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秘密警察(SSS)編 3/4

ユーリが西国のスパイになる話です。二つ目の任務!

西国、バンベルト

ユーリは、二つ目の任務を果たすべく、バンベルトで開催される安全保障会議に潜入していた。会場は、西の高級ホテル。
NATO首席分析官の部屋の金庫から安全保障に関する極秘文書を盗み出すことが、今回の任務だが、それは夕食会の隙に遂行することになっていた。

お偉い方にほどよくお酒が回ってきた頃、ユーリは気配を消して席を立ち、自室に向かう。窓から外に出て、わずかな淵を伝いながら、ターゲットの部屋に潜入する。サイドテーブルに広げられてあった文書の写真を撮った後、クローゼットを開け、金庫を見つけると、あらかじめ暗記させられていた暗号を打ち込んでいく。暗号には、いくつか候補があった。一つ目、二つ目の暗号ではエラーが出てしまい、三つ目の暗号を入力してようやく、カチッと錠が外れる音がした。この金庫は、五回エラーが出ると開けられなくなってしまう仕様であるため、ユーリは、緊張して止めていた息を一気に吐き出す。
「極秘文書」は容易に手に入った。盗聴器をベッドの裏の目立たないところに仕掛け、再度窓から自室へ戻る。
今回手に入った「文書」は、ファイルではなくディスクだった。真のメッセージは暗号で隠されているんだろうな、と頭の中で考えながら、所定の場所でディスクを仲間に手渡し、任務完遂。
会場に戻ったユーリは、素知らぬ顔でNATO首席分析官の秘書や、同盟国の将軍と会話を交わす。にこやかな仮面をかぶりながらも考えていることは、ヨルのことと、一つ目の任務で盗んだ情報のことだった。

“核兵器””東国標的リスト“

東国標的リストには、滑走路や兵器庫、偵察総局といった東国の主要箇所、17地点が地図上に示されていた。
少将の部下は「アメリカが、東国を攻撃して来るのは間違いない。ただ、時期がわからない」と、重みのある声で言っていたのを思い出す。その情報も、ディスクに入っている可能性が高いと、ユーリは考えていた。暗号を解読するのに膨大な時間はかかるだろうが。

(どうであっても、姉さんのいる東国を戦場にはしない。俺が必ず姉さんを守ってみせる)

ユーリは、ワイングラスを傾けながら、ワインレッド色の瞳をもつヨルに思いを馳せるのだった。

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