見出し画像

ドラマ3話-2 (試訳)

〇金部長宅(or 事務所)
金部長:たかが役者ひとりを捕まえられないのか?!役立たずめ!
手下:劇団員をつかって、奴をおびき寄せましょうか。
金部長:いや、忘れよう。たかが役者風情。騒ぎ立てるとかえって厄介なことになる。構うな、小さなドジョウに大きな波は立てられない。

〇料理屋(飲食を提供する貸席)
程鳳台:素晴らしいよ、商さん、功夫の使い手だったとはね、兵隊を倒し猟犬をかわし。まったく恐れ入った。
商細蕊:当然です。私の武術は歌と大差がありません。
程鳳台:歌って痛快でしたか?
商細蕊:痛快の極みです。
程鳳台:痛快さが過ぎてカビが生える。商さん、今日あの場にいた人は皆、あの芝居の意味が分かりました。あなたは金部長が寄付金を横領していると知らしめた。彼は簡単にあなたを見逃がさないでしょう。今は隠れていられても、この先はわかりません。
商細蕊:どうしたら・・・なにか考えはありませんか。
程鳳台:私もお手上げです。助けてくれる人を見つけなければ。
商細蕊:助けてくれる人を探す?
程鳳台:金部長がなぜあれほど金に執着するのか知っていますか?
商細蕊:ただお金の為では?
程鳳台:ずいぶん過小評価していますね。彼の懐に入るのは少額。これはまったく問題にならない。何故、あそこまで意地汚く・・・忘れてください、とにかく騒がないように。あとは私が引き受けます。

〇北平の街中、表通り
金部長の一行がむこうから歩いてくる。
取り囲む記者やカメラマンたち。
大衆の注目を集めている。
カメラマン1:こちらへ、金部長!
カメラマン2:こちらにも!
カメラマン3:金部長、こちらを見てください!
通行人たち:金部長、金部長、金部長、ごきげんよう、金部長、金部長
銃声一発
金部長の帽子が撃ち抜かれ、飛ばされる。
手下:部長をお守りしろ!部長!部長!
どさくさに紛れて、荷物をすり替える人々
ハッとする金部長
金部長:金!早く、金を確認しろ!早く!


〇裏通り
奪った箱を手に駆け込んでくる数人の男たち
男たち:旦那さま
程鳳台、箱の中の札束を確認する
男たち:旦那さま、これをどうしますか?
程鳳台:すべて東北の抗日戦線に送れ。
男たち:はい。行くぞ、行くぞ!

〇北平時報(新聞見出し)
金部長、横領で失脚。曹司令が権限を掌握。
偽りの連盟。曹と金の暗躍。金部長が大敗し、勝負が決まる。

〇街頭
新聞売りの少年が行く
少年:号外、号外!金部長は横領で失脚、曹司令が権限を掌握したよ!
通行人1:ひとつ、おくれ。
少年:号外、号外!
通行人2:私にひとつ
通行人3:ひとつ、もらおうか

〇姜氏宅
姜登宝:お父さん!今、商細蕊を見たら、もうムカムカして仕方がないですよ。どうして捕まえられなかったんですか?教えてください!彼はまた新しい興行場所を見つけたんですよ!
姜荣寿:雅鴻劇場は歴史のある劇場だ。幾人もの名優があそこで公演してきた。劇場の格が他と違う。私は手が出せないよ。
姜登宝:彼はそれを易々と乗り越えてしまった・・・
姜荣寿:私たちに彼を片付けることはできないよ。だが、できる人がいる。今回、商細蕊は自分で足に石を落としてダメにする。
姜登宝:どういうことですか?
姜荣寿:古い話を聞いたんだがね・・・(ひそひそ話)
姜登宝:お父さん。そんな、とんでもない話、、、。私を担いでないでしょうね?
姜荣寿:お前、自分の親父を信じられないのかい?
姜登宝:わ、私は。
姜荣寿:(昔話をした)この人は、商細蕊と同郷でな。地元の人たちにも尋ねてみたら、この話、とっくに平陽では広まっていたさ。
姜登宝:人気役者の噂話。あっという間に拡がるでしょう。でも平陽のうわさ話をどうやって広めようというのですか?そうでしょう?お父さん。
姜荣寿:(含み笑い、耳打ちする)
姜登宝:(合点がいく)私が、墨を擦りましょう。

