来て来て、あそこに~」って大声をあげたのを覚えてる。
張:藿香正気(カッコウショウキ)と角氷。
金:いやいや。「緑豆スープ、緑豆スープを一杯飲んで藿香正気、藿香正気・・・」しばらく座って、五分。「大丈夫?佳兄?」
張:さあ!さあ!
金:行きます!そう言ったのは、俺は、そう、エキストラはもっとしんどいから。
張:もちろん。
金:そうなんだ。宮殿の場面があって、蠟燭が灯されていなければならない。考えてもみてよ、気温が40℃の日に蝋燭を灯して、締め切ったなかで、、、。
張:換気もない。
金:そこに何百もの蝋燭の火があって、換気もしていない。宮殿の女官や衛兵が突然フラフラっと倒れる。
房:それに時代衣装だ。
張:うん、時代衣装。
房:なおさら暑い。
金:バタバタ。撮ってる間に倒れると「おい、担ぎ出せ、担ぎ出せ!」。彼らは熱中症になると思っていないみたいな。見慣れた光景で。みんなこんな感じ。予想できる・・・。
房:部品の一つが壊れたから交換する。
張:機械をさけて、カメラは持ち運べない。
張:横店にいたとき、いや象山だ。俺の唯一の時代劇。とにかくとても暑かった、40℃くらい。1シーン撮ってまたシーンの半分くらい撮ったところで、何か問題があるなんて自分は思っていなかったけど、監督が突然ストップをかけたんだ。どうしたんですか?って訊いたらさ、「張承、君は煙草でも吸ってるようだ」って言うんだよ。
房:ああ~~~。
張:カメラは頭の上にセッティングされてて、再生すると、煙を出しているのがわかる。(暑さのため頭から湯気が上がっていた?)
房:でも、熱中症になってる人、見た事があるけど、目が違うというか、完全にうつろで、化粧していると顔色はわからないかもしれないけど、目は完全に違う。
金:緑豆スープを飲ませて、藿香正気、五分休憩。
(緑豆スープ、緑豆湯、夏負け対策の代表的な薬膳スープ。藿香正気、藿香正気散という漢方薬、日本でも出回っている。)
張:良い制作チームだと大きな氷を買ってきて椅子の横に置くよね。
金:それで思い出したけど、横店のスタジオで撮影していて、小さな扇風機しかなくて、隣のチームが爾冬升監督の「三少爷的剣」で。
房:ああ!あれは。
金:はい、それで。
張:俺もその時横店にいたよ。
金:二台の巨大なエアコン車がそこにあって・・・
房:ひんやり
金:隣でエアコンをつけると排熱でこっちのメンバーが一人、またひとり・・・倒れて担ぎ出されるって知ってた?
張:暑さ対策、俺たちのチームはあの時どうしたんだろう?忘れていたけど、たまたま横店にいて、面をつけてる芝居で、たくさんのお面を持っていたな~
房:ああ、知ってる。
張:そうそう。よく言うんだけど、息切れしてるような感覚があったんだよね。2014年だ、おそらく。
金:うん、14年。
張:14年
金:うん
張:あの時誓った。二年は横店に来ないぞ!って。去年誓いは打ち切りで、虎兄(管虎)に祖国の撮影に呼ばれて。(我和我的祖国)
房:ああ、横店だね。
張:戻ってみると、前は絶対に行かないようにしてたのに、戻るとこの業界が嫌になりそうでスゴイ不安になる。
金:でも、時には横店がとても良いって思うでしょう?
張:うん。どんどん良くなってる。建物がどんどん良くなってる。
金:生活施設が揃ってるよね。欲しいものは全部ある。一度行ったらハマってしまいそうな。たぶん、例えばちょっと・・・
房:わかる、わかる、言いたい事
金:たぶん一緒
房:出勤が常勤と変わらない
金:いやいやいや。常勤。ずっと出ずっぱりは好きになれないね。
房:佳兄が言う罠には、大好きなものも入ってる?
金:はい
房:それは、、、それはあれだ。
金:毎日飲める酒もたくさんあるし、遊べるゲームもたくさんだ。
張:毎晩ゲーム
金:うん、そう、うん
房:今。二人が横店を話題にしたところで改めて言うけど、春日屋のアイデアは老張が横店で撮影してた時に思いついたのが始まりなんだよね。去年の年末、彼がどこの撮影隊もいなくて退屈しのぎに俺にビデオを送ってくれて。あのころは二人でほぼ毎日ビデオを見ながら呑んでたね。
金:その時はたぶん
張:うん、去年のクリスマスイブ
金:そうだね
張:2014年は月にだいたい30組以上のグループがいて、すごく繁盛している感じだった。去年はもうさほどでもなくて。クリスマスだし自分でクリスマスイベントをやろうと思ってたけど、映画館には一人しかいない、なんだか自分が伝説でも撮影してるような気がしたよ。この街には誰もいない。俺のあのキャラは、撮影隊の助演俳優の時間とは別で、彼らは撤収してて、俺は一人でB組の撮影に行って、毎日だ~れもいない感じで、それからだね。ビデオを見ながら酒を飲むのが習慣になったのは。
金:老張はケンカの場面が多いよね
張:この二年、確かに多かった。老何は殺人犯の役が多くて、二日前にも喋ったよ。俺に、最近泥棒を捕まえてないの?って言うから、最近は殺人してないの?って返したよ。
金:それも面白い。
房:佳兄、主役の、配役交代の話をしたけど、国内の制作スタッフが主役を替えるのは、よくある?
金:珍しいはず。
張:珍しい。そういう例も知ってるけど、一般的じゃない。
房:それ・・・
張:監督が主人公と決めてるわけだし、ヒロイン、ヒーローを決めるのは一番慎重で厳しいだろう?
房:マスコミに発表する前に決めて動き出すわけだし。
金:今は、監督が全部決めたわけではないから、監督にはない・・・
張:そこまで発言権は無い
金:うん。
張:ドラマはね~。映画はまだマシ。ドラマの監督には確かに発言権のない人が多いね。
房:俺は素人だけど、それって誰が決めるの?プロデューサー?
金:投資家、プロデューサー。
張:いまはプラットホームも。
房:ああ、そうそうそうそう。
張:実は今、プラットホームできまったものがあって、去年とても気に入った企画があって、俺と同じ、年齢、暮らしてる街、性格、全部同じのキャラが、こう・・・。我々はオンラインで繋がりたい。それでさ、俺、ずっと考えちゃって、口をついて思わずさ、このつながりはそもそもどこにある?あるいは誰が設定したんだろう?って。
房:データケーブル。
張:もし、役者が、だれも、どのキャラクターの話にもなれなかったら、WEB上の私はどこから来るんだろう?長いこと悶々と考えて。
金:病気になりたい?
張:いや、考える前から病気だよ。
金:悪化してる
張:病気のときを考えると、考えることすらできないね。
金:すべての鬱病は双方向に作用するんだ、抑鬱と躁鬱。

