不妊症と診断されて、どこかホッとした自分がいた話。
まだ日の登り切らない早朝。
珍しく目が早く覚めてしまったわたしは、まだ横で寝息を立てている相方に目線を落とす。彼を起こさないように一人、そっとベットから起き上がって洗面所に向かい、バシャバシャと顔を洗った。初冬に足を踏み入れ始めた空気が肌にシンと伝わり、水の温度はあっという間に手の温度を奪っていく。
パジャマのままサンダルを履き、玄関の鍵を開けて階段を降りていく。軒先の郵便受けまでたどり着き、パカりと中身を確認するとチラシに紛れて見慣れない茶封筒がポストに投函されていた。