〇雅鴻劇場
水雲楼団員:隆春班がどうしてここにいるんだ?水雲楼の人間ではないのに。どういうことだ?ここで、何をしているのさ?場所をあけてくれよ。
隆春班団員:ここは私ら隆春班の場所だよ。
(双方、言い合いになる)どういうこと?! 出て行って!
十九姐:あなた方の担当者を呼んでよ、どうなっているの?
小来:何の関係でこうなってるの?黙りなさいよ!
隆春班:出て行くのは君たちのほうだ。そっちこそ、何なのさ。さっさと出て行ってくれよ。座長!登宝さん!
(姜登宝、奥から現れる)
蓉兰:どうして私たちの場所を占領するんですか?
水雲楼団員女:あなたたち、無茶苦茶だわ。
姜登宝:商さん、悪いね、ここは今、私たち隆春班の劇場なんですよ。
水雲楼の面々:どうして、そんな馬鹿なことがあるか!?
劇場管理人:皆さん皆さん。私の言うことをきいて、あなた方はさっさと出て行ってください。
水雲楼団員:何を言ってるの?
劇場管理人:皆さん、良いですか?聞き分けてくださいよ、商さん、あなたを助けられません。
商細蕊:どういうことですか?数日前には承諾したではないですか?今日から私たち水雲楼がここで興行するって。
劇場管理人:商さん、私だって辛いですよ。だけど、いいですか、周二(火曜日)と周四(木曜日)の前座なら都合できますけどね。
水雲楼団員:おかしなことを。何を言っているのですか?
劇場管理人:皆さん、落ち着いてください。商さん、柳雲心さんは体調がすぐれません。あなたは彼と組むことを希望していましたよね。しかし、しばらくは無理です、快復を待つしかありません。あなたは、立ち去るしかありません。
小来:うちの座長に前座をやれっていうの?狂ってるわ。
大圣:まったくだ。
小来:行きましょう!他の劇場に掛け合いましょう!煩わしいことのない場所で。行きましょうよ!
(小来の手を振り払う商細蕊)
劇場管理人:どこに行っても無駄ですよ。
商細蕊:どういう意味だ?
劇場管理人:商さん。帰って新聞を見なさい。曹司令が金部長の職権を得たんです。これから、ここ北平は曹司令の天下だ。あなたは曹司令と仲が悪いって話じゃないですか。北平じゅうの噂ですよ。今は、あなたに興行させる劇場はありません。

〇飲食店
商細蕊:本当ですよ、私と曹司令は仇敵なんかじゃありません。彼は屋敷で水雲楼の面倒をみようと考えていたくらいなんですから。私はね、劇場の舞台に立ちたかったから同意しなかったんです。

〇回想:曹司令陣営-1室内
商細蕊:(覇王別姫)陣幕の外にでて、ゆっくりと歩いてみよう、憂いを慰めるように歩きましょう
曹万钧,司令:猟犬はついには山上で喪われる。将軍は戦地で死を免れがたい。
商細蕊:歩き続けて荒野を前に立ち尽くす
曹万钧,司令:楚の覇王は死に臨むとき傍に虞美人がいた。多くの女性を抱えていながら、さて、この私が死を覚悟するとき誰が傍にいるだろうか?
〇回想:曹司令陣営-2廊下
小来:座長、座長、早く早く。次は「打漁殺家」をご注文です。
商細蕊:まったく終わりがないな、朝から晩まで、次から次と演じ通しだ。蓄音機の代りをしていても、退屈だよ。
小来:それじゃあ、私たちは本当に行かなくちゃならないわね。
商細蕊:行こう。私の芝居は観衆が聴くためで、曹司令一人が聴くために歌うのではないんだ。
〇回想:曹司令陣営-3室内
テーブルの上にピストルが置かれる。
曹万钧,司令:本当に行くのか?一発でお陀仏だぞ。
商細蕊:司令官には感謝しております。しかしながら私は司令官の助けにならないと心苦しく思っています。これ以上の芝居は、歌えば歌うほどに司令官のお心を惑わせてしまいます。
商細蕊は根っから、舞台に生きる人間です。誰の支えがなくても、観衆の罵声を浴びても、劇場の舞台が私の望む処です。
曹万钧,司令:最後にもう一度だけ訊こう。芝居か命か?!
商細蕊:芝居です!

〇飲食店(回想終わり、もとの店)
商細蕊:彼は私を銃で脅したけれど。
程鳳台:それで?
商細蕊:他には何もありません。噂はすべてでっち上げですよ。
程鳳台:その時、建物のなかに君たちはいたわけで、そこで何が起きたかなんて誰も知らないのだから、思い思い好き勝手にしゃべるだろうよ。
商細蕊:信用できる人までこうなんだから、頭痛くてクラクラしそう。まったくありえないことを真に受けるんだもの。
程鳳台:世間には、うつけた奴が大勢いるんだから。その時本当はどうだったか、なんて考えたくもないのさ。ともかく曹司令は今北平にむかっている。事の始末はまだついていない。彼が役者を殺そうとするなら、たやすい事です。人をつかって騒がせる必要もありません。
商細蕊:そうですね。程さん。あなたは賢いようですね。でも噂を信じている馬鹿な人たちがいます。どうしたらいいでしょう。曹司令は新聞ではっきりさせて私を助けるようなことはできません。
程鳳台:思いついたのですが、二日後、息子の一歳の誕生祝いで宴会を開きます。そこには彼も来ます。商さん、宴席で歌ってくれませんか。
商細蕊:是非。もちろんです。曹司令との一件が無くても、お子さんのために一生懸命歌いますよ。
程鳳台:決まりですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?