彼の白い顔
街灯が照らす雪道を見ながらアパートに帰っていた。
今日は友人たちが「お別れ会」なるものを開いてくれた。幸せな時間だった。自分に向けられる言葉の1つ1つがお世辞だと分かっていても、とても気持ちよく感じた。
老害がなくならないわけだと妙に納得感があった。
幸福感と体感時間は反比例する。幸せな時間ほど早く過ぎ去る。
帰り時、好きだった友人が「頑張ってください。さようなら」と言った。
私は軽くそれに答えて、後ろを向いて歩き出した。
ふと、思った。彼の顔はどんなだっただろうか?私は人と会話をするのが苦手だ。だから無意識のうちに顔を見ないで会話をする癖がある。
ただ、今はそれをする時じゃないだろう。これは彼と会える最後だ。今後会えるとしても、一番幸せな時間を過ごしたあとに、彼に会える最後だ。そう思って振り返った時、彼はすでにいなかった。
そうかと思った。顔を見て、目を見て話す人は、後悔したくないためにやっているのだと理解した。
今後、同じ後悔を自分がしないことを願う。
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