見出し画像

【読書メモ】「ちびくろサンボ」絶版を考える(径書房編)

1990年に出版された本です。今はちびくろサンボは絶版ではなく、この本の方が絶版です。識者の対談やインタビュー記事、ルポなど載っており、資料的に価値ありそうな読み物です。

90年代は黒人に関するキャラクターや作品がものすごい勢いで姿を消しました。ダッコちゃん人形やカルピスのマーク、サンリオキャラクター、ジャングル黒べえ、オバQの「国際オバケ連合」の話とか。

そういう封印作品の話をネットで漁ってると、必ず出てくるのが「堺の親子」というワード。当時何者かよく分からなかったのですが、今やwikiもある黒人差別をなくす会のことです。この本にも登場します。

ダッコちゃん人形とかが黒人をモデルに作られてるのはたしかなんですが、自分の感覚ではあれはキャラクターとして認識していて、「黒人とは違った何者か」という捕らえ方をしていたように思います。だからと言って許されるのかはまた別問題ですが。例えば大阪出身のパーやん。あそこで語られる大阪像が、現実の大阪とはギャップがありすぎて、「地名こそ大阪だけど、現実の大阪とは違った、どこか別の都市」として捕らえていた感覚と似てます。我ながら分かりにくい例えですね(汗)。深夜の萌えアニメの女性キャラと現実の女性が別物感ありありな、そんな感じでしょうか。

あと、某大手新聞社内用の「避けたい言葉」一覧と、言い換えの言葉が載ってました。古い作品を読んでるとよく出てくる言葉がワンサカ。にしても、
・BG(ビジネスガール)→OL(オフィスレディ)
・養老院→老人ホーム、老人養護施設
OLや老人ホームも今はあまり見かけなくなった気がします。OLは「女性社員」もしくは普通に「社員」、老人ホームは「介護施設」とかですかね。たしかに昔は「派遣OL」みたいな用法で使われてました。事務でも技術でも総合職でも、オフィスで働く女性は一律「OL」だったんでしょうか?当時は技術や総合職の女性は少数派だと思いますが…。

この本の冒頭に「原作に忠実な」ちびくろサンボの絵本が掲載されてました。絵本は読んだことありますが、内容はほぼ覚えてなかったので、改めて読みました。最後にあらすじと絵本の感想を書いておきます。あらすじは最後まで書いてるのでネタバレ注意です。

あらすじ

男の子のサンボ。お母さんのマンボ。お父さんのジャンボ。お母さんはサンボに赤いコートと青いズボンを作ってあげた。お父さんはサンボに緑の傘と紫の靴を買ってあげた。
サンボがそれらを着けてジャングルへ出かけると、トラに出くわして食べられそうになった。1匹目のトラには赤いコートを、2匹目のトラには青いズボンを、3匹目のトラには紫の靴を、4匹目のトラには緑の傘を差し出すことで、食べるのを見逃してもらった。
もうあげるものはないのに、またトラがやってくる気配がした。と思ったら、さっきの4匹のトラが、誰が一番立派か言い争っていた。議論はヒートアップし、サンボからもらった服や靴などを脱いでお互いを攻撃し、ついには尻尾を噛んで木を囲むように円形になった。
サンボが声を掛けてもトラから返答がなかったので、サンボは脱ぎ捨てられた服などを持ち帰った。トラはお互いの尻尾を噛んで、お互いを食べようとした結果、木の周りをグルグル周り、早く走りすぎて溶けてバターになった
ジャンボが甕の中にトラのバターを入れて持ち帰り、マンボがそれを使ってホットケーキを焼いた。マンボは27枚、ジャンボは55枚、サンボは169枚食べた。

感想

改めて読んでみると、はるか昔の記憶が蘇りました。トラがグルグル回ってバターになる。これがこの物語の肝ですね。こんな突拍子もない発想、よく思いつくなあ。
これは黒人でなくても成立する話ですが、やっぱりジャングル=黒人なんでしょうか。ドリトル先生なんかと比べると、話自体には差別的な印象はありませんでした。イラストや「サンボ」という名前がダメだったのか?
トラのバターなるものが実在するのか気になりましたが(タイガーバーム?)、それにしてもサンボ、ホットケーキ食べすぎ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?