喬任梁の遺作。邦題「記憶の森のシンデレラ」

房:焦りと抑鬱
金:不眠が主な症状だけど、もしよく眠れているというなら。
張:ぐっすり。
金:じゃあ、この病気ではないよ。俺は、俺の、とても仲が良かった喬任梁が・・・
張:ああ、キミ・・・
金:彼が亡くなった時、台湾にいて、蔡康永監督の「吃吃的愛」に出演してたんだ。当時、監督がもう一人の男性キャラは彼がやるはずだったと言ってた。皆、上海人で、台湾での追悼会に戻れなかったから、母に法事用の花輪を買うように頼んで。
張:あのニュースを聞いたのは、「国民行動」の撮影の最中で、突然だったね。若い頃彼のファンだったから。実際彼は音楽活動から人に知られるようになった。
房:そうだね。
張:高校生の時、たしか高校生くらいのはずなんだけど、すごくいいミュージシャンがいて。
金:俺たちにとっては、それはまだ、ほとんど受け入れられないように思う。それは、、、ああ?どうして?なぜ?・・・亡くなったのは7月か6月、とにかく6月ではない・・・
張:7月
金:はい。6月か7月。7月13日だったような気がする。
(2016年9月16日、喬任梁去世)
張:まだ夏だった。大理(雲南省)に来たばかりだったのを覚えてる。
金:うん。7月に。その年、頻繁に会うことは無いんだけど、旧正月に一回は会おうと、その年の春節の頃、一緒に呑んでいたんだ。そのとき、彼はまだ、つまり少しも感じさせなかった。
房:違和感
金:はい。そう。彼はまだ俺にこれがしたい、あれがしたいってやりたいことを話してて、それが普通だと思うんだ。一つ年下で、87年生まれだもの。
張:どうして・・・。
金:でも、こういうのは、俺思うんだけど・・・
張:今、実際、情緒の問題を抱える人がどんどん増えていってる。それは知ることが多いからだと。佳兄、二日前に俺がめっちゃ慕ってる音楽的兄貴と話したんだけど、彼が言うに、すべての苦痛の原因はたくさんのことがわかったり、記憶力がすっごく良いかだって。小さい頃は知らなかった、不幸なんてせいぜい一つくらいはあっても、最後には何とかなる、どうにもならない現実はない、思ってたけれど、ある日突然どうにもならないことに気がつく。ままならない現実に気がついて、俺それを肝に銘じ始めた。

(3へ続く)

NHKスペシャルドラマ「ストレンジジャー 上海の芥川龍之介」は芥川龍之介の「上海游記」がベースになっている。が、両者には若干の差異がある。例えばドラマでは金世佳が話しているように、芥川が中国(上海)滞在中に出会った人物のなかで日本語で会話したのは唯一、李人傑(李漢俊)のみとなっているが、「上海游記」をみるとそうではない。ざっと見たところ芥川に煙草の接待をした中国の重要人物も日本語で交流したようだ。
また、ドラマで彼らが対面する李宅の、「帝」の字を逆さにした軸はドラマの美術スタッフの創作だとのこと。NHKに問い合わせたところ返信をいただいたので添付する。

●藿香正気について。

オペラシティクリニック 漢方内科(東京都新宿区西新宿)HP 
「熱中症対策を漢方で」というチョイス、から抜粋



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