見出し画像

ドラマ3話-1(試訳)

〇梨園会館 舞台のあるホール
<最前列席>
金部長:商細蕊は楽師を呼び戻したかね?
钮白文:こ、、、も、、、呼び戻すべきですよね。
金部長:今日は客が多い。奴が私の面子を潰すような真似をしたら、容赦しないからな。
姜登宝:お父さん、商細蕊は楽師を見つけられないと、金部長に潰されてしまいますよ。
姜荣寿:願ったり叶ったりじゃないか。
姜登宝:私はそこまで酷いことしません。お父さん。

<BOX席>
范涟:知らなかったなあ、今日、商さんが歌うなんて。
程鳳台:商さんの歌はどれも素晴らしいよ。

<一般席>
客たち:今日の出しものがなんであれ、彼は素晴らしく歌うと思うよ、そうだね、お、来た来た

<舞台>
商細蕊、舞台に登場。手に京胡をもっている。

<最前列>
金部長:ほほう、彼は自分で京胡を弾くのか?できるのかね?
姜荣寿:笛の習得100日かかり、簫なら1000日、小さな胡琴は腰砕け。手上功夫10年やっても達成できず。ま、聴いてみましょう。
金部長:聴こう、聴こう。

<舞台>
商細蕊:演目・朱琴心《人面桃花》♪蜜蜂と蝶の群、軽やかに舞い踊る

<一般席>
観衆:いいぞ、いいぞ!

<舞台>
商細蕊:♪淡い紅に香しい白、花々が咲き乱れ
<最前列>
金部長:いいじゃないか

<舞台>
商細蕊:♪バラ色の雲がひそやかな小道の上にかかる

<BOX席>
范涟:商さんは本当に何でもこなすなあ。兄さん、とても運がいいよ。通い詰めてる私だって商さんが自分で弾いて歌うなんて初めて見た。

<舞台>
商細蕊:♪誰が嫌おうか武陵の春を

<BOX席>
程鳳台:彼は英雄だな。

<最前列>
金部長:良いな
钮白文:いいですね
金部長(あるいは観衆):うむ、良い。いいぞ! 素晴らしい、さすがだ。
姜登宝:馬鹿にしてやりたいだけなのに。何だよ、キラキラしやがって。
姜荣寿:喜びは哀しみを生む。そう聞いたことがないのかね。
姜登宝:なにかいい方法があるんですか?
姜荣寿:あいつの気性と性格が災いを招くだろうよ。まあ、成り行きをみようじゃないか

〇舞台裏
姜荣寿が姜登宝に箱を持たせる。
姜荣寿:このお金を金部長のお宅に届けなさい。人に見られないようにな。何も訊かずに行きなさい。
(商細蕊、現われる)
商細蕊:箱の中のお金は何ですか
姜登宝:何のことだよ。
商細蕊:義援金ではありませんか?
姜登宝:絡んでくるなよ。そこをどいて!(商細蕊に近づく)どかないつもり?
姜荣寿:何か用かね?
商細蕊:義援金を横取りするとは、良心を失くしたんですか?
姜荣寿:何を見て、これが義援金だと?これは私個人からの金部長への献金だよ。お前さんはなんでも頭を突っ込みすぎだよ。さあ、行った行った。
(登宝、その場を離れる。場面は変わり、廊下で一人立っている登宝)
姜登宝:一体何なんだ。(父、来る)お父さん。ちっともわからない。私たちは何をしているのですか?
姜荣寿:商細蕊は若さの衝動に駆られているのさ。おせっかい好きが。いいだろう、これで銃を突き付けられたも同然だ。

<舞台>
商細蕊、戻ってくる。
商細蕊:皆さん、この義援公演で歌えて嬉しいです。今日は格式ばらずに行こうと思います。ご存じのように私は初め老生(男役)で舞台に立ちましたが、その後、花旦(女役)に転向しました。今ここで、老生の歌をひとくさりお聞かせしましょう。
金部長:ほほう、いいだろう。
商細蕊:大いに楽しんでください。
金部長:続けて聞かせてもらおうじゃないか。さあ、座って。
商細蕊:京劇≪打嚴嵩≫♪突然届いた皇帝からの勅令に、喜んで参内しよう、皇帝の御前に参上し、私は御簾の外の役人から皇帝の直臣になろうぞ
金部長:老生もなかなか良いな。

<舞台>
商細蕊:♪依然この身は賊臣ヤンソンの庇護をうけながら、私ゾウは恩知らず、どうか金の階(きざはし)にお立ちになって見守りください、玉座にまします嘉靖帝、おんかたわらにいますヤンソンは、上は皇帝を欺き、下は百官を苦しめます、位を剥奪し、王朝を奪わんとたくらむ売国奴の奸賊、その名はヤンソン。兄弟たちが皆虚しさに憤慨しております。

<BOX席>
程鳳台:いいぞ!(拍手、范涟ひきとめる)
范涟:兄さん、素人だから…。彼が壇上で歌っているのは罵倒だよ。商さんは金部長が寄付金の横領をしてるって罵っているのさ。ほら、ごらんよ。

<舞台>
商細蕊:♪不正の親玉を告発いたします、この国の臣である私は、国家から裏切り者を排除し、正義の人々を取り立てて、犠牲となった愛国者の為、復讐を求めるところであります。

<BOX席>
范涟:皆、聴き入っている。

<一般席>
観衆:これは金部長のことじゃないか、これは金部長だね、そうよ、商細蕊は歌で伝えているんだよ。

<舞台>
商細蕊:♪王朝の文武百官、こぞって憤懣やるかたなし

<BOX席>
程鳳台:やるじゃないか、商さん。見上げた気骨だ。

<舞台>
商細蕊:♪罷免に次ぐ罷免、忍耐は我が心中で恨みに変わる、皇帝の御前にお揃いの皆々様・・・

<最前列>
金部長:いいだろう、商細蕊。手の者を集めて奴を捕まえて連れて来い。
秘書:はい。

〇梨園会館外
(商細蕊、飛び出してくる。)
金部長の手下たち:止まれ、動くな、止まれ止まれ!
(両者、人込みのなかには走り込む。)
金部長の手下たち:どけ
(走る商細蕊)
金部長の手下たち:止まれ、動くな、あいつめ!
(葬列をかき分け走る商細蕊。迫る追手。前方に車が近づいてくる)
程鳳台:商さん、早く乗りなさい!
(一瞬、きょとんとする商細蕊。乗車。車、走り去る)
金部長の手下たち:なんだ、あれは?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?