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ドラマ2話-2(試訳)

●楽屋
劇団員:オーナー(班主)衣装にお茶が染みついてしまいました。とれません。
十九姐:あんたが歌を替えなければ、まともに稼げたのに。片意地張って聞かないから!お湯をかけられたくらいで済んで良かったわよ。連中が舞台にあがってきて、あんたを殴りでもしたらどうするのよ。
商細蕊:僕を殴るなら、殴り返すだけだ。殴られないと新しい詩の良さがわからないなら…、酒を持ってきて!
劇団員:はい、酒です
支配人:程さん、こちらです、こちらにどうぞ。
商細蕊:ホントにとれないなあ、どうしよう、う~ん
支配人:商さん、お客様がお見えです。
(商細蕊、むせる)
支配人:商さん、こちらは程鳳台さんです。
程鳳台:商さん、恐ろしかったでしょう
商細蕊:程さん、助けてくださってありがとうございました。お怪我をなされて、痛みませんか?本当に申し訳ございません。
程鳳台:商さんとは初めてお会いするが、舞台でもあなたはまったく落ち着いているようにお見受けしました。
商細蕊:落ち着いてみえるのは、そのように訓練されているからですよ。
小来:オーナー!指輪はどこにあたったの?私に見せて!青くなってる!!
商細蕊:大げさな。どこが青くなってるんだ?!
程鳳台:まことに申し訳ない。そこにぶつかるとは思いもしなくて。殴り合いに巻き込む代わりに、傷を負わせてしまった。
察察:お、お姉さん、ごめんなさい、わざとぶつけたわけではないのです。
商細蕊:お嬢さん、お気遣いありがとうございます。あなたからの報酬に私は感謝しなければ、あなたは私を賞賛してくださったのですから。
程鳳台:馬鹿だな~、ステキな人だと思ってお姉さんと呼ぶとは。お兄さんって呼ばなきゃ。
商細蕊:お嬢さん、間違えていませんよ。まだ化粧を落としていないから、お姉さんです。
(腊月紅、苦笑する)
程鳳台:商さん、あなたが化粧を落とすのを待って、車で送りましょう。私の車なら安全ですから。
商細蕊:ありがとうございます。程さん。普段ならいいのですが今日は残念ながら・・・急ぎの用がございまして、いろいろ片付けなければならないのです。
程鳳台:すぐに?仕事ではなく?
商細蕊:いえ、歌です。でもここではなく。
支配人:どういうことですか?商さん、どういった話ですか?どうして行かなければならないのですか?私どもに何か手落ちがございましたか?
商細蕊:あなたには長年、とても良くして頂いてます。今日のこともあなたはあの連中を実際舞台に上がらせなかったのですし、とがめていやしない。私自身が出かけたい用事なんです。
支配人:あなたは私を恥じてます。いいでしょう、今日はゴロツキどもに勝手をさせて、ご迷惑をおかけしました。すべて私の不手際です。これについては会計士に出演料の一か月分を賠償として支払うように指示しました。でも、一つ頼みがあります。今月、急によその劇場に移られては、替わりの劇団を見つけられません。私を助けると思って最後の回まで勤めてください。別の劇場を探すのは、それからで。
商細蕊:もちろん、今月はこちらで座長を務めますよ。出演料の水増しもしません。でも、一つ聞いてほしいことがあります。
支配人:おっしゃってください。
商細蕊:今日、楊貴妃を台無しにされたから最後の回では楊貴妃を歌わなければ僕の気が済みません。
支配人:わかりました。結構です。舞台に立つ気持ちがおありなら、どうぞ思いのままに歌ってください。
(支配人、退出)
商細蕊:舞台裏のみっともないところをお見せしてしまいましたね。お笑いください。
程鳳台:商さんはまだお忙しいようなので、私はお先に失礼します。
商細蕊:楽屋もまだ片付きませんし、お引止めはいたしません。私のために・・・小来、私の外套を一着、一番上等なのを程さんに着せてさしあげて。
程鳳台:お構いなく、ご面倒をおかけするわけには。
商細蕊:程さん、気にしないで。外は寒いです。
程鳳台:それでは、有難く。
小来:程さん(外套を着せる)
商細蕊:程さん、今後はもう、お礼なんておっしゃらないでくださいね。
あなたは私の衣装の修繕を幾度も即座に応じてくれました。今はまた、私のためにとばっちりをうけて。本当に申し訳なく思っています。
程鳳台:私をご存じでしたか?
商細蕊:蘇州刺繍の衣装はすべてあなたの店で誂えたものです。もう長年の取引ですよ。どうしてその店のオーナーを知らずにいるでしょう?
今日は芝居が台無しにされてしまったけれど、暇があったらまた是非いらしてください。
程鳳台:はい、時間が出来たらまた来ましょう。
商細蕊:ええ、きっと。お気をつけて。
程鳳台:では、商さん、失礼します。

●汇宾楼、外
商細蕊の大きな垂れ幕を見上げる程鳳台。